お前らダンジョンボスを倒して来い
「5階層まではそれ程強くないから二人で戦ってみろ。お互いに何が得意か不得意かを理解し連携をとる練習に良いだろう」
バーナードさんはそう言うと私達の後方へと下がる。
「エトラさん。索敵とかは得意な方ですか?」
レックスさんが私の隣に並び問い掛けて来た。
本来なら初めてパーティーを組んだら何が得意で何が不得意か先に自己紹介するのが本当だ。
けど、頭脳筋のバーナードさんは即実践派。
正直指導者としては何かが欠けているとしか言えない。
「基本的な魔法は大体使えます。ただ・・・」
但し、呪文はこの世界の物は殆ど覚えてはいない。
クロードさんが言うには呪文とは、その魔法のイメージをする為の手段にしか過ぎないのだと言う。
つまり、イメージが出来て、その魔法に対して必要な魔力の供給が出来れば無詠唱で魔法を行使出来るのだとか。
因みに、私の転移魔術は無詠唱で行使出来る。
けど、その他はまだまだその域に達していない。
「私の呪文はオリジナルなので、既存のモノとは違います」
「オリジナルですか?」
レックスさんは驚いたように目をパチクリとさせた。
「元々(人間の)魔術の先生に教えて貰ったことがないので、自分なりのオリジナルの呪文なんです」
クロードさんには色々教えてもらったけど、人間ではないし。
「そうだったんですね。エトラさんのお爺さんの件は聞いています。先生を雇うにしてもそれなりの家柄とお金が必要ですから、致し方ないかと」
どこか同情めいた言葉に密かに申し訳なく思うも、その誤解は利用価値ありと打算的に思う自分もいて、私は曖昧な笑顔で対応する事にした。
「索敵ですが、私の場合は『マップオープン』で見れます」
そう言うと私の目の前にゲームのがめんのようなマップが現れる。
神様達から色々な加護も頂いているので未攻略であろうと全てのマップが現れる。
そう、全てのマップだ。
つまり、隠し部屋とか隠しルートも見れ、尚且つ、宝箱の有無。
そして、その宝箱が罠かどうかも分かる。
そして、敵の位置や敵の種類、そして敵の数。
そして、他の冒険者の位置までも把握出来たりする優れもの。
「『マップパーティーメンバーに可視化』」
と唱えるとレックスさんにもダンジョンのマップが見えるはず。
「なっ、なんですかこれ!!」
レックスさんは驚いたように目の前に現れたマップを凝視する。
「初めて見ました」
すると、後ろを歩いていたバーナードさんも前にやって来てマップを見て驚いたように「マジか、こんな便利なマップ。こりゃ無双出来るんじゃねぇか」と顎に手をやりフムフムと何やら良からぬ事を考えている様子。
「これ、下の階層も見れるか?」
バーナードさんはそう訪ねて来るが、何せこのマップのイメージは前世のゲームの感覚だ。
「すみません。今いる階層の分だけです」
そう。
それ以上を求めるなら攻略本や攻略情報検索になるだろう。
もしかしたら、検索出来るかも。
「何か知りたい事でもありますか?」
一応聞いてみる。
「ここのダンジョンボスが何階層に居るか」
「『検索、ダンジョンボスの居る所』」
するとマップの下の方にテロップが流れる。
『ダンジョンボスは現在10階層にいます。1時間後12階層へ移動予定』
「ふむ。なるほどね」
バーナードさんはニマリと微笑むや
「お前らダンジョンボスを倒して来い。それで、今日の訓練終了な」
と宣言する。
ちょっと待って下さいよ。
「10階層まで1時間で進むのは無理だ」
レックスさんも慌ててバーナードさんへ抗議する。
6階層からは敵も強い。
加えて私はまだまだ実戦経験が少ない。
そうだ。
隠しルートで飛べる所は?
そう思い、私はマップを再度見た。
お読みいただきありがとうございます。また読んでいただけたら幸いです。




