酒税は高かった
食堂へ入ると既にカオスと化したバーナードさんとキリさん。
ケイレブさんに聞くと、自転車に乗れなかったバーナードさんと、乗れたと思っていたキリさんが何故か食前酒を飲んだ辺りから怪しくなり、この不穏な状況になったらしい。
「俺はなぁ、お前の事を大親友だと思っていたんだよぉ。何時も声を掛けてくれたじゃないか」
バーナードさん、それは多分自分だけの勘違いですよ。
「声を掛けたのはあくまでも同僚としてだ。勘違いするな」
キリさんはスパッと言い放つ。
「お前〜、ツンデレかよぉ」
バーナードさんは、どうしてそう言う思考になるかな。
「プラス思考にも限度がある。勘違いも甚だしい」
「そう言う。ツンな所を分かってやれるのが俺だけだよ」
「こっ、これは・・・」
思わず呆然と二人のやり取りを聞いている。
「エトラさん。酒飲みの相手は面倒なので、別の部屋で食事を摂るのはどうでしょうか」
レックスさんの提案に「そうですね」 と同意する。
私達はそっとその場を後にした。
結局キリさんに聞きたい事は全然聞けなかった。
それに、あのお酒の量を見るに、明日は二日酔い確定のような気がする。
「そう言えばポーションって二日酔いにも効くのですか?」
何せポーションだ。
ファンタジーアイテムだからもしかして二日酔いにも効くかも。
そんな私の問い掛けにケイレブさんが答える。
「ポーションはあくまで体力の回復に特化した魔法薬になります。二日酔いですと状態異常ですので、それにあった魔法薬が必要です。指し詰め万能薬辺りでしょうか。小さい小瓶で文官の1日分の日当に価します」
「それって、お高いですよね」
何せ文官は高給取りだ。
「何せ万能薬ですから、それなりに値段もお高うございます」
「二日酔いに特化した魔法薬があれば良いのに」
「そもそも、一般市民はお酒と言う贅沢品は殆ど飲めません。結婚式の時に一杯飲めれば良い方です。お酒とは貴族や裕福層だけの贅沢品です。何せ酒税が高いので」
成る程、酒税か。
「因みに如何ほどですか?」
興味本位で聞いてみる。
「例えば千リンのワインがあれば、それに酒税が九千リン付き、合計一万リンになります」
「はぁ〜!!」
あまりにもの金額に驚いてしまう。
「今は軍備やら何やらとお金が必要なのです。平民から税収率を上げないだけまだ良しとしなければなりません」
確かに、低所得な平民から更に搾取するのは酷なことだ。
お酒は贅沢品と言われればそれまでだ。
「宰相様も苦肉の策で予算を作っている事を理解して頂きたいです」
「この国の宰相様はとても、平民思いの方なんですね」
私の言葉にケイレブさんは嬉しそうに頷いた。
お読みいただきありがとうございました。また読んで頂けたら幸いです。




