新メニューでヤミツキ
さて、決戦の午後。
昼食を早めに食べてひたすらジャガイモを揚げています。
何せ、旦那さんにも午前中店番してもらいながらジャガイモの皮むきをしてもらっていたのだ。
既に昨日の3倍のジャガイモの皮をむいている。
午後1時を少し回った所でお客様が店内に入って来る。
「昨日のフライドポテトはありますか」
若いカップルが店内に入るや、女性の方が旦那さんを捕まえて聞いて来た。
「はい。先程出来たばかりです何袋お包みしますか」
「二袋お願いします。後、フレンチトーストも二つお願いします」
私はフレンチトーストと聞いてシマッタと思った。
ジャガイモに気を取られていて作り忘れていた。
私は急ぎ店内から食パンを取ると、旦那さんに、さっき作ったポテトフライを宣伝するようサインを送る。
「今準備をしますが、その前に本日も新商品を作っていまして、もし宜しければ試食して見ませんか」
旦那さんはそう言うとお皿に載ったポテトフライを二人に見せる。
二人は初めて見るそれをジッと観察するだけで、なかなか手を出さない。
「これ木だよな」
男性の方がポテトフライを指差しながらそう指摘する。
確かに、カンナをかけた後のようではある。
「何言っているのよ、厚く切ったかつを節じゃないの」
彼女も負けずと指摘する。
どちらも気持ちは分かるけど、どちらも違うんだな。
それに、彼氏さんの方は既に食べ物でさえ無いし。
二人が試食品を食べあぐねいている間にフレンチトーストをハンナさんと一緒に素早く完成させる。
私はカップルの後ろから前に出て試食品を手にパリッと食べて見せる。
「すっごく旨い」
演技めいているかもと思いながら二人を見れば、私に釣られて二人も試食品を手に取り食べ出した。
パリパリと無言で食べた二人は
「美味しい、これ下さい」
彼女さんが食いつくように旦那さんに右手を出し
「5袋」
と叫んだ。
「賜りました。こちらの商品は冷めても美味しいですよ」
そう言って大きな袋に、小袋に入ったポテトフライを5個入れた。
「割れやすいので気を付けてお持ち帰り下さい。全部で小銀貨16枚です」
小銀貨一枚は日本円で言うと約100円程度だ。
ジャガイモ料理は一袋小銀貨2枚で、フレンチトーストは卵と牛乳を使っているので小銀貨3枚なのだそうな。
フレンチトーストは二人の手にそれぞれ紙に包んで渡し、大きな袋は彼氏さんが優しく持った。
そして小さな袋は彼女さん、こちらにはフライドポテトが二つ入っている。
二人は多分この後、ここより港の方向に少し歩いた噴水がある広場でデートするのだろうとハンナさん談。
なんでもカップルの待ち合わせの名所でもあるらしい。
そして、それから一時間後昨日とは比べものにならない位の人数が殺到する事になる。
そして、それから一ヶ月ポテトブー厶が到来するのだった。
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