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進路変更しましょう

「大変美味しくいただきました」

ユリウスさんは丁寧に私と握手をするとそう言ってきた。

「ウワサは聞いてましたが、これほどとは思いませんでしたよ」と、何やらふくみのある言い方をする。

「それで、自転車というものですけど、いつ頃頂けるのでしょうか?」

期待の眼差しのユリウスさん。

あー、そうですよね。

自転車欲しいですよね。

あんなに興味津々でしたし、そうですね。

「近いうちにお届けします。レンジさん経由で」

と伝えるととても嬉しそうに微笑む。

ちらっとキリさんに目配せし、自転車の手配をお願いする。

キリさんは「では、数日中にはお届けいたします」と丁寧に対応する。

多分、暇な弟子たちがせっせと自転車を組み立てているので、すぐには渡せると思うのだが、やはりここは少しもったいぶった方がいい。

これでいっぱい注文してもらえると良いのだが、何でも安売りはしないと言うのが我が商会のモットーなので。

これもキリさんに教えられたのだ。

買い物は買って手に入れた途端に興味が半減するからね、多少興味を引いて少し待たせるのが良いのかもしれない。

その待っている間に欲しいという気持ちが膨れ上がり、次の商売につながるのだとキリさんに説かれた。

「では、私の方で手配しますので、少々お待ちくださいね」

とキリさん。

それを聞いて安心してのか、ユリウスさんはその後直ぐにワイバーに乗って帰って行った。

しかし、ワイバーンを買うなんてよっぽどお金持ちなんだろうなぁ。

レックスさんの友人らしいけど、やっぱり貴族だよね。

レックスさんは取り敢えずとして、キリさんもユリウスさんの正体を知っているようだ。

きっと、この国の貴族ならユリウスさんの正体を皆さん知っているんだろう。

生憎私は貴族社会のことには疎いので、その辺は全然だけど、ユリウスさんから溢れ出る気品からすると相当な高位貴族と見える。

ユリウスさんを見送るとレックスさんが私に話し掛けて来た。

「エトラさん。実はですね。夕べユリウスと話をして決めたのですが、王都には寄らない方向で行こうと思います」

レックスさんが突然進路変更を提案して来る。

「ちょっと面倒なことになるといけないので、王都を経由せず、少し東に反れて進みましょう」

これは結構な進路変更である。

本当なら王都へ行き、そこから更に北へ登るというようなルートだった。

今回の提案は私の祖国に近いルートを通ることになる。

今現在、私の国とこの国は戦争状態に入っているという。

私の結婚のために来てくれたお兄様の部隊がこの国の傭兵によって攻撃されたということになっているのが事の発端だ。

国の兵士ではなく、傭兵というところがちょっと怪しいかな。

実際はどうだったのだろう?多分傭兵に扮した国の兵士が兄の部隊を攻撃したので間違いないけど、後で聞いた話クロードさん達が兄を助けてくれたらしい。

本当感謝である。

兄は五体満足に国へ帰還したのだから本当だったらが戦争をしない方向で事を進めたらしいのだが、末端の兵士達がそれではいかんというような風潮を流したとか流さないとか。

でもこれも全部誰かの画策だったらどうだろう?戦争火種は下から来てるっていうところが不思議だ。

本来なら激怒した王様が兵を出すというならまだしも、上が全然乗り気でない戦争を、下の方から「出兵せよ」なんてちょっとおかしいのではないだろうか。

普通なら戦争なんて行きたくないのに。

それを言ってたら切りがないのだけどね。

東側を通るルートは昔は結構我が国との交易も盛んだったんだけど、戦争が起きてからは皆忌避するようになってしまった。

「なるべく国境沿いの方に行かないよう、心がけながら進路を取っていきたいと思う。まあ、宿屋の心配をすることはないかな。その辺は大丈夫だと思うが、やはりそれぞれの町の様子を確認するのも私だ俺たちの仕事だと思う」

レックスさんは何だかんだいって、貴族的義務を忘れない人のようだ。

まだ子供なんどから自分の保身だけを考えてればいいのに、そうやって民の事を考える辺り。すごいと思う。

この歳で良くそんなことが考えられるなぁと思ってしまう。

私なら自分のことで精一杯なのに。

「では、その辺こ話をバーナードさんに伝えてもらえますか?」

レンジさんの別荘へ直ぐにでも送ろうとキリさんを見た。

自転車の件もありますし、自転車工房はレンジさんの別荘がある、あの町にあるので自転車の手配を直ぐにでもしてもらって、ユリウスさんの喜ぶ顔が見たいと思う。

私は決してイケメンに弱いわけではない。

お読みいただきありがとうございます。また読んでいただけたら幸いです。

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