キリさんとレックスさん初対面
「キリさん、クーラーとヒーターを千個注文したお客様って知っている?」
今現在私はキリさんの家に突撃している。
「はい。知っておりますよ。いつもレンジ様に無理難題を押し付けてくる面倒な方ですよね」
上客と言えど辛口対応のキリさん。
「あの、その方にお昼ご飯をテイクアウトで購入したいんだけど、何がいいかな?」
キリさんは深いため息をつき。
「それこそ面倒ですね」
とボヤいた。
「特上の寿司セットなどは如何ですか?それと、若者なのでフライ物の抵当にあしらったオードブルとか」
「目茶苦茶定番ですね」
お寿司にオードブルだなんて、定番中の定番ですね。
「そっ、それでですね。もし良ければキリさんも接待付き合ってくれませんか?」
何せ無理難題言うと言われても上客には違いない。
知らない私が接待するよりは、嫌でも知っている人が接待する方が良いと思うんだ。
「宜しいですよ。一応相手は非公式と言えど・・・いえ、何でもありません。1時間ほど時間を頂ければ直ぐにでも準備致します」
キリさんは何かを云いかけたけど、直ぐにやめて仕事モードに入った。
「お酒も持って行きましょう。それと、他の惣菜も」
「上客様は成人なのですか?」
お酒を持ち込むとは、キリさんにそう問い掛けると
「飲まないとやっていられないので」
と、座った目で訴えられた。
マジですか。
いえね、お酒の力で本心を聞くのは酒飲みの醍醐味ですけどね。
「では、宜しくお願いします。私は待っている間に仕事の書類の確認をしますね」
「エトラ様に確認頂きたい書類は、私の書斎のテーブルの上の赤い木箱に入っていますので、是非お願い致します」
もの凄い圧をかけてヨロシクしてくるキリさん。
「はい。最善を尽くします」
出来る補佐官のキリさんは本当に一時間で食材を全て準備してくれた。
「では、リナさん。旦那さんをお借りしますね」
「ええ、良いわ。エトラちゃん。明日には返してね」
「リナ」
「キリ」
抱き合う二人はラブラブと、私の眼の前であたかも最後の別れのような包容をする。
「あの、そろそろ行きますよ」
リア充爆せろとはまさにこの事だよね。
二人が離れたのを確認して、私は食材とキリさんに触れるとサウスまで飛ぶ。
眼の前にはサウスの領主の別邸の小ホール。
レックスさんが既にテーブルクロスを敷きグラスやカトラリーをテーブルに並べていた。
ごめんなさい。
お寿司なので箸も必要かと。
「こんにちは、貴方がレックス様でしょうか?」
キリさんはレックスさんを見ると直ぐに声をかけた。
「はい。冒険者のレックスと申します」
レックスさんは丁重にお辞儀をする。
「そうですか。以後お見知りおきを」
キリさんにしては歯切れの悪い対応に一瞬疑問が湧いた。
お読みいただきありがとうございます。また読んでいただけたら幸いです。




