自転車準備OK
朝、目を覚ました私は気合を入れて自転車を屋敷の庭に並べた。
3台の自転車を一通り動かし、誤作動がないかどうかを確認する。
「よし、異常なし」
ピカピカの真新しい自転車は、前世に乗っていた自転車とは違い、何のカスタマイズもないスタンダードなタイプだ。
つまり、ライトもなければベルもない、前カゴもないしリアキャリアもない、ギアなんてもっての外。
「まぁ、走って曲がって止まれば良いっか」
正直に言おう、この世界の移動手段が馬に頼りがちだが、全力疾走すると数十分でバテる。
早足程度の速度でも2時間歩いたら休憩を挟まなくてはいけない。
確かに馬に乗っていると普段使わない筋肉が刺激になって良いけど、もっと効率的に迅速に移動しつつ、筋力アップにもなると言えば自転車は最適だと思う。
この国では海や運河を使った輸送手段は殆ど無く、陸路で馬を使用したものが殆どだ。
故に、道はある程度の整備されている。
つまり、自転車での移動は最高と言うわけだ。
それに、この世界でスピード違反はない。
魔法である程度の障害物を把握しながら移動すれば、馬よりも効率的に移動出来るはず。
フムフムと自転車を見ているとレックスさんがやって来る。
「部屋にいないと思ったら、こちらでしたか」
どうやら朝から捜索させてしまったようだ。
「おはようございます。レックスさん」
「おはようございます。エトラさん」
取り敢えずの挨拶を交わし、そろそろ朝食ですと言われ、一緒に食事に向かう。
「あの、エトラさん。昨日の自転車なるものを本当に使用するのですか?」
普通の男の子は新しい機械とか何とか、気になるものだろうに、レックスさんは少し好奇心が足りないように思う。
「勿論です。自転車は凄いのですよ。馬と違って自分の体力がある限り走り続けられますから。スピードも自分次第で馬よりも早く走れます」
「そうなんですか?」
レックスさんは少し興味を示してくれた。
よし、この勢いでレックスさんをその気にさせよう。
私は食事の最中も自転車の素晴らしさを説いてレックスさんをその気にさせる事に成功した。
さて、問題のバーナードさんだが、食事が終わる頃にあくびをしながら室内に入って来た。
「一晩寝ただけなのに、何故か体が鈍ってしまった。もそや、昨日の落下のせいだろうか?」
バーナードさんはそう言うとケイレブさんに朝食を頼む。
ここに居るバーナードさんを除いた全員が、バーナードさんが二日間寝ていた事を知っていたが、誰もその真実を教える者はいなかった。
知らぬが仏って言うしね。
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