キリさんの能力
さて、イクラとウニの新食材申請の手続きをした所、半年はかかるとの事でメルさんに相談した所、ノスさんの加護を貰って相談する事になりました。
勿論、保護者としてクロードさんの同行は原則ですけど。
そして、ノスさんの所へ行く時はロスさんの加護も一緒に貰うように言われ、現在時の神殿に来ています。
「勿論加護は惜しみなく授けましょう」
快く了承してくれるロスさんとは対象的にノスさんは少し暗い顔で頷くのみ。
「ノスの力は強すぎて制限があるからね。加護を授けるのにも抵抗があるのだろう」
ロスさんはそう言うとノスさんの方を見た。
「ロス、すまないね」
ノスさんはそう言うと私の方へと歩み寄る。
「エトラさん。決して加護を授けたくない訳ではないのだ。ただ、子供を見ると少し気持ちが落ちるだけで」
そう言うとノスさんは私の手を取る。
「私の力は大きいが故に制限も多いし、条件も多い。その条件に、ここのヤマト島の海底洞窟のダンジョンのレアアイテム、時の雫が不可欠で、それを入手してからでしか加護を授ける事が出来ないんだよ」
ノスさんはそう言うとクロードさんの方を見る。
「そう言えば、そうでしたね。姉上が貴方の力が悪用されないように色々と条件をつけたんでした。時の雫もその条件の一つですね。ですが、困りましたね。私達神はダンジョン攻略に同行出来ないのですよ」
クロードさんが困ったように私を見た。
「エトラには申し訳ないけど、高ランクの冒険者を頼んで潜るしかないですね」
クロードさんも苦笑いしながらそう助言する。
「因みにですが、その海底洞窟の名称は?」
クロードさんは神妙な顔で
「深海洞窟ですよ」
と教えてくれた。
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「深海洞窟ですか?」
ヤマト島から帰るなり私はキリさんに相談した。
因みにだが、1日一神と言う事で今日はロスさんの加護を授けて貰った。
「深海洞窟はSランクのパーティーが挑戦するような所です。それを、冒険者初心者のエトラ様が挑戦するのは正直お勧めは出来ません。そんな事をしたら私がレンジ様に殺されます」
そう断言するキリさん。
「Sランクパーティーに護衛を頼んだとしても初心者を連れてのダンジョン攻略は少々無謀と言うものです。せめてエトラ様自信がBランク位の実力がないと、引き受けてさえ貰えない可能性もあります」
キリさんの言う事は最もだ。
Sランクパーティーが攻略に当たるダンジョンと言うだけでも難易度が伺える。
それをド素人を連れて護衛しながらとなれば、皆さん嫌がりますよね。
「丁度いいです。もともとAランクの冒険者を目指していたのですから、ウニとイクラの使用許可が下りるまでの半年で冒険者レベル上げをしましょう」
キリさんの提案は確かに妥当だ。
でも、やりたい仕事も多い。
けど、転移魔術もある事を考えるとなんとか両立出来るのでは、と思い至る。
キリさんにバレても大丈夫かな?
私はキリさんをジッと見る。
この人はどこまで私の事を知っているのだろうか?
私は意を決してキリさんを見た。
「キリさんは、私の事を何処までご存知ですか?」
この人は何処まで信用出来るのだろうか?
私の後ろを全面的に預けても大丈夫な人だろうか?
そう思い、私はキリさんをジッと見る。
キリさんは一瞬口を開くが、直ぐに思案し再び口を開いた。
「私はエトラ様の本来の名前を知っています。そして、能力も。私のスキルは鑑定。レベルや隠匿魔法に関係なく全てのモノを鑑定出来ます。ですので、エトラ様が本日授かった加護も知っております」
レンジさん、とんでもない人を私の所へ寄越していたんだ。
「因みにですが、それら全てレンジさんは」
「勿論知っております。もしそれがお嫌でしたら、私をエトラ様の補佐から解任しレンジ様の元へ帰してください」
キリさんは深々と頭を下げてそう言った。
勿論、情報が全てレンジさんの所へ行くのは正直嫌だけど、かと言ってキリさんを解任するのはもっと嫌だ。
「構いません。それでもキリさんには私を補佐をして欲しいです」
真っ直ぐにキリさんを見つめてそう宣言する。
キリさんは一瞬目を見開き、次の瞬間にはニコリと笑みを見せた。
「ありがとうございます。レンジ様の次の主人としてエトラ様にお仕えいたします」
お読みいただきありがとうございます。また読んでいただけたら幸いです。




