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盗賊討伐開始まで

階段を登って直ぐの部屋へと通されると、そこには少し小さめのベッドが二つ並んでいた。

部屋の広さは8畳程で、ベッドの脇にはサイドテーブルが置いてあった。

「さっきの男達、盗賊だね」

私はベッドに座るとレックスさんに話しかけた。

ベッドはギシギシと軋む音がする。

十万リラも取っておいてこんなに固いベッドだなんて、ボッタクリもいいところだ。

「部屋の鍵は外からも外せるようだ。内鍵はないな」

レックスさんは部屋の中を確認して回っている。

そして、部屋の窓から外を確認する。

「どうやらはめ込み式の窓のようだ。開かない作りになっている。宿屋の店主もグルのようだな」

顎に手を当てレックスさんは何処か納得した様に頷く。

「以前師匠とここの宿屋に泊まった時の部屋は、窓は開くし扉には内鍵がかけられるようになっていた」

「それって、カモ部屋と普通の部屋があると言うことですね」

「ああ、疑いを避ける為に通報しそうな人物には普通の部屋に案内をしていたんだな。師匠は冒険者としても名を知られていたから警戒されたのだろう」

「そうすると、今夜は私達がカモられると言う事ですね」

カモはカモでも、相手の方がカモですがね。

そんな事を考えていると、扉をノックする音が響く。

「あの、夕食をお持ちしました」

店主はそう言うと2人分のトレーを私達に渡す。

ホカホカのシチューには人参や、玉ねぎが入っている。

「あの、野菜は手に入らないと聞いたのですが」

ユグの町より更にダンジョンに近いのにと店主を見る。

「お客様は運いい。今日たまたま手に入ったんでさぁ」

店主はそう言うと私達にトレーを押し付けるように去って行く。

「パンも柔らかい物だし、前と随分対応が違い過ぎる」

レックスさんはそう言うとトレーをサイドテーブルの上に置いた。

「師匠と来た時は固いパンに具のないスープだった。それに、このシチュー、薬品の様な匂いもする」

食事に手をつけずレックスさんはドスンとベッドに座った。

「鑑定」

私は食事に鑑定の魔術をかける。

「シチューに睡眠薬が入っていますね。それも、象でも半日は起きないような」

「象?」

レックスさんは意味が分からないと言う顔で私を見た。

そうだった。

鑑定魔法の詳細は私が理解出来る言葉で書かれている。

つまり、この世界にいない動物での説明もあると言う事だ。

「つまりですね。このシチューを飲んだら半日は何をしても起きないと言う事ですね」

よし、何とか誤魔化せた。

「ふうん、まぁ、良い。今は盗賊の討伐だ。師匠の言葉にこう言うのがある。『やられたらやり返せ』と」

レックスさんはそう言うとニヤリと人の悪い笑みを浮かべる。

「エトラこのシチューを彼奴等にお返しする事は出来るか?」

「転移魔術の応用で、でも、相手の様子も見ないといけないし。そうだ、レックスさんその窓取っちゃいましょう」

私の提案にレックスさんは「そうだな」と頷いた。

勿論、下に直接降りる為だ。

見えないなら、直接見てやれば良いだけだ。

レックスさんがちょっと窓枠を小突くとガタンと簡単に外れた。

「で、どうやるんだ?」

窓を持ったまま問い掛けて来るレックスさん。

「直接直談判ですよねぇ」

私は両手にシチューの皿を持ち、風の魔術で外へと飛ばす。

そして、私も一緒に一階へと降りて行く。

宿屋の食堂から漏れる光に中の様子を探る。

案の定酒盛りをしている男達が見えた。

「先に祝杯を上げているだなんて、取らぬ狸の皮算用って知っているのかな?」

私はそっと彼らのお皿に、宿屋で出されたシチューをおすそ分けしたのだ。

「良い夢が見れると良いですねぇ」

お読みいただきありがとうございます、また読んでいただけたら幸いです。

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