アイデアは続く
あの後、キリさんを招いてバーナードさんを上手く調教してもらいました。
行程としては、このまま馬で北に登り王都を経由して10日程、経路上にある街や村で安い宿を取り、その宿の部屋から転移魔術で別荘へ戻る、翌日にはその宿へ転移魔術で戻ると言う感じで王都に着いたらレンジさんと合流する事になった。更に王都から北上、更に馬を走らせ20日程で国境付近にある街ユラに付く予定だ。
途中で宿も村もない場所もあるけど、その時は野営地から転移魔術で飛ぶ事になる。
野営地ならともかく、何故宿を取るのに何故転移魔術で別荘へ戻るのかと言うと、宿での盗難や人拐いがあるからだ。
まぁ、S級冒険者ならそんなヘマはないと思うけど、やはり、安全第一だ。
これは旅を楽しむのではなくて、討伐の為の旅だ。
仕事も色々溜まっているだろうし、二足の草鞋も大変なのだ。
夜位はゆったりとしたベッドで寝たいじゃない。
「じゃあ、キリさん例の件宜しく」
実はゼンマイ仕掛けの時計を何となく昔持っていたスケルトンの時計を思い出し図にしてキリさんに頼んだのだ。
「はい。メイソンさんとレンジ様と打ち合わせをしてみます」
キリさんは楽しそうに笑いながら私に手を振る。
キリさんは本当に仕事好きで、新しいアイデアを提供すると水を得た魚のように生き生きしだす。
「魔石も魔力も使わない時計だなんて、日時計以来ですよね」
日時計とは、何時代なのだろう。
まぁ、なまじ魔石も魔力もあったから、科学が進んでいないのは仕方がない。
だって、この世界。
一般的に馬や馬車が交通手段だし、レベルを上げるとティムした魔獣に騎乗する人もいるらしい。
テイマーの副収入の一つが騎乗出来る魔獣のティムだ。
これを調教して騎獣にするらしい。
魔獣の種類によっては良い収入になるとか。
クエスト討伐より報酬が良いのだとか。
バーナードさんにテイマーですと話した時に、ダンジョン攻略より実入りが良いと進められた。
まぁ、実際の騎獣のお値段を聞くとそれも頷けるのだけどね。
「今度は自転車の、図形を書いておきますので、それも」
「ええ、楽しみにお待ちしております。レンジ様もエトラ様の新しいアイデアを大変楽しみにしておりますので」
ああ、何時かは本当に車も欲しいけど、あれはガソリンとかディーゼルとかの燃料が必要だから、やはり魔道具になるだろう。
けど、レンジさんに相談すればもしかしたら実現するかな?
道路も整備しなくてはいけないしね。
そんな野望をフツフツと頭に巡らせ、私は新たな仲間と共に旅へと出たのだった。
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