実は、結婚はカモフラージュだった
家庭の事情で長らく休んでいました。
リハビリを兼ねて執筆を始めたいと思います。
宜しくお願いします。
ある晴れた夏の日、私ミリア・エトラ・ルワールは10歳で隣国の公爵家に嫁いだ。
神殿で執り行われた夫婦の誓約。
まるでおままごとのような指輪の交換。
両国のさらなる友好の為に行われた結婚式は本当にささやかなものだった。
夫となったのは私と同じ歳のアレックス・レノル。
レノル公爵家の嫡男で、今は公爵家が持つ爵位の中のルブラン伯爵と言う名を継いでいる。
ナイトブルーの髪にルビーのような瞳で将来イケメン間違いなしの顔立ちで、炎の加護持ちだ。
加護持ちとは普通の魔術師とは別格で、魔力の量も半端ない将来を約束された選ばれし人達だ。
一人で一騎当千と言われる位の能力があるのだ。
魔力なしの出来損ないの私とは違って炎の加護持ちの魔術師の彼。
何故このような優良物件が私のような王女とは名ばかりの不良物件と結婚しなければならなかったのか。
疑問だらけである。
その証拠に隣を見れば、ほら、眉間にシワを寄せている新郎の姿。
思わずため息をつきたくなるのを何とか我慢する。
一応これでもルワール国の第五王女だった私の結婚式に同行した祖国の関係者は、兄である第三王子のアンドリューと宮廷魔術師のシュス、そして副将軍のゼバス、以下第二騎士団の皆様だ。
因みにこの3人も加護持ちで、我が国の要人と言える列席者は本当にこの3人だけだった。
父が来るわけでも母が付き添うわけでも、ましてや大臣クラスが同席する訳でもない。
本来なら外交官も同席して然るべきだが、今日は別件があるとかで欠席している始末だ。
まぁ、親に関しては新郎側も出席していない、手抜きもここまでくれば案外清々しささえ感じられる本当にこぢんまりした結婚式だった。
お兄様含む加護持ちの3人は一通りの儀式を見届けてから祖国へと帰還する。
馬車で片道2週間の道のりだったが、馬で最速で帰れば1週間位で着くだろう。
「お兄様、本日は遥々隣国まで同行頂きありがとうございました。道中お気をつけてお帰り下さい」
「ミリアも体を大事にな」
そう言ってお兄様は私の頭を撫でる。
特別親しくもしていなかった兄。
何せ、私達は異母兄妹で、片や将来有望な加護持ち王子、片や加護も無ければ魔力も殆どない落ちこぼれの王女とでは正直接点はない。
今回の結婚式への同伴だってくじ引きで決めた位だ。
因みに、私の他の姉妹は皆優秀な魔術師で幼い頃から婚約者がいる。
魔術師の才能があるか無いかで人生は殆ど決まってしまうのがこの世界のセオリーだ。
故に、何度も言うが、魔力の才能の無い凡人と、加護持ちの公爵家嫡男令息との婚姻なんて、政略結婚以外の何物でもない。
今回の婚姻はもともと両国の武力が拮抗しているので、お互いの国の友好のため、本来なら今日は両国の同盟締結の場でもあったはずだ。
が、実際蓋を開けて見れば形だけの結婚式。
お互いに最低限の招待客。
けど、その裏では我が祖国ルワールに宣戦攻擊を仕掛け、両国はこれより5年間の戦争へと突入することになるのだ。
戦力の三分の一の規模を持つ第二騎士団が留守の今、戦いの火蓋は切られたのだ。
最後までお読み頂きありがとうございます。
また読んで頂けたら幸いです。