撃退
地面に突き刺さった槍はものの数分で消えていく。
これは魔術で作られた槍だ。
つまり、誰かが魔術を使って私を意図的に狙ったということだ。
確実に私が狙われている。
何故なら標的を決めて発動させるのが魔術だからだ。
無差別ではない。
なんで私が?おかしいでしょう。
私はルワールにヤマタノオロチの生贄になるために行くという名分で来てるのに、何故狙われるんだろうか?おかしい。
「詳しい話は後だ。とにかく、この追跡者から逃れることを考えよう」
ゼバスさんは頭上より落ちてくる槍を剣で撃ち落としながら声がけをする。
私は索敵の魔術を展開させ敵の数を把握する。
敵の数は私達から500m離れたところに10人。
どうやら剣帯している様子。
そして、更にそこから300m程離れた所に5人の魔術師が見受けられる。
あの地点から私達に魔術で槍を降らせたのだろう。
ゼバスさんとレックスさんの連携プレーにより、私は無数に落ちてくる槍を何とか避けている。
一通りやり過ごすと一旦沈黙が流れた。
そんな沈黙も束の間、次に剣を持った暗殺者風の男達が10人ずらりと私達の前に並んで現れた。
一人一人の戦闘力を鑑定すると、AからBランクの冒険者程度のステータスがある。
敵は意外と本気らしい。
「ゼバスさん、何ですか?この集団めちゃくちゃ強いんじゃないんでしょうか?」
一応、ゼバスさんはあのSSランクのバーナードさんに匹敵するくらいのステータスを保有している。
レックスさんだってSランクの冒険者だ。
遅れを取るとは思えないが何せ敵の数が多い。
10人だ。
メイドさんは意外と強く私とどっこいどっこいのステータスを持っている。
ただのメイドではない、戦闘メイドということになるのだろうか?
そして、その武装集団はやはり私を狙って次々と襲いかかって来る。
それをゼバスさんとレックスさんがいなし、そして、沈める。
一人一人に対して圧倒的な力量の差があるとは言っても、相手は複数人だ。
拮抗した力の前に、わずかな力量の差が勝利を収める。
ゼバスさんは悠々と一人、また一人と仕留めていくのに対して、レックスさんは何とか攻撃をかわしながら善処しているとという感じだ。
何せ十人の武装集団が一斉に攻撃して来ているのだ。
一人ずつ相手にできるのであれば、レックスさんだって余裕だろうに。
そんなレックスさんにゼバスさんが怒鳴りつける。
「確実に戦闘不能にしろ。甘ったれたことしてんじゃねぇぞ」
レックスさんは攻撃をかわしながら攻撃を仕掛けるが、なかなかその攻撃が甘く敵の懐深く入らない。
苦戦するレックスさんにゼバスさんが激昂する。
私はと言うと、この4人の中心部でただ守られているだけ。
守られてるだけのお姫様になるつもりなんて正直ない。
だから、私は私に出来ることをしようと思う。
つまり、遠くから魔術を練り上げている魔術師たちに攻撃をするということだ。
私はウカさんから貰った加護を駆使して、植物による攻撃を開始。
蔦を一斉に魔術達に絡めさせ、杖の能力も封じる。
基本的にこの世界の魔術師は遠くの標的に魔術を使用する時は杖を使って発動させるが多く、案の定、この魔術師達も杖を使って遠距離の魔術を発動させていた。
因みにだが、加護持ちは杖を必要としないらしい。
加護を持っていること自体が杖を持っているのと同じになるからだそうだ。
つまり、私は加護をいっぱい貰っているので、杖が必要ないということだ。
ある意味チートだよね。
フフフ、そしてを魔術師達を戦闘不能に押し上げていく。
もちろん魔術を使えないように拘束をする形でだが。
ゼバスさんとレックスさんの二人で私たちに襲いかかって来た武装集団は全て戦闘不能状態に。
「次は魔術師だ。何か仕掛けてくるかもしれないから気を引き締めて対応するぞ」
ゼバスさんの指示に
「大丈夫です。既に制圧しました」
と伝えると、ゼバスさんは私をジッと見る。
「魔術でですか?」
訝し気に聞くゼバスさん。
もしかして、ゼバスさんは私の本当の正体を知っているのだろうか?
私が本当にミリア王女だということに。
そうしたら、確かに私が魔術を使えるのは腑に落ちないだろう。
だって、ルワールの貴族たちは知っている。
ミリアが平民以下の魔力量だった事を。
でも、それはリナさんの説明で納得がいっている。
私の母は多分ヤマト島出身なのだろう。
つまり、魔力と思っていたのは神力だったのだから。
「ゼバスさん、大丈夫ですよ。私も色々成長したので」
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