師匠も師匠なら弟子も弟子
「あの、一応確認なのですが、今回の依頼内容をきちんと聞かれていますか?今回の依頼内容は私がミリア王女に扮装してヤマタノオロチを退治しに行くということになっていたはずです」
そう、これは初めから計画していた事だ。
レックスさんは頭を横に振る。
「俺はヤマタノオロチを討伐するために、ある子供と一緒に旅をして欲しいという依頼だけだ」
なんと、確かに合っているが凄く端折られている。
よくこんな内容で依頼を引き受ける気になったものだ。
「ちょっと断れない筋からの依頼だったので」
レックスさんは困ったように言う。
断れない筋の人って、何故か凄い圧力を感じるフレーズだわ。
多分、レンジさんが何かしたのだろう。
「あの、かなり危険度が高い依頼内容ですし、そんな簡単な説明で引き受けて良かったのですか?」
自分の命も怪しいのに、人の事を心配するのもおかしいが、本来なら関係のない人を巻き込むのだ。
それなりの内容説明と報酬と補償が必要だと思う。
「対価は既に貰っていますので」
レックスさんはそう言うとニコリと笑った。
「ああ、そうだ。ちょうどいいレックス君。君、アレックスの役やらないか?」
セバスさんが笑いをこらえながらレックスさんに提案する。
アレックスとは私の本当の夫の名前だ。
3年前に会ったきりの夫だ。
一応夫なのだから記憶に留めていても良いはずなのに、何故か記憶が曖昧なんですよね。
でも、なんとなくレックスさんに雰囲気が似てるような気もしないではないんだけど。
まぁ、貴族的な雰囲気がそう思わせるのでしょう。
「ミリア王女だけでは、やはり信用に欠けると思うんだ。夫であるアレックスも同行していればルアールの王室も納得するだろう。エトラさんがミリア様だと思い込ませるにはそれが一番効果的だと思うが、どうだ?」
そう言われても、レックスさんはめちゃくちゃ慌てふためいている。
確かに夫婦は一緒に行かないのは、おかしいですもんね。
ゼバスさんが言いたいことが何となく分かった。
レックスさんは「夫婦」と呟くと頭を抱える。
慌てふためくレックスん。
そんなレックスさんに、ちょっとしたイタズラ心が働く。
「レックスさん。私と夫婦の真似事をしましょう。どうせ男同士なんです。大丈夫大丈夫。だって、私達親友でしょう」
そう言うと、レックスさんがまた固まった。
そして「親友」とボソリと言葉が出る。
これは落ちたな。
師匠も師匠だけど、弟子も弟子だったってことか?
今度キリさんに弟子入りしようかな?と本気で思った。
お読みいただきありがとうございます。また読んでいただけたら幸いです。




