何かチグハグ
朝食後はひたすらジャガイモの皮をむいて切って揚げて塩を振っての工程を繰り返している。
が、ジャガイモの箱は昨日から作り続けてやっと二箱目に入った所だ。
ハンナさんの話では、庭の脇の倉庫にはここに置いてあるジャガイモの倍の量があるらしい。
ここは海に面している為か、夏と言っても海風のお陰で割りと涼しいらしく、今はまだ夏本番ではないのでそれ程の暑さではない。
また、陸地は相当暑いらしいと言うから、これは怪我の功名だろう。(嫁いだ公爵家から逃げ出した事、あそこは海に面していなかった)
前世の記憶にあったクーラーの無い世界で過ごす夏とか恐ろしい。
何せ、嫁いだ所はこの国の内陸部で、公爵家の家族は皆さん炎系列の魔法を得意としているらしい。
ただでさえ暑い夏なのに、熱い家族とか有り得ない。
つまり、何が言いたいかと言うと、ここはあまり暑くない土地だからジャガイモも少しは保つだろうと言うこと。
「ジャガイモは通気性が良く涼しい所で日に当たらないように保管するのが良いので、後で倉庫も見せて頂いて良いでしょうか」
一応大切な商品だから、管理は大切。
夏に入ったと言ってもまだ真夏の暑さに入る時期ではない故に、今からの対策が大事である。
保管の仕方とか色々考えねばならない。
パンの方は元々朝か夕方にしか売れないそうで、日中売れるのは本当に稀なのだそうな。
料理をしながらハンナさんに色々質問して分かった事は、この世界にはピーラーが無い事、冷蔵庫もなく夏場は氷の魔法を使える魔法師が氷を作り、それを買って食材を箱に入れ冷やしているらしい事。
故に、氷魔法師は夏場に荒稼ぎが出来るので人気の職種なのだそうだ。
けど、それも才能の内。
魔力が無ければどんなになりたくても無理なのだ。
魔力があっても適性も左右するが、努力をすれば苦手な分野の魔術も少しは使えるらしい。
私も努力すれば使えるだろうか?
流石に今までの生活で氷は出してみたことがない。
後で試してみよう。
何事もやってみなくちゃ分からないんだからね。
それと、惣菜入のパンを置かない理由を聞いてみたら、そんな料理は無いらしい。
だって食パンがあったよね。
そう思い聞いてみたら、好きな大きさに切ってピーナッツクリー厶を塗るらしく、焼いてバターとかしないのかと聞いたら「焼いてある物を、また焼くの?」と驚かれた。
ただ、生クリームを使ったケーキはあるらしいのに、サンドイッチはないらしい。
どうやらこの世界の料理のレパートリーは少ないらしい。
ハンナさんの野菜スープはもしかしたら標準なのかも。
ブイヨンとか鶏ガラスープとかは無いらしい。
ただ、香草や香辛料の類は結構使うらしく肉もスープもそれで味をつけるらしい。
そして驚きなのが、そんな世界なのにマヨネーズやトマトケチャップ、ソースがあると言う事だ。
ブイヨンとか無いのにマヨネーズとか凄くチグハグしている世界だと思う。
なんだろう?
後、驚きはそれだけではなく、何故か缶詰がある事だ。
冒険者の携帯用に作られたと言っているが、シーチキンもあると言うのは何処かおかしい。
おかしいと言えばこのコンロもだ。
魔導具の一種なのだそうだが、どう見てもカセットコンロだ。
こんな魔導具があるのになんで冷蔵庫が無いのか?
水道にしてもそうだ。
普通に蛇口から出て来る。
トイレも何気に水洗トイレだし。
このチグハグ感は何なのか。
私はハンナさんと話しながら頭の中は異次元の渦が巻いていた。
お読み頂きありがとうございます。
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