メイソン、ピーラー作成(最初メイソン視点)
「まずは、そのピーラーやスライサーと言うのがどういう物か教えてくれ」
俺の言葉にエトラは店内に置いてあった鉋を裏返して見せた。
そして、どこから出したのか人参を取り出し刃の方へと人参をスライドさせる。
すると、人参の先が少し削れた。
「こんな感じに野菜を動かして野菜を削るんです」
刃を動かすのではなく、野菜を動かす。
なんて発想なんだ。
「そして、この刃の形も変える事によって薄く切るだけではなく、千切りにも出来ます」
衝撃的過ぎる。
「次にピーラーですが、スリングショットと言う武器がありますよね」
スリングショットは子供でも作れる手軽な武器だ。
勿論、冒険者などが使うスリングショットは鉄等で作られる頑丈な物もある。
が、あくまでも初級冒険者が使う物で、ベテランになればボウガンや弓になる。
どれも師匠の所で一通り作って来ている。
「それのゴムの部分に野菜を削るための刃をつけます」
エトラはそう言うと、店の片隅に置いてあった木で作られたスリングショットを持ちゴムの部分を人参に当てる。
「これも、刃の形によっては削れ方が違いますし、大きさによっても用途が色々あると思います。何よりのキャベツの千切りも作れちゃいます。それもお手軽に。どんなに不器用でも」
どんなに不器用でもキャベツの千切りがお手軽に?
それってどれほどの需要になるのか?
忙しい調理場では重宝されるよな。
「私、これから食の革命を起こそうと思っています。お祖父様の名誉を回復させる為にも王家から領地を始めとする伯爵家の全ての権利を買い戻そうと思っています。私と一緒に商売をしてみませんか?」
そう言って手を差し出して来たのは、10歳の子供とは到底思えない眼差しで俺をみる子供だった。
「勿論」
エトラの真っ直ぐな瞳を見ていると何故か俺の人生を掛けても良いと思った。
その瞳に吸い込まれそうになる感覚と体が高揚するような感覚が俺を包む。
これが貴族が時折見せるオーラなのか、それに俺も当てられてしまったのだと、その時は思った。
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メイソンさんが私の手を取り「おう、一緒にこの世界に革命を起こそう」と言ってくれた。
よし、これでピーラーはゲット出来た。
「じゃあ、早速ピーラーからチャレンジしますか。使い心地とか直ぐにでも試したいので」
勿論、今日からの商売の為だ。
「じゃあ、具体的な形を図で書いてくれ」
メイソンさんはそう言うと図面用の紙を取り出す。
私はそれに鉛筆を使って前世で覚えているピーラーの絵をリアルに描いて見せる。
これでも美術の成績は良かったのだ。
輪郭、光沢、質感を再現するように紙に描き上げると、メイソンさんが「紙から出てきそうだ」と感嘆する。
そこまで褒められると、照れるよね。
そして、出来上がったピーラー一号は翌日、大活躍をするのだった。
お読み頂きありがとうございます。
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追伸、執筆のモチベーションアップのため高評価頂けたら嬉しいです。今後も宜しくお願い致します。