お店巡り
ウエストンは南の商業都市と言われる程に大きな街で、バーナードさんとレックスさんに見つからなかったら、あの日は一日ゆっくりと市場調査をする予定だったのだ。
「街までは馬車で行きましょう。15分位で着きますよ」
レックスさんの提案に同意して、私達は午後の街へと向かった。
ここは朝市も盛大な事でも有名で、11時くらいまではやっている。
見てみたいけど、それは今度だろう。
指図め、職人さんが多い鍛冶屋通りとかを先ずは攻めよう。
「鍛冶屋に興味があるなんて、やはり仕事熱心なんですね」
レックスさんが感心したように言うが、私の場合はどの程度のレベルの技術か、そして、あわよくば技術提携し、一緒に仕事をする技術者を探していると言うのが本音だ。
何せ、この世界一全て手作業で作られている。
前世のような機械とかはまだない。
私にその辺りのノウハウがあれば良いんだけど、残念ながらそれはない。
故に、地道に職人さんに作って貰っているのだ。
こんな事なら興味がある事以外も兄から聞いておくんだったと猛烈に後悔している。
兄はメカニカルエンジニアだったから。
貧しい暮らしだったから、私のために色々な玩具を手作りしてくれていた事を覚えている。
それが高じてもの作りの仕事に就く辺りお兄ちゃんだよなぁ。
そんな事を考えながら工房巡りをする。
ここはとても活気があり、色々な地域から若い人が弟子入りして、技術をつけると半分位の人がここを出て行くらしい。
そして、また新たな弟子が入りと言う事を繰り返しているらしい。
弟子は弟子入りしている期間はお小遣いを貰う程度で、師匠に一人前と認められてから数年はお礼奉公をするらしい。
メイソンさんは直ぐに帰って来たが、メイソンさんのお父さんの師匠らしく、お礼奉公をする代わりに仕事を請け負っているらしい。
それも、私の介入で逆に仕事を頼むようになってしまったんだけどね。
確か、この辺りにメイソンさんの師匠がいると聞いたんだけど。
鍛冶屋通りを歩きながら『ドラの店』を探す。
「エトラさん。先程から何を探しているのですか?」
レックスさんに尋ねられ、私は仕事仲間のお店を探している事を説明した。
「ドラの店でしたら、確かここでは場所が手狭になったと新しく工房を建てたらしいですよ」
なんと、転居していたとは
「あの、どちらに行かれたか知っていますか?」
殆どの事務をキリさんがしていたので知らなかった。
道理で。
昨年ドラの店に助成金と言う形で釜をプレゼントしたいと話があり、キリさん経由でプレゼントしていた。
確か、街の西の外れに大きな工房を建てたそうです。
「レックスさん、ドラの店はカーター商会の取引先ですのでご挨拶に伺いたいです」
「分かりました。では、移動しましょうか」
レックスは私が装備品を見ていると思っていたらしい。
すみません。
最初に言っていればよかったね。
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