言葉が通じない
「あのアレックスさん、寝て曜日とはゆっくりまったり休むことですよ」
私は更に力説をする。
「はい、ですからゆっくり、まったりとお茶をしながら休むんですよね」
どうやらレックスさんには言葉が通じないようだ。
私は悟った。
脳筋師匠に師事しただけあり、レックスさんは思考も脳筋になりつつあるのかも、と。
「あの、アレックスさん」
「なんですか?」
良い笑顔で返され私は言葉を飲んだ。
何を言っても無理だと。
脳筋菌恐るべし。
きっと何処かの良いとこの坊っちゃんだったのだろうレックスさんは、脳筋師匠の菌に侵され脳筋になりつつあると。
ウイルスならまだしも、脳筋も伝染するとは、恐ろしい。
私も脳筋菌に感染していたらどうしよう。
ちょっとマジに心配になった。
「分かりました。私は先に部屋へ行っていますね。アレックスさんはゆっくり来てください」
兎に角、目的の神使を呼び出す事だけでもしておこう。
そう思い私はレックスさんに一礼して部屋へと急いだ。
部屋へ着くと私は急いで麻袋を出す。
そして、ニョロちゃんとゴンちゃんを思い描き手を入れた。
すると、袋の中で私の手にピタピタと何かが触れる。
「ゴンちゃん?」
私の声がけに袋からピョンと現れたのはゴンちゃんだった。
「ゴンちゃん?」
気のせいか、一回りも大きくなっているではないか。
「ゴンちゃん、大きくなったの?」
私が問い掛けるとゴンちゃんは「ピーッ」と鳴いた。
何だろう、めちゃくちゃ可愛いんですけど。
私は思わずゴンちゃんを抱き締める。
以前はリュックに入る大きさだったが、今はリュックに入らない位の大きさになっていた。
「ゴンちゃん、可愛い」
思わずギュウギュウに抱き締めると、嬉しそうにゴンちゃんが鳴いた。
すると、手に持っていた麻袋がゴソゴソとうごめく。
「んんん?」
思わず麻袋を見ていると、中から白く長い物がニョロニョロと出て来た。
「なっ」
なんだろう?と見ているとそれは白い鰻だった。
「もしかして、ニョロちゃん?」
確かに、ニョロちゃんとゴンちゃんを思い描いて麻袋を漁った。
ニョロちゃんは一匹だけ現れた。
他にもいたはずだが、今は一匹だけ現れた。
けど、七匹全部が現れたとしても、全てを連れて歩く訳にもいかないのも事実だ。
ニョロちゃんは「ピーッ」と鳴いた。
神使と意思疎通が出来ると良いのだが、生憎どちらも「ピーッ」としか言わない。
言葉が通じればいいのだが。
あれ?
これってさっきも似たような事を思った。
そうだ、脳筋には言葉が通じないって思ったんだ。
一瞬レックスさんとゴンちゃん達が同じものに思えた。
お読みいただきありがとうございます。また読んで頂けたら幸いです。