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第六話 連携


 樹々が倒れた方向へ急ぐ。セシリアがラヴィたんを抱えて。そこに姿を現したのは――。


 金属質の蹄と口元、そして、セシリアの倍の高さに顔が位置する巨大な体躯(たいく)。その頭部には猛々しい二本の角を携えている。

 その異様な魔物が周辺の樹木を薙ぎ倒していた。


「キャコタウルスだとっ?!」


 こいつは……瘴気の洞穴近くで時々見つかる強モンスター、こんなところにまで来やがるものなのか――。いや、明らかにおかしい。


「冗談じゃねー、こんなの二人だけで討伐するような相手じゃねーぞ、撤退も視野に入れる! それと、コイツは魔炎弾や火炎を放つから注意しとけよ」


「わかってる! でも、からだ動かしたくてウズウズしてたし丁度いいわ」


 そう言うと躊躇(とまど)いなく魔物へと走り出す! やる気満々である。オレがフォローにまわるか。頼むから無茶な真似はしてくれるなよ。

 キャコタウルスの左前足目掛け、下段に構え突進したセシリアの剣が真横からぶつかる! 体重に速さを乗せた一撃だ。しかし――、


 ガキィィーーイッン!! セシリアの一撃は硬い皮膚に弾かれた! 即、飛び退き、態勢を整える。一撃離脱だが、


「かったーいっ! なんて硬いの、まるでプレート着込んでいる様だわ」


 すぐさまキャコタウルスの反撃、巨大な頭を左右に振りながら突進してきた!


 右! 左! 右! と、交互に角をセシリアに突きつけ、その度、彼女の剣との交錯音が鳴り響き、腕に衝撃が走る! しかし、一撃、一撃の威力はあるのだが……、


「先の動きの読める攻撃だったら、こうよっ!」


 ――順番に来る角の攻撃の合間を縫って剣で顔面突きを繰り出す!


 ガキィィーーイッン!!


「もーーっ! やっぱり、かったーーいっ!」


 彼女の刺突をキャコタウルスは口元で受け、周囲に激しく金属音を撒き散らすだけだった! 突きの反動で大きく後方へと距離を取る。

 魔物はその間に口の中に赤く光る球体を生み出し、蓄えた火球が徐々に大きくなる。そして――、


 ジージジジジッーーッ! 激しく音をたてはじめ、口元から炎が漏れ出してきた。


「セシリア来るぞ、魔炎弾だ!」


 ボンッ!! 鈍い破裂音と共に拳大の火球が、飛び退き転がるセシリアの横を過ぎ、地面を穿つ!

 その穴は深く、周りの土をも跳ね上げた。

 間一髪で転がって避けた彼女は立ち上がり、体勢を整える。そして、まだ口元から煙を吐いているキャコタウルスを半身(はんみ)の姿勢でビシッ! と魔物を指差した。


「そんなの反則よっ! 皮膚が硬すぎだわ、ぜんっぜん効かないじゃない!」


 ……オメー、魔物に文句言っても意味ねーぞ! だが、一連の攻防を見る限り、突進が止まった時に好機がうまれるはず。


「セシリア、もう一度だ!」


 この体の筋力の無さを補う為、オレはナイフと体全体に強化魔法を付与する。


 再度、セシリアがキャコタウルスに突っこむ! そして、また角と剣のぶつかり合いに突入した。力比べでややセシリアが押される。セシリアの歪む表情がオレの横目に入る。

 ぶつかり合う度、周りに伝わる空気の悲鳴! 角の一撃でも貰えば確実に致命傷となるだろう。

 しかも、皮膚が厚くて相手には傷すら付かない。


 頼む、なんとか(こら)えてくれよ。祈る思いでセシリアの陰から、キャコタウルスの死界になる位置に潜り込む。


 この位置ならいける! いくら皮膚が硬かろうが――、


「柔らかい部位ってもんがあんだ、――よっ!」


 ビシュンッ! キャコタウルスの前足の付け根、つまり人間でいう脇の部分から血飛沫(ちしぶき)が跳んだ! だが、浅い。ラヴィたんの体を目掛けて後足が飛んでくる! 前傾になっていた頬を、ビュンッ! ――ギリギリで躱し、なんとか掠らせはしない。


 「ジェリドッ!」


 クッ! 小さく苦鳴をあげる。風圧だけでもダメージを味わいそうになる。が、ラヴィた(オレ)んに気を向けた隙を突き、セシリアの剣がヤツの瞼に届いた。


「心配するな、まだいける! 何度も斬っていく必要がある。長引くぞ!」


 そして、もう一度セシリアに正面攻撃を任せ、オレはヤツの脇を斬る! また、後脚が飛んでくる。 斬る! 斬る! 斬る!

 しかし、魔物の正面に立っているセシリアはキャコタウルスの攻撃に耐えながらも、――ビジュ! ビュン! 一撃交えるごとに、腕、肘、頬から赤い粒を飛ばし、徐々に押されだす!


 オレはナイフの刃渡りに冷気を漂わせ、更に切れ味をギリギリまで強化する。脇の同じ場所を何度も何度も繰り返し斬り、さらに斬り、返す力で斬り! そして、耐えきれなくなった魔物の皮膚が遂に破れる。 よっしゃー!


 キャコタウルスの脇から血飛沫が舞い、ヤツの動きが止まる、そして一度身体を沈め、一気に後ろ足で立ち上がる! でかい、顔の高さはニ階建ての屋根あたりまで到達するだろうか。


 ブモ゛ォォオーーォォン!!


 絶叫! 凄まじい音の振動で同心円上に空気の大波を作る。正面に立って居たセシリアは両腕を交差させ、地に踏ん張った両足を引き摺らされながらもその場にとどまろうとする。

 キャコタウルスはその時、既に炎の砲弾を口内いっぱいにたたえ、耐えるセシリア目掛け、まさに撃ち出そうとしていた!

 ヤツの火炎弾の威力は地面を深く抉り取る、人のからだではひとたまりもない。


 ――クッ、間に合うか?! オレはセシリアの斜め後頭部目掛けて跳んだ。


 ジジジィィイッ! 口元から激しく音を立てる。ボッ! 鈍い爆発音と共に火炎弾が放たれた!


 跳んでいたオレの体は狙い通り、セシリアの右後ろの頭部に命中、前方の衝撃波に対して踏ん張っていた彼女は前のめりに大きく体勢を崩し、そのすぐ上を火炎弾が音を立て通過し、そのまま地面に着弾した!


 ドォォーーォオン! 爆音を伴う地響きと共に、地面に底の深い穴が空いた。


 そして、オレに後ろから吹っ飛ばされたセシリアは、そのまま前方へ転がり、大きな木に激突した。 そのまま前に倒れ込んでしまった。

 オレはセシリアと激突後、そのまま上に弾き飛ばされた。


 オレとセシリアとの距離が離れた。――――シュッ・ン!




 うぅ、――気持ち悪りぃ。

――――――――


前面に抵抗しているセシリアに対して、自重の軽いジェリドは後ろから行くしかなく、彼女を守る為とはいえ、超不意打ちになっちゃいました。

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