ダンジョンボス
10階層は湿地帯タイプのダンジョンになっており、ジメジメと熱い。
唯一の救いはバーナードさんが開けた穴から涼しい空気が入って来る事だ。
多分、下の階層に冷気を生むような所があるのだろう。
「ダンジョンを壊した場合は時間をかけてゆっくりと自動的に修復されます」
「では、早くしないとバーナードさんが落ちた穴も修復されてしまいますね」
厳密には落ちた穴ではなく、落ちて穴を開けただろうが、この際そこは良い。
「完全修復までは数時間掛かりますが、階層を跨ぐ穴事態は2時間もあれば塞がってしまいます」
レックスさんはまるで経験したことがある人の回答のように思えた。
ああ、そうか、ウォータースライダーの時に壁をぶち破ったんだ。
バーナードさんって本当に懲りない人だ。
やっぱり脳筋?
少し歩くとトカゲ系の魔獣がワンサカと現れる。
「前衛は俺が、火力には自信があるので」
レックスさんは得意の火魔術と剣術を合わせてウジャウジャ現れたトカゲ系の魔獣を撃退して行く。
流れるような剣さばきに次々と魔獣が倒れて行く。
「A級の魔獣は大抵魔石を落としていきますので、回収をお願いします」
レックスさんに言われるままに、倒した後に落ちる魔石を風魔術を使いながら麻の袋へ回収する。
まるで掃除機にでもなったような気分だ。
次々と倒して行くレックスさん。
魔石の数も相当な物になっていた。
「この階層はレベル上げと魔石の素材回収メインみたいだね。エトラさんも攻撃してレベル上げしておきますか?」
レックスさんはそう提案するが、今は早くダンジョンボスを倒してバーナードさんと合流するのが先だ。
「来ようと思えばまた来れますので、今はダンジョンボス優先でお願いします」
多分私の転移魔術は神域にも飛べる事から、ダンジョン内も飛べると思うんだよね。
マップではそろそろダンジョンボスに遭遇するはずだけど。
「レックスさん、そこの別れ道を右に行って下さい。そこにダンジョンボスがいます」
私の指示通りにレックスさんは右に曲がる。
そこは大きな沼が中央にある大きな空間が広かっていた。
湿地帯特有の草木が立ち込めており、沼独特と緑臭い匂いが充満している。
沼からはボコボコと泡が出ており、如何にも何かあると言う雰囲気を醸し出していた。
そして、先程まで絶え間なく襲って来ていた魔獣も今は影すら見えない。
ここは簡易的に作られたボス部屋と言う事の間違いはない。
ボス部屋は事前に決まった魔獣しかおらず、魔獣が鳴りを潜めた事が既にボス部屋である事を物語っていた。
が、ダンジョンボスの姿は見えず、レックスさんは周囲を伺う。
マップ上では既に私達はダンジョンボスに遭遇している。
どこだ?
ボコボコ。
ボコボコボコボコ。
沼の泡が激しくなる。
「まさか」
周囲を伺っていたレックスさんは、ちょうど沼を背にしている時だった。
鋭い爬虫類の尻尾がレックスさんへ伸びる。
「ゴンちゃん、起きて」
私はとっさにゴンちゃんを呼んだ。
「キュー」
背中に背負っていたリュックからゴンちゃんが飛び出しレックスさんを襲う尻尾にブレスを吐いた。
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