アグニさんは泣いた
ララーさんは何考えてるんだろうと一緒に焦ってしまったけど、次の瞬間ララーさんが手を離すと
「ありがとうございます」
とレックスさんがララーさんへお礼を言う。
首を絞められてお礼を言うとは、どういうことだろうか?
「喉が焼けるかと思いました。おかげで声が出せますね。と何と呼びすればいいでしょうか?本当にありがとうございます」レックスさんはとても丁寧にお礼を言う。
ララーさんはニヤリと笑うと
「アグニが認めたら名乗ってやるよ」
と、挑戦的に言う。
名指しされたアグニさんは「ガハハ」と楽しそうに笑うとレックスさんの背中をバシンと一発大きく叩いた。
「どうだ?きっついだろう」
アグニさんは自身が持っていた酒瓶をチャポチャポと振る。
「お前はまだこっちの方が良いだろう」と言って、アグニさんはレックスさんに甘い水を渡す。
ララーさんは「おや?」というような顔になり、2人の様子を見ている。
そんなララーさんにお構いなしにアグニさんは先ほどのお酒をドボトボどんぶりのような器に注いだ。
こういうところもやっぱり豪快なのだ。
「俺もなぁ、お前に手を貸しているだけに肩身が狭いんだよ。ララーの姉貴とクロの兄貴が介入しなきゃ本当に俺は取り返しにつかないことに手を貸したことになってたんだ」
そう言ってアグニさんは器をグイッと傾けた。
ほぼ一気飲みである。
一瞬でペロリと飲み干してしまうと
「だから言わせろや。エトラを大事にしろよ」
まるで絡み酒のようにレックスさんの肩に手を回したアグニさん。
レックスさんはこくりと頷いた。
「勿論です。護衛対象ですから」
生真面目にそう答えるレックスさんにアグニさんは
「そういうの抜きにさぁ、友達になったんだろう?」
何故か事情に精通している。
友達になったのだってつい最近のことで、それも一方的にレックスさんが宣言しているような気もしたけど、まぁ、そこは良い。
私も友達だと思って接していたんだから。
ただ私とレックスさんでは、その友達の重みが違うような気がする。
正直言うと重い。
私が思っていた友達とはクラスで仲良くワイワイする的な友達だ。
けど、レックスさんの友達は何処かのスポ根漫画に出てくる友情的な友達に思えてしまう。
「アグニさん。俺を信じて下さい。エトラは絶対俺が守り抜きますから」
レックスさんの言葉にアグニさんは感無量な様子で泣きながら酒を煽る。
「おおー、信じているぜ」
どうやらアグニさんは泣き上戸でもあるらしい。
そして、アグニさんがレックスさんを許す?姿に、ララーさんも仕方ないと言うように笑って二人を見ていた。
お読みいただきありがとうございます。また読んでいただけたら幸いです。




