10階層をまで来てしまった
「ハッハッハッハー、身体強化だ!!」
バーナードさんは声高だかとそう言うと自身に身体強化魔法をかける。
「えっ、ここは浮遊魔法とか風魔法とか、そんなのじゃないの?」
思わず指摘してしまった。
「エトラさん」
レックスさんは私を呼ぶと手を差し出す。
思わず握ってみたものの、レックスさんの風魔法は少し速度を落とすだけで、落下の速度は相変わらず速いまはまだ。
「『浮いて』」
私は強く言葉を発しながら神力を込めると、私達を包むように空気の膜が出来た。
残念ながら、バーナードさんは私達の遥か下の方にいる為に魔術発動範囲に入っていなかった。
私達はそのままゆっくりとした速度で落下する。
「ごめん。俺は君の護衛なのに、サポート系の魔法はあまり得意ではなくて・・・」
レックスさんは決まり悪そうにそう言った時、下からもの凄い音がした。
ズドドドドーン。
壁が揺れて小さな岩が落ちて行く。
「あっ」
バーナードさんだ。
恐る恐る下を見るととても大きな穴が空いており、更に下の階層を突き抜けていた。
私達はその突き抜けた階層を横目に更に下へと落下する。
「何処まで落ちるんだろう?」
明らかにダンジョンの床が壊れたと思われる部分から階層を確認して行く。
「次で10階層です」
私がそう言うとレックスさんは空中で反動をつけるとそのまま10階層へと到着する。
「あの、バーナードさんは助けなくて大丈夫ですか?」
あの勢いで落ちたのだ、正直生きているかどうかも怪しい。
まさか、あの状況で身体強化に走るとは思いもしなかった。
「多分大丈夫だと思います。あの人は自身の体をいたぶって楽しむ変態ですから」
まぁ、否定はしないけど。
レックスさんは穴の方へと顔を向けると。
「師匠、大丈夫ですか?」
と、問い掛けた。
「おおー、取り敢えず先日ボスから貰ったエクストラポーションを飲んだから大丈夫だ。お前らは早くダンジョンボスを倒して来い」
どうやら元気なようだ。
って、言うか、脳筋恐るべし。
「師匠も今の声の感じからして大丈夫なようですので、このまま進みましょう。早くダンジョンボスを倒して合流した方が良いですからね」
ニコリと笑顔でそう提案するレックスさん。
あの師匠にしてこの弟子ありと言った感じでしょうか?
ちょっと前までレックスさんに同情していたけど、今はそれも乏しい。
いつか私もレックスさんのように割り切れる人間になるのだろうか?
「師匠の命令は絶対ですので」
レックスさんは私の考えを見透かすようにそう付け加えた。
「今回の無茶振りなんて、いつもの事ですから」
そう言って心の読めない笑顔を作るレックスさん。
もしかして、レックスさんなりにバーナードさんを心配しているのでは?
と思ってしまった。
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