ウォータースライダー恐るべし
マップを確認していると、1階層から7階層までの隠しルートを発見。
「7階層までの隠しルートがあるようです。階層の隠しルートなんて、今までキリさんとダンジョン攻略をして来ましたが、初めて見ました」
そう。
隠し部屋や隠し通路は見たことがあるが階層を跨ぐ隠しルートは初めて見た。
「一度攻略した事がある階層は次の階層へ行く近道が出来るんだ。けど、その抜け道も直ぐには見つけられないし、何階層飛ばせるかは分からない。それと、隠しルートの通り方も階層数が多いと危険度も増すんだ」
成る程、キリさんとはダンジョン攻略優先していたので、同じダンジョンへ2回も行った事がない。
故に、見たことがなかったのか。
「ここのダンジョンには俺が冒険者になった最初の年に来ていて15階層までは潜っているんだ。生憎、ダンジョンボスには出会えなかったけどね」
レックスさんは苦笑いしながらそう言う。
つまり、同じパーティーメンバーの中に攻略経験者がいれば階層を跨ぐ事が出来ると言う事だ。
「階層を跨ぐ隠しルートも最大で5階層位しか見つけた事がないけど、流石高性能のマップだね」
「あの、因みに5階層跨いだ時の隠しルートとはどんな感じでしたか?」
「ウォータースライダーになっていてね。途中で死ぬんじゃないかと思う。くらいのスピードに乗ってしまって、魔法で減速をかけたよ。後で師匠に『折角の訓練が』と、めちゃくちゃ怒られたけどね。ちなみにその時の師匠は先に滑っていて、俺が到着した時には10mほど岩の壁を突き抜けていたよ」
そりゃあ死ぬでしょう。
てか、それでも生きているバーナードさんて何者?
S級冒険者だったよね。
「身体強化魔法の訓練だと思えばいいだろう」
バーナードさんは身も蓋もないようなことを言う。
「そんな訓練のためにダンジョン壊しちゃったんですか?」
「ある時俺は身体強化魔法の三重掛けと結界魔法の同時発動を成功させたお陰で全治3週間の怪我ですんだ。まぁ、それも直ぐに仲間の治療魔法のお陰で直ぐに治ったんだがな」
「ええ、そうですね。あの後は結構大変でしたよ」
レックスさんがしみじみと昔を思い出して言う。
けど、
「5階層分のウォータースライダー?マジ死ぬでしょう。実はアホなんですか?」
バーナードさんに聞こえないようにレックスさんにそう呟いた。
レックスさんは「どうでしょう。お陰で俺が大人にならなければと、変わるきっかけになりましたけどね。ちょっと、昔の俺は褒められた性格はしていなかったので」
再び苦笑いするレックスさん。
「昔話はもう良いだろう。時間がないんだからとっとと飛べ」
バーナードさんはそう言うとマップに書かれた隠しルートの方へと歩き出す。
どうか、7階層分のウォータースライダーではありませんように。
切に願う。
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