レンジさんと初対面
さて、キリさんにお願いしてレンジさんを食事にご招待してから早3週間。
とうとうその日がやって来た。
前日にキリさん経由でレンジさんから何故かドレスをいただいてしまった。
まあ、私の正体が元王女だということを知っているレンジさんなので、ドレスの贈り物が変だというわけではないが、今は何せ男装している最中だ。
どうしたものかと悩んでいると、キリさんが「レンジさんたってのお願いですから」と念を押されてしまった。
なので、当日私は料理を出してくれるスタッフに「私は本日女装するよ」と、宣言してのドレス姿だった。
髪の毛はハンナさんが私が男装する時に斬った髪の毛を取っていてくれたらしく、それでウィングを作ってくれた。
元の髪の毛よりは短いが、まぁ、淑女としては及第点の長さだろう。
レンジさんから届いたドレスは淡い水色のドレスで、ふんだんにフリルやレースがつけられており、とても可愛らしい物だ。
正直着ている本人がめちゃくちゃ恥ずかしい、けど、それもすぐに満足感の方が強くなり、変なテンションで身支度を整えていく。
こんなにおしゃれするなんていつぶりだろう?いや、なかった。
よくよく考えてみるが全然なかった。
だって、結婚前は冷遇されていておしゃれどころか着替える服さえも困るほどだったのだ。
それに結婚後はすぐに男装してしまって、おしゃれとはえ縁遠いような気がする。
レンジさんから頂いたのはそれに合わせた絹の長い靴下にドレスとお揃いの色の靴。
それと髪飾りにネックレスとイヤリングもありサファイアがあしらわれていた。
正直に言えば高価すぎて常に頭や首、耳たぶが気になってしまう。
化粧はリナさんにお願いして着付けから始まり格闘する事2時間。
やっとフル装備が完成した。
約束の時間ギリギリだったよ。
お店の前に出ると丁度レンジさんを乗せた馬車が到着する。
馬車のドアが開くとキリさんが先に降りてきてレンジさんをエスコートする。
レンジさんはナイトブルーの髪にルビー色の瞳のイケオジで一瞬誰かを思い出しそうになったが、それを考える暇もなくレンジさんが手を差し出して来る。
「お招きありがとうルノー・レンジです」
「エトラ・カーターです。本日は遠い所お出で下さりありがとうございます」
淑女の礼をしてから私はレンジさんの手を取る。
すると、レンジさんが私の手を引き手の甲へと軽くキスをした。
「貴女にお会いできる日を楽しみにしていました」
そう言って微笑みかけるレンジさんは、とても紳士的で思わず心臓の音が飛び跳ねた。
この世界に来てこんなに女性扱いされるのなんて初めてだ。
思わずドキドキしてしまった。
お読みいただきありがとうございます。また読んでいただけたら幸いです。




