キリさんのスイッチ
「ちなみにですが、東京ドーム30杯分とは、この前伺った冒険者ギルドがまるっと入っちゃうくらいは大きいです」
一応少なめに話しておく。
本当の事を言ったらとんでもない事になるかもしれないからだ。
こんな麻袋がまさかの国宝級になるかもしれない。
陛下が麻の袋を拝む光景とか、ちょっと見たくはないように思える。
「何と、これ程便利な物があるのなら、もっとクエストを受注するんだった。 オークの群れとかゴブリンの群れとか、はたまたそのキング討伐とか。ゴッソリ倒して持ち帰れるのでは・・・」
キリさんは麻の袋を見ながら何やらブツブツと不穏な事を言い始めた。
「今日、休息地に着いたら飛んで帰り、そのままギルドで後5・6位は受注行けるのでは?最短で冒険者ランクとレベルを上げるのには最適だよな。ついでに、あのクエストとあのクエストも受注しようか。それで・・・」
「あっあの、キリさん、一応討伐してから受注しませんか?それもありなんですよね」
このままではとんでもない量のクエストを受注しかねないと、慌ててキリさんを宥める。
「後からクエストを受ける事は出来ますが、既にクエストを他のパーティーに受注されてしまうと受けられなくなるのです」
そりゃそうですよね。
先に受注した者勝ちですよね。
分かります。
分かりますけど、クエストの期限を過ぎてしまうとペナルティーや罰金が発生する事もあるんですよ。
まぁ、簡単に数十万単位の取引を勝手にしてしまうキリさんからしたらはした金なのでしょうが、借金のあるカーター家としては節約したい所です。
だって、罰金やペナルティーは必要経費じゃないから。
まぁ、キング討伐は参加パーティーの制限はないから、そこを狙って行きましょう。
「えっ!」
どうやら私の心の声はキリさんには届いていないようだ。
「さぁ、多数の魔力を反応があちらにあります。行きますよエトラ様」
「えっ!」
キリさんの暴走に付き合わされる事夜まで、私はキリさんに言われるままに魔獣討伐に明け暮れる事になった。
お陰で冒険者ランクもレベルもこの一週間で上がる事になった。
誰でしょう、キリさんの変なヤル気スイッチを押したのは。
そして、有り難くない事に私は冒険者ギルドで『新人の破壊魔』と言う不名誉な二つ名を頂くことになった。
ちなみに、現在の冒険者ランクはDプラスと言った所だ。
誰だろう、戦闘狂と一緒にするなみたいな発言したはずのキリさんもよっぽどの戦闘狂でしたよ。
お読みいただきありがとうございます。また読んでいただけたら幸いです。




