花祭り
野営地を出発してひたすら北へ向かって自転車を込こぐ。
今は広い草原の中を通る道を走っていた。
颯爽と自転車で走る草原の空気は正直美味い。
けど、心なしかレックスさんの自転車のスピードが早いような気がする。
途中ショートカットをする様に草原の中を走るが、さっと通り抜けて行く。
草原の中は土がボコボコしていて多少走り難いが、密かに脚力の経験値が上積みされていくのが普通の道より多いのが分かる。
つまり足に負荷がかかればかかるほど、その経験値は増えるということだ。
もしかして、これはわざと私の脚力を上げるためにやっていることなのだろうか?
ちなみに、このステータスは天井知らずである。
やればやるほどレベルが上がる。
なので、どこまで上げて良いのか分からなくなる人もいるだろう。
そのもっともたるやバーナードさんだろう。
彼の脳筋具合はそこから来てるのかもしれない。
道のない草原をひたすら走り、やがて街道へと出た。
「だいぶ近道ができました」
レックスさんはそういうが、正直この辺の地理に詳しくないので、どれだけの近道ができたのかは分からない。
ただ、言えることはひたすらまっすぐ走っていたということだけだ。
湖がなかったことだけが救いではないだろうか?そんなものがあって、そのまま突き進まれたら正直ついていけなかったと思う。
私はまだまだ駆け出しの冒険者なので、Sランク冒険者と一緒にしないでほしいと言うのが正直な意見だ。
「今日はあの町に泊まりましょう」
止泊まると言っても宿を取るだけで、実際はレンジさんの別荘へ戻るんだから、泊まるという表現はちょっと違うと思うが。そして、見えてきた町に着いたのは、もう夕方も暮れてからのことだった。
町はにぎわいを見せており、人々の数も多かった。
宿を取ろうと思ったが、何処も満室で宿を取ることはできなかった。
正直、人に見られなければ、別に宿を取る必要もないんだけどね。
「今日は何かあるんですか?」
断られた宿屋で情報収集をしてみる。
「今日は年に一度の花祭りなんですよ」
花祭りは神様を崇めて神様と一緒にお祭りをする日で、お酒や甘い水を汲んで神様に捧げるのだという。
そして夜はそのお祭りを祝って、みんなでワイワイがやがやと楽しむのが常だというのだ。
「今日は色々な出店が出ているらしいですよ」
レックスさんはそう言うと何やら通信用の魔道具でケイレブさんへ連絡する。
「夕食はここで食べることにしましたので、夜遅くに別荘まで戻りましょう」とレックスさんが提案する。
勿論、こんな楽しそうな催しを満喫しないわけがないじゃないですか。
「是非、楽しみましょう」
私はそう言うと出店が並ぶ町の中へと入って行った。
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