ユグのギルドマスターアンドリューさん
朝食を食べ終わったので私とレックスさんはユグのギルドへと向かった。
「一応ギルドに寄って情報を仕入れようと思う」
ユグの冒険者ギルドは他のギルドと違いギルドマスターに賞金首や犯罪者の生殺与奪の権利がある。
言わばこの地方の最高権力者だ。
ユグの冒険者ギルドは今まで見てきたどの冒険者ギルドよりも大きい作りになっていた。
レックスさんはなんの躊躇いもなくギルドの中へと入って行く。
中に入ると広いホールにいくつものテーブル、そこに座る数人の冒険者。
奥には受付のカウンターがあり、その窓口の数の多さ。
「ユグの町の周辺には無数のダンジョンが存在しています。その為にここに滞在する冒険者の数も多いのです」
よくよく見ると、ギルドなら何処でも見かける依頼板が存在していない。
「ここは、ダンジョンで討伐した魔獣やドロップアイテムの換金を中心に成り立っています」
確かに、よく見ると奥のカウンターに並んでいるのは鑑定受付の窓口だけだ。
レックスさんはその内の一番右側にある窓口まで歩いて行く。
「ギルドマスターに会いたいんだが」
レックスさんはギルドカードを提示すると、受付嬢は「上のお部屋へご案内致します」と丁重に対応する。
流石Sランク冒険者だ。
「連れが居るんだが、一緒に良いか?」
レックスさんは私の方を見ながら受付嬢にそう伝える。
「勿論大丈夫です」
一介の受付嬢がそんな簡単に決めて良いのだろうか?
普通は上に確認するよね。
下手な事を言うのも何なので私はレックスさんの後に付いて二階へと上がって行った。
二階へと上がると一番奥の部屋へと案内される。
受付嬢は年齢的に30才前後の美人さんだ。
きっとモテるんだろうなぁ、と思いながらレックスさんの後ろを着いて行く。
何気にレックスさんに
「受付のお姉さん、凄い美人さんですね」
とこっそり話しかけると「そうですね。師匠が勘違いしてフラレた相手でもあります」と予想外の回答を貰う。
バーナードさんがフラレた場面、ちょっと見てみたかったかも。
「こちらになります」
受付嬢はそう言うと軽くノックをする。
「アイーダです。レックス様をお連れしました」
「入れ」
アイーダさんはそっと扉を開き私達を招き入れる。
「よう、レックス。大きくなったなぁ」
中で待っていた人物はそう言うと立ち上がり、こちらの方へとやってくる。
「お久しぶりです。アンドリューさん」
アンドリューさんと呼ばれた男性はとても筋肉質な体をしており、一目見ただけでも強い事が分るほどだ。
「あの馬鹿は元気か?」
「はい。お陰様で」
あの馬鹿が誰の事を言っているのかは何となく分かった。
どうやらこの二人は仲が良いようだ。
「そちらの連れは?」
アンドリューさんが私の方へと興味を示す。
「今の俺の依頼人だ」
レックスさんはそう言うと私の方を見た。
「エトラ・カーターです」
私はそう言うと右手を差し出した。
アンドリューさんは私の右手を取ると握手をする。
「俺はここ、ユグのギルドマスターをしているアンドリューだ。宜しくな」
誰にでも好かれるような笑顔でアンドリューさんは軽くウインクする。
「アンドリューさん。やめて下さい。俺の依頼人なんで」
何故か焦ったように言うレックスさん。
ただ挨拶しただけなのに。
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