上客様をもてなす為に
上客をもてなすならどんな昼食が良いだろう?
街を見ながら思案していて分った事は、市場のお惣菜ならまだしも、普通の飲食店でテイクアウトはまだ浸透していなかった、と言う事だ。
残念ながら、この街にはまだカーター商会は進出していない。
レンジさんに頼んで良い物件を探している所だ。
「仕方がないので、ちょっと別の街へ飛んで昼食をゲットして来ますので、先ずは、その別邸に行きましょうか」
何処かへ飛ぶにしろ、人に見られると面倒な事になる。
「確かに、その方が良いですね」
私はレックスさんを促して、先に待ち合わせ場所になっている屋敷へと向かった。
屋敷は中央にある領主の館の西の端っこにあり、街の一等地だと言うのに森のような場所に建っていた。
お金持ちのやる事は、こんな街の中心地を預けられたら私なら主要な建物を建てて、それに伴い飲食店や娯楽施設を配置してお金を動かす事をすると思う。
自然豊かな別邸の前の庭は、球技場位の広さの空き地があり、その周りを森が囲っているような形になっている。
「凄く広い庭ですね」
こんな一等地に空き地を作るとは、お金持ちって凄いと感心していると
「ワイバーンが降り立つ場所なので、障害物を取り除いているんですよ」
なるほど、空き地にも意味があったのか。
すると、ここはワイバーンの為の空間と言うことになる。
一等地にワイバーン用の空き地。
せっかくの高価なワイバーンの羽を傷めない為の措置なのだろう。
けど、私なら大きな池の中央部分を横断するように道を作って、そこに着地させるんだけどなぁ。
せっかくの領主の敷地なんだから、少しは華やかに作らなくては。
後で上客様にそれとなく言ってみよう。
「エトラさん。そろそろ中へ入りましょうか」
レックスさんに促され私は屋敷の中に入って行った。
屋敷は領主様の別邸と言うだけありとても大きいもので、一階の部屋だけでも大ホールと小ホール二部屋、そして、サロンも二部屋あり、厨房は普通の民家が入る位に広い。
食材は使用する時にだけ持ち込むらしく今は何もないので、やはり昼食は調達しなくていけないようだ。
「では、ひとっ飛びして来ますので、レックスさんはテーブルの準備をしながら上客様を待っていて下さいね」
「上客様?」
私はレックスさんにお留守番をお願いしてキリさんの屋敷へと飛んだ。
やっぱり上客様をもてなす為には、キリさんのセンスにお願いするのが一番だからね。
何せ有能な補佐官ですので。
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