夕飯は外で
さて、完成した自転車を3台を麻袋へと収納する。
「いや〜、そのマジックアイテムレア物じゃねーですかい?」
ドラさんがわたしの持つ麻袋を興味深く見つめる。
そんなに見つめても上げないけどね。
「聖地に行った時に神様から授かったんです」
間違ってはいない。
まさか、野菜を入れる袋として貰ったなんて、言えない。
「そうでがしょう。見ただけでオーラが違いやす。レア級のレア。眩しいくらいですよ」
ドラさんは私の持つ麻袋を「ありがたやーありがたやー」と拝む。
正直言って御弟子さん達、ドン引きしていますよ。
「ドラさん。その辺にしましょうよ」
私はドラさんを宥めて、今受注されている仕事に目処が付いたら、自転車も作成して欲しい事を頼む。
「大丈夫。水汲みをしている弟子達に作らせまさぁー。なに、組み立てるだけの作業ですんで大丈夫」
ドンと胸を叩いてドラさんは楽しそうに笑う。
「お願いしますね。決して無理はせずに、受注されている方が優先ですよ!」
念のために再度念を押す。
「伊達に商売はしていやせんよ。解っとりやす」
本当かな?
胡乱な目でドラさんを見る。
「もし、支障が出るようでしたら、キリさんに出向して貰いますので」
仕事になると鬼教官となるキリさんの名前を出すと、ドラさんは顔を青くして頷く。
よし、これで大丈夫。
意気揚々と工房を後にした時には既に夕方。
「レックスさん。ご飯ですが、我が商会が経営しているレストランへ行って見ませんか」
決して抜き打ち検査ではない。
どう考えてもこれから帰って夕飯は遅いと思うんだよ。
「はい。夕飯は街で食べようと思って、ケイレブにもそのように言ってあります」
レックスさん、以外とケチではないようだ。
夕飯は外で食べようと言える男。
ポイント高いね。
まぁ、A級冒険者だから稼ぎも良いのかもしれない。
ギルドで見た掲示板の依頼報酬もA級冒険者用は桁違いだったから。
勿論、依頼内容もぶっ飛んでいたけどね。
「では、身分は伏せて行きましょうか」
レストランの営業時間は夜9時まで、ラストオーダーは8時までとなっている。
お店に着いたのは7時を過ぎていた。
「この、今日のシェフのおすすめコースを2つお願いします」
シェフのおすすめは、その時期の旬の野菜や魚など、その時期にいっぱいとれてお安い食材を使う事が多い。
値段も手頃な価格にしており、成人女性が満腹になる位のボリュームで出している。
バーナードさんなら3人前は食べるだろうなぁ、と、明後日の事を考えながら、最初の料理を待つ。
春の野菜ならやっぱりアスパラガスとかかな?
ウキウキして待つ。
因みに、コース料理と言っても一品づつ出すのではなく、一気に並べるのがこの国の主流らしい。
一品づつ出るのは王族が参加するような晩餐会位なのだとか。
確かに、王族が他の人の前でガブガブ食べるのはあまり良い印象がないし、王族が食べ終わると食事が終了みたいな風習がある為に、遅く食べる人に配慮し、一品づつゆっくりと出しでいるのだとか。
正直、あまりゆっくりと食べると、さっき食べた事も忘れてしまうかも。
「この辺りは玉ねぎが有名なんですよ」
レックスさんは料理を待つ間にここの名産品を教えてくれた。
「特に、玉ねぎステーキ」
「えっ」
なんだろう、このフラグっぽいネーミングは。
お読みいただきありがとうございます。また読んでいただけたら幸いです。




