いざ、レンジさんの別荘へ
カーター商会の店舗であるレストランで三人で食事をした。
私の顔はあまり知られておらず、こうして時折抜き打ちの検査も時々している。
接客態度や注文から商品が出て来るまで、時折面倒な注文もして見てそのお店の対応を確認する。
入店してから既に2時間、ゆっくりとしたペースで何度か注文を繰り返し一通りの食事を確認した。
勿論、主に食べてくれたのはバーナードさんだ。
大人の男性らしく、沢山食べてくれた。
レックスさんはバーナードさん程ではないが、結構食べている。
「食べれる時に食べるはダンジョンの基本です。途中で食料が無くなる事は良くありましたので」
レックスさんはそう説明するが、確かにバーナードさんの食欲を目にした今、食料不足の原因はきっと彼だろうと目星は付く。
クロードさんから貰った麻袋があるから多少の事では食糧難にはならないだろう。
「沢山食料を持って行きますね。足りなくなっても転移魔術で戻れば良いですし」
私がそう話すと
「戻れる位の魔力が残れば良いんですが、野宿もある程度覚悟していて下さい」
そっとレックスさんが助言する。
「師匠はああ言っていて直ぐに忘れるんです。こちらがしっかりしていないと大変な事になります。お気をつけて下さい」
まだ子供のレックスさんにそこまで言われる師匠って。
「わかりました。気を付けます。同士よ」
同士は多い方が良い。
私はそう言うとレックスさんと軽く握手する。
一瞬何かを思い出しそうになるけど、何だろう?
まぁ、忘れているって事は些細なことなのだろう。
「それと、転移魔術ですが、あまり人に知られるとマズイので多用はしない方がいいです。それと、ボスダンジョンではもしかしたら使えないかもしれません。脱出の魔術もボスダンジョンでは使えないので一応参考までに」
レックスさんは先輩冒険者として色々なアドバイスをしてくれる。
面倒臭がらず丁寧に説明してくれるのでとても助かる。
正直言うと、バーナードさんは無鉄砲で自分さえ知っていれば良いと言うタイプみたいだし、キリさんは見守る保護者タイプで自分で気付きましょうと言うタイプだった。
まぁ、そんなキリさんだからサポートに回るとその気付きの部分は最大限に活かされ、完璧なお母さんと言える存在になっている。
でも、やはり初心者には基礎知識を入れておけば応用も出来ると解釈されるとちょっと辛い。
人には向き不向きがあるのだから、教えてくれたって良いと思うんだよね。
結構な時間をゆっくりとお店で過し、ちょっとだけ店員の目が気になり出した所で退出する。
後でキリさんにお店の評価を渡しておかなくては。
そして、私達はレンジさんの別荘へと向かった。
街の中心から歩くこと1時間半。
やっと目的の湖が見えて来た。
湖の向こう側に見える数軒の館。
何軒か見えるけど、別荘だと言うし、無難な大きさの物かな?
更に歩くこと1時間。
やっとそれらしいお家を発見。
そちらに足を向けると
「エトラさん、そちらではないですよ」
レックスさんがそう言って「あれです」と指し示したのはどう見ても別荘とは言えない位大きな邸だった。
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