お値段はイクラ?
「あの、捨てるだけだった物が、これ程の味に・・・」
ウシオさんが空になったどんぶりを眺めながら私の顔を見た。
「この料理は幾らで出す予定だ?」
ウシオさんが何かを考えるように聞いてくる。
「ウシオさんなら幾らまでなら注文しますか?」
そう、そこだ。
多少高くても大丈夫かとも思うが、何せこの世界の人はウニを排泄物だと思っているのだ。
だから、最初の間口は広い方が良いと思うんだよね。
「う~む」と悩むウシオさん。
そりゃそうだ。
なにせ初めての食材なんだから適正な値段なんてわからないだろう。
「最初は皆さんに食べていただいた軍艦巻きから提供を始めようかと思います。その名も『特上寿司』」
「特上寿司?」
ギルマスのアンソニーさんが反応した。
「はい。今お出ししたウニとイクラの軍艦巻きにマグロとサーモンとイカとエビが一貫ずつに味噌汁と茶碗蒸しのセットで最初の1ヶ月はオープン記念価格で500リンにしようかと思います。以降はメニューの内容も見直しし、適正な価格に変更します」
「ふむ。500リンでオープン価格なら客は入るだろう」
アンソニーさんが太鼓判押してくれる。
「が、その茶碗蒸しと味噌汁とは何だ?」
ヤマト島には普通にあったが、ここではどうやら流通していないようだ。
リナさんもウシオさんも「味噌汁って言ったら味噌汁だよな」とか「茶碗蒸しは茶碗蒸しよね」と説明にもならない事を言っている。
「味噌汁とは味噌と言う食材で作ったスープです。茶碗蒸しは鳥のだし汁に卵を入れて色々な具材を入れ蒸して固めたものです」
これで分かってくれただろうか?
「少し想像はできないが了解した」
アンソニーさんはそう言うとポンと一つ手を鳴らす。
「オープンするのを楽しみにしているよ。それと、どちらも新しい食材なので国の許可をもらってからオープンするように、これはギルドマスターとしての助言だ」
アンソニーさんの一言にジャガイモの時の事がよみがえる。
「大丈夫です。すでに書類は作成しておりますので、本日提出にうかがわせていただきます」
流石有能なキリさんだ。
ニコリと微笑むキリさんに、アンソニーさんが「待っているから急いで持ってくるように」と笑顔で対応。
「では、我々は戻るとしようか」
アンソニーさんがマキシムさんを促す。
「はいマスター」
マキシムさんもアンソニーさんに習い、席を立つ。
「エトラさん。何かお役に立てる事がありましたら何時でもお越し下さい」
マキシムさんはそう言うと一礼する。
「はい。その時は宜しくお願いします」
はい、既に冷蔵庫なる魔道具の着手にお力をお願いしようかと思っていますよ。
私は笑顔でマキシムさんとアンソニーさんを見送った。
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