誰かの目線。三人の会話2
ヤマト島は元々はカーター伯爵の領地だったが、今の王家の管轄になっている。
今の陛下が宰相だった時に、カーター伯爵から納税が納められない事と借金のかたに取り上げられた領地だということ。
その辺の詳しい経緯は知らないが、だいぶ大きな借金を王家が肩代わりし、更には税金を払えず、所持していた領地を王家に返納することによって、それらを免れたらしい。
ただし、その免れた税金や借金に利息をつけた分を王家に支払えば領地を返すというような内容の文章を当時の王、つまりユリウスさんの父がカーター伯爵と約束をしたのだ。
まあ、今の陛下もどうせ返せる額ではないと思って当時宰相だった時に了承している。
何せ、莫大な金額で、とてもじゃないけど傾きかけたカーター伯爵家でその金額を賄えるとは到底思えないからだ。
しかし、なんとその孫にあたるエトラ・カーターがその借金を全て返してしまったのだ。
そのため、カーター伯爵は領地を全部を王家から返納されることになる。
今年の終わりに行われるパーティーで、年が明け次第カーター伯爵が再び領地を賜り、貴族社会に復帰することを宣言することになっている。
それまではまだ王家でその領地を管理することになる。
特に可もなく不可もなくの土地だ。
土地が肥えているわけでもなく、産業が発達してるわけでもなく、鉱山があるわけでもない。
本当に平凡な農業を中心として収入を得ているような領地だった。
その領地も伯爵家としては些細な額しか生まないようなもので、よくこれて経済を回していたな、と思うほどのものだ。
普通の貴族は領地経営にとことん邁進して莫大な利益を得ているというのに、カーター伯爵はどちらかというとのほほんとしているような人物だ。
うまい具合に騙されたんだろう。
まあ、その当時の騙された件については、いろいろ調べると今の陛下が宰相だった時に暗躍した節が大分強い。
ただ、当時の事を語る者はおらず、真相に近づけば近づくほどあいまいな回答しか出て来ない。
嘘をついているわけではなく、何かモヤのようなものがかかったように分からなくなるらしい。
それはどの貴族も話していることで、それより深く問いかけると、更に酷い症状になってしまった。
カーター伯爵といえば、その側近が今の陛下の側近に寝返った事でも有名で、そこも他の貴族の警戒心を呼び起こすのに一役買っていた節がある。
一度ユリウスさんは彼に会ったらしいが、微妙に魅了にかかっているようだと言う。
そう、あの時のアレックスのように。
そうやって、ユリウスさんの周りの者たちは皆陛下に魅了されていくんだ。
光の神と闇の神の加護を受けたペンダントがあれば、その闇に打ち勝つことができると言う。
光だけでも闇だけでもなく、2つの力が合わさって初めて力を発揮するらしい。
この精神異常を解消するペンダントをエトラ・カーターはどう反応するだろうか?
何せらここまで凄い人間が今の陛下の手駒になってしまったら・・・正直もう勝てる自信もない。
「そう言えば、レックスとエトラはうまくいってるのだろうか?」
ユリウスさんは不安気にレックスさんに問いかけた。
レックスさんは不思議そうな顔で
「うまくいくも何も彼は依頼主で、俺はそれを雇われているただの請負人だ」
ぶっきらぼうににそう宣言するレックスさんに
「お前らしいよ」と、苦笑いしながらユリウスは何処か納得したようだ。
お読みいただきありがとうございます。また読んでいただけたら幸いです。




