ゼンさんって
フードを下ろしたゼンさんはまだ20代といったところだ。
それよりだ。
その風貌に驚く。
銀髪に紫色の瞳、鋭い眼光はどちらかというと人間離れしていた。
「こちらの要求はこいつだ。本拠地を叩く為にも貰いたい。他の奴らは好きにしていい」
ゼンはそう言うと私の方を見た。
「一応、こいつ等を昏睡状態にしたのはお前だ。ついでに店主もつけてやる。どうだ?」
勿論、私に否はない。
「勿論良いですよ」
全員捕まえた方が良いのは分る。
けど、彼はこの盗賊のバッグに大物がいるような事を言っている。
「一応ギルドマスターにも他の盗賊がいる事を言っておく。もし何か不足の事態に会うようならギルドマスターに話してくれ」
レックスさんはそう言うと、寝転がる盗賊達を拘束し始める。
数にして5人。
店主も入れると6人になる。
どうやって連れて行こうか悩む所だ。
「ギルドには既に連絡している。多分後1時間位で来るだろう。会いたくないなら早く出ていけ」
レックスさんは突き放すようにゼンさんに言うと、盗賊たちの拘束する作業を続けた。
「はぁ、ツンかよ」
ゼンさんは笑いながらレックスさんを見る。
えっ今ツンって言った?でもツンって。
もしかして、ゼンさんって・・・。
「じゃあな。ガキ共」
ゼンさんはそう言うと盗賊の一人を担いで颯爽と去って行った。
なんだったのか。
「取り敢えず、こいつ等をギルドマスターに渡したら帰るぞ」
勿論、盗賊が出るような宿屋で一晩明かすつもりはない。
それに、お腹も空いた。
「取り敢えず、こいつ等を全員縛っておこう」
レックスさんはそう言うと次々と拘束して行った。
1時間後、無事にギルドマスターに盗賊を引き渡す。
「それなりの報酬を約束するよ」
アンドリューさんはそう言いながらウインクをする。
相変わらずのチャラさである。
「アイーダさん、やっちゃって下さい」
レックスさんは冷ややかな目でアンドリューさんを見ながらアイーダさんにお願いをする。
勿論、アイーダさんは素早い動きでアンドリューさんの首根っこを掴んだ。
「用が済んだらとっとと帰るわよ」
そう言って引きずられて行くアンドリューさんは笑顔で手を振る。
本当にこりない人だ。
勿論、彼等が起きたら尋問がまっているのは否めまい。
アンドリューさん達が撤収すると私とレックスさんは何時も通りにレンジさんの別荘へと飛んだ。
「そう言えば、あの宿屋は誰もいないんだよな」
レックスさんは当たり前の事を真剣に言う。
「ダンジョン攻略中の移動ポイントに丁度良いのではないでしょうか?」
「そうですね。成る程、確かに良いかも」
何が良いかって、宿代がかからないからだ。
「あっ、十万リラ。どさくさに紛れて返金して貰ってない」
思わず大きな声で言うと。
「別に、気にしてない」
と、何の興味もなく言うレックスさん。
「私が気にするんだよぉ」
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