シルバー辺境伯より馬車を借りました
シルバー辺境伯に馬車を借りた私たち一行は一路王都を目指して出発した。
勿論、自転車に乗って行けば早く着く行程だが、やはり元王女という立場ではそうもいかないらしい。
ランカの町には敵側に内密で私達と接触するために馬車を持って行かなかったが、シルバー辺境伯と接触した為に内密で動く事は諦めたという。
ゼバスさんは元々馬での旅を考えていた所に、シルバー辺境伯が自転車を貰うお礼だと馬車を貸してくれたのだ。
こちらとしては一宿一飯の恩義のつもりなので気にしないで欲しいと思ったのだが、どうもその辺りは硬い人らしい。
まあ、ルワールへの販売経路を作るための先行投資だと思っての提案なのだが。
馬車の大きさはとても大きく快適で、大人6人ほど乗れる大きさだ。
その馬車には私とメイドさんの2人が乗り、両脇をゼバスさんとレックスさんが両脇から並走する形になっている。
御者の人はシルバー辺境伯が手配してくれており、王都まで送ってくれる事になっている。
そして、王都に着いたらそのままにシルに戻ってもらうことになっている。
馬車が走り出して数分後、最初の沈黙を破ったのはメイドさんだった。
「ミリア様。ご紹介が遅くなりましたが、私はモリーと申します。私はレンジ様の命を受け、今回メイドとしてミリア様に同行することになりました」
モリーさんはそう言うと 深々とお辞儀をする。
レンジさんはどこまで私の面倒を見てくれるのだろうか?
「レンジさんにはいつもお世話になっていますね。ゼバスさんが今回私を迎えにいらっしゃったのは、もしかしてレンジ様の根回しのお陰なのでしょうか?」
ゼバスさんは私が結婚する時に祖国から私を警護する為に同行してくれた騎士だ。
当時は副将軍だったが、戦争の功績で今は将軍になったらしい。
そんな人が私を迎えに来るのだ、相当な理由がないと動かせないと思うんだよ。
私の問い掛けにモリーさんはニコリと微笑む。
「レンジ様の影響力は計り知れないです。ミリア様を得難い人材と思われるからこそ、このように手を貸すのですよ」
モリーさんの言葉は、何故かレンジさんの期待を裏切るなと言っている様な気がして、少しプレッシャーを感じる。
「私はそれ程出来た人間ではないし、今はがむしゃらに目の前の目標に向かっているだけです。レンジさんの期待に応えられるか」
思わず本音が出てしまった。
普段なら決して言わないのに。
「そうですね。けど、目標に向かって頑張る事が重要なんです。ミリア様はご自身の境遇に腐る事なく邁進されています。十分に誇れることですよ」
モリーさんはそう言うとニコリと微笑んだ。
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