麻袋はスゴイ
袋は見た目麻の安物のような形をしていて、単なる野菜の収穫袋程度に思っていたが、キリさんの魔道具発言でもしやと思い出してみたのだ。
「こっ、これは」
キリさんは私の出した麻の袋を見て目を見開いた。
「時間止めの魔法が入っています。とてもレアですね。それと・・・」
そう言うとキリさんが更に眉をしかめた。
「容量が東京ドーム30杯分となっておりますが、東京ドームとは何の事でしょうか?」
東京ドーム、元にほんじんの転生者としては大変馴染みのある名称だが、確かにこの世界の人には通用しない言葉だ。
多分、この袋の所有権がクロードさんから私に移った事によって、物の説明が私馴染みな言葉になったものと推測される。
けど、東京ドーム30杯分って、この小さな麻の袋にそんなに入る訳?
だって見た目は買い物袋より小さいのに、魔道具とはとんでもない物のようだ。
私の魔道具の認識なんて冷蔵庫や洗濯機とか、結構な大物なんどけどね。
「ドームと言うと丸い屋根とかですかね。球状とかの?」
キリさんが思案気味に私が手に持つ麻の袋を見る。
「はい。球場です」
私の返答にキリさんが更に頭を傾ける。
なにやら意思の疎通があるようだ。
「あの、このままコカトリスを袋へ入れても良いものですか?」
何せ生物だ。
臭いとか、何とか袋についたら嫌だし。
「基本的に魔道具の袋の中は亜空間になっており、物質同士の干渉は一切ありませんので、そのまま入れても大丈夫です。ただ、問題は質量が袋の容量を越える事が出来ないと言う事です」
キリさんの説明に私は「なら大丈夫でしょう」と太鼓判を押す。
だって東京ドーム30杯分だよ。
コカトリス6体位余裕でしょう。
「エトラ様がそのように言うのであれば大丈夫なのでしょう。魔道具の袋をコカトリスへ向けて魔力を込めて『イン』と言って下さい。そうすればコカトリスが袋の中へ入って行きます」
キリさんの説明の通りに私は麻の袋を開きコカトリスの方を向け『イン』と唱えながら魔力を注ぐ。
すると、目の前にあったコカトリス6体はアッと言う間に麻の袋の中へと入って行った。
「出すときは逆に『アウト』と言いながら出したい物を思い浮かべながら魔力を流します」
キリさんの説明に今度は「アウト」と言いながらコカトリス一体を思い浮かべた。
すると、目の前にはコカトリス一体だけが麻の袋の中から現れる。
「お見事です。エトラ様」
キリさんが拍手をしながら私を称賛するが、何故かバカにされているような気持ちになってしまう。
「キリさん、やめてください恥ずかしいので」
私はそう言うとそそくさに先ほど出したコカトリスを再び袋の中へ閉まった。
だって、本当にスゴイのは私じゃなくて、この麻の袋がスゴイのだから。
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