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私の両親

ダンジョンを出ると直ぐにレンジさんの別荘へと転移する。

「よ〜し、飯を食うか」

着いて直ぐにバーナードさんがそう言って一目散に別荘に入って行った。 

その後ろをレックスさんと私がゆっくりと着いて行く。

「そういえば、さっきの支配のロープですが、ケイレブに頼めばレンジ氏に送ってもらえますよ」

レックスさんは素っ気無くそう教えてくれる。

レンジさんの事を言う時のレックスさんって何となく素っ気ないんだよね。

二人の間には何かあるのかな?

まぁ、詮索してもしょうがないか。

「分かりました。教えていただきありがとうございます。キリさんに頼もうかと思っていたので、教えて頂いて良かったです」

キリさんにはカーター商会の運営を丸投げにしてしまっているからね。

新婚さんなのに申し訳ない。

その分、ウシオさんとの取引を増やせるように今後のアイデアを考えようかな。

ヤマタノオロチ討伐までは商会の事はあまり考えないようにしようと思っていたが、長年頑張って来ただけにそれはない。

何時も新しい商売はと考えてしまう自分がいて、根っからの商売人だと思う瞬間でもある。

前世からお金を稼ぐのは好きだったんだよね。

今は前世の記憶のお陰で荒稼ぎしているけど、いつかは自分の手でお客さんの笑顔が見たいんだ。 

それでお金も貰えたらなお良い。

「エトラさんは凄いですよね。俺とそんなに変わらない年齢なのに商会を立ち上げて独り立ちしている」

レックスさんは突然立ち止まる。

私は立ち止まったレックスさんの方を見るとレックスさんは何かを考えるように月を見ていた。

「レックスさんもその歳でA級冒険者だなんて凄いことですよ」

多分これは何の慰めにもならないと思いながらもそう言っていた。

きっと私の言葉はレックスさんには届かない。

そんな気がする。

「俺は何時までも父の掌の上で踊っている人形なんです。それが嫌で認めてもらいたくて、色々やってみたのですが失敗してしまいました。そんな最低な人間なんですよ俺は」

レックスさんは苦笑いしながら私を見た。

男の子はお父さんに認めて貰いたくて背伸びをするのかもしれない。

けど、

「それだけ立派なお父さんなんですね。私からしたら羨ましいです」

私は父にも母にも蔑まれ疎まれ、居ないものとして扱われ、都合の良い時にだけ思い出された。

そんな存在。

「いえ、エトラさんのお父さんやお母さんは貴族であるのに、カーターの家名を取り戻す為に商売をしてお金を稼いでいたと聞きます。商売をしているエトラさんにこう言ってはなんですが、貴族は見栄の権化です。商会を立ち上げて商売するのと、物売りの真似事と言われるような商売では天と地程の差があります。貴族なら物売りをしていると言われる事にプライドが許さない生き物です。それをあえて行ったエトラさんのご両親には頭が下がります」

レックスさんが言っているのは本当のエトラ・カーターの家族だ。

私をなんの疑いもなく受け入れてくれたお祖父様とお祖母様。

そんな二人を助けようと貴族のプライドを捨てて物売りをしていたエトラのご両親。

きっと素敵なご両親だったのだろう。

「そうですね。レックスさんの言う通りです。私の両親は胸を張って自慢出来る両親でした」

これは嘘をついて生きている私にとっての罰なのだろうか?

本当のエトラ・カーターは既にこの世の人ではないのに。

ごめんなさい。 

貴方の未来を勝手に貰ってしまって。

私は月を見ながら心の中でだけ懺悔をした。

お読みいただきありがとうございます。また読んでいただけたら幸いです。

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