誰かの目線。三人の会話1
「ウニとは殊の外、美味しいものなのだな」
とユリウスさんは呟いた。
「エトラ・カーターの事はジンに聞いてはいたが、本当にあの年齢でこの手腕とは驚きを隠せない。私の補佐官に欲しいくらいだよ」
現在、ゆっくりと美味しい昼食を食べ、気付けば夕方になっていた。
あの後、一旦昼食を中断してエトラが自転車を披露。
魔石を使わず己の信ずる道を征け体力とセンスのみで走らせる道具に興味津々の様子のユリウスさん。
その後の食事の最中は新しい移動手段に出来る道具について大いに盛り上がった。
そして、そのままの流れでレンジさんの別荘へ転移した私達はそのまま其々の部屋へと移動した。
ユリウスさんは色々と事情を知っているようなので、それ程驚かれなかった。
強いて言えば転移した瞬間はちょっと興奮状態だったけど。
閑話休題
ユリウスさんの発言に渋い顔になるキリさん。
「冗談でしょう。補佐官なら、ほら、隣にいるじゃないですか?将来の」
と、どこか毒を吐くように言う。
レックスさんは苦笑いをしながら
「私などには無理です」
と、謙遜するように言った。
まぁ、ユリウスさんは満更ではないようだったが。
「早くこの件を片付けて、学園を卒業したら俺の所に来い。待ってるぞ」
そう、基本的に王宮における公務は学園卒業の証が必要になる。
文官、武官、補佐官、侍従、侍女。
直接王族に使える仕事の名目があるが、皆同じように学園卒業が必須となっている。
最低限の教養を身につけた者。
その最低限が学園の卒業資格なのだ。
ユリウスさんの補佐官は今は数名いる。
身分的にそれほど高くない貴族である事は他の貴族をけん制する上でも問題がある。
他の貴族に意見の言えるある程度地位の高い貴族が欲しいと言うのが本音だ。
その点、レックスさんは色々な意味でそれをクリアしている。
例えば将来的に公爵家の家督を継ぐことになり、この国の中で自分より身分の上の者は本当に王族しかいないという状況。
ちなみに父親は宰相をしているっていうところが既にすごいところでもある。
カードとしては相当良い札だ。
「殿下、例の聖剣の件なのですが、見つかりそうでしょうか?」
ここ数年の年月をかけて聖剣を探していた。
邪を払い光を降ろす剣。
「師匠と2人で各地のダンジョンを探りながら調べていたのですが、とうとう聖剣に関係するような情報は得られませんでした。冒険者ギルドでも色々な仲間を作ってはみましたが・・・」
いや師匠の性格上、冒険者といざこざが起きて情報を手に入れるようなことにはならなかった。
S級冒険者といえど、師匠は正確に言えば仲間意識がない。
ただ師匠はとにかく食べて飲むから、飲み友みたいなのは出来た。
まぁ、その分今日は奢るぞお、と言って大盤振る舞いし、それに便乗した冒険者から話を聞くというような。
すごく効率の悪いやり方ではあったが、情報はある程度得ることができた。
分かっていることは、聖剣は今のところ幻と言われており、全ての冒険者が眉唾物の話として言っていることが、ヤマト島に秘密があるのではないか?ということだ。
あの海域には正式な手順を踏まないと入ることができないらしく、辿り着いた冒険者はいない。
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