旅の初めに
「俺、これでもキリとは大の親友でな。色々聞いているだろう。心の友とか無二の親友とか。仲間内では何時も俺と話をしていて、酒の席でも最後まで俺に付き合うくらいには仲が良かったんだ。気付くと何時も部屋に連れて行ってくれていたのもキリだったな」
バーナードさんはドヤ顔でキリさんとの親友度を説明するが、どうだろうか?
キリさんって世話焼きな所があるから、バーナードさんを一人にしておけなくて世話を焼いただけなのでは?
「一時期はもしや俺の事が好きなのでは?とマジに思ったくらいだ」
いや〜、それはないわ〜。
キリさんめっちゃ愛妻家だし。
それに、大の親友なら、そんな親友をステータス上げのオタクで変態だなんて言わないと思うし。
これは、下手に刺激するとヤバい人かもしれない。
ここは穏便に笑顔で誤魔化そう。
「そうなんですね。それでは今後も宜しくお願いしますバーナードさん」
故郷の言葉にこういう言葉がある。
触らぬ神に祟りなし。
それに藪蛇になっても困るし。
何より、クロードさんの言葉が頭を過ぎったからだ。
勝率は仲間次第。
もしかしたら、それはバーナードさんの事ではないだろうか?
こちらは自分の命が掛かっているのだから、勝率が上がる事は全てしておきたい。
体力や魔力量が二倍になるのであれば、きっと勝率も上がるはず。
良く言うではないか、郷に入っては郷に従えって、きっとこれはレベルを上げたければステータス上げのオタクに学べと言うことだろう。
「宜しくお願いします。師匠」
私は深々と頭を下げる。
バーナードさんは気を良くし「任せなさい」と胸を張る。
何とも分かりやすい人なのだろう。
商会運営いのために、タヌキやキツネと商談する事もしばしば、ここまで分かりやすい人はそうそういない。
冒険者仲間としては腹の探り合いがない分楽だろ。
「ところで、旅に出る前に大切な確認がある。キリからは君の転移魔術は行った先から決められた場所に帰還、帰還した場所から前に行った先へ転移と聞いていたけど、違うよね」
あれ?もしかしてこれはバーナードさんにはバレていると言う事では?
「ステータス上げをしていく内に、何をどうするとどのようなステータスがどういう風に上がるか分かるスキルニ目覚めたんだ。君の転移魔術、既にMAXになっている。普通は色々な伸びしろの選択肢が見えるのにだ」
なんとも変態らしい説明だ。
「はい。本来は座標計算をして魔術に組み入れるらしいのですが、私にはまだそこまでの技術が足りず、イメージした場所への転移魔術が可能です」
そう、暗算で座標計算なんて無理。
そこまで頭は良くない。
「成る程、普通のステータスは身体を酷使すれば上がるが、知能は勉強しなければ上がらないからな、とても理解出来た」
バーナードさんにそのように納得されると、正直自分が馬鹿になったような気になるのは何故だろう?
「ソウデスネ」
思わず目が死んでしまったのは仕方がない。
お読みいただきありがとうございます。また読んでいただけたら幸いです。




