冒険者仲間と初顔合わせ
翌日、早朝から私はウエストンにカーター商会として出店しているレストランのお店の事務室へと転移魔術で飛んでいた。
ウエストンへの出店の時に数日だけ来ていただけで、この街を全部見て回った訳ではないので、今日は1日ゆっくりと街の見学をしようと思う。
キリさんも、相手方に今日の朝に出発すると連絡しているはずなので、合流は明日でも大丈夫なはず。
「さて、どこかで朝食を取ろうかしら」
色々な場所の食事を摂るのは市場調査をする上でとても大切な事だ。
「ついでに、ウエストンに出店しているもう一店舗のテイクアウト専門店の方も見てみようかなぁ」
別に、抜き打ち検査と言う訳ではない。
前世でもあったよね、抜き打ち監査。
朝に会社に入る時に怪しいスーツの団体が立っていて、それが抜き打ち監査とか良くあったなぁ。
けど、不思議と先輩方は「監査来ている」と察していたっけ。
そんな事を考えながら私はお店の外へ出た。
出た所で私の目の前には二つの人影が。
「カーター商会会頭のエトラ・カーターさんですよね」
顔を上げるとそこには短髪の気合いの入ったお兄さんと、私とそれ程変わらない年齢の男の子が立っていた。
「はい。そうですが」
目の前に立つ二人からとても強い魔力を感じる。
キリさんからはSランク冒険者に依頼したと言われていたのできっと彼等の事だろう。
けど、てっきり一人だと思っていたけど。
「俺はこいつの仮の保護者なんだけど、今回初の護衛任務なので、少しの間同行しようと思う。俺はバーナードで、今回依頼を受けたこいつはレックスだ。宜しくな」
バーナードさんはそう言うと私に手を差し出して来る。
これは握手だよね。
「こちらこそ宜しくお願いします」
そう言ってバーナードさんの手を取った。
ギュッと強い力で握り返され私は思わず手に強化魔法を転回する。
「まぁまぁかな」
バーナードさんは手を離すとそう感想を述べた。
「お前、キリにしごかれたんだろう?ちょっと温いんじゃないかぁ?」
何とも失礼な方だ。
「それだけの魔力の資質を持っていて勿体ねぇな。よし、ギリギリまで俺がしごいてやるよ。感謝しな」
バーナードさんは私の頭をワシャワシャと撫でながらそう宣言した。
「こんなんじゃ、神の山に行く前に魔獣に殺られてしまうぜ」
抗議しようと思った時にバーナードさんは私にそう言うと
「せめて体力は今の二倍にはしなくてはいけないな。同時に魔力量も上げて。あぁ、楽しくなるなぁ」
バーナードさんは興奮気味にそう言うと、隣に立っていたレックスさんが心底辟易したような顔になった。
もしや、この人がキリさんが言っていたステータスオタクの変態さん?
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