14 飛天の書
「何でみんなサタンを狙うんだよ!」
[サタン様は特殊なスキルを持っているからですね]
「なんの話だよ? 『妨げる者』か? あれだってそんなに役に立つスキルじゃ……」
サタンのスキル……。
サタンにはもう一つスキルがあった。使ってるところを見たことがなかったからどんなスキルなのかわからない。でも……。
犠牲者の血を
いけにえを持つ者を
犠牲を払わねばならぬ
「犠牲……」
[クリアに直結するストーリースキルです]
「何で言わなかった!」
[聞かれなかったからですね]
それでパーティを組んでいたやつらは気づいたわけだ。サタンのステータスを見て。石碑の文言を見て。サタンを殺せばクリアだと。
「サタンが殺されちまう! 何かないのか! あいつの居場所が分かるような……ないか。パーティは解散してる……」
[ありませんね]
「生きてるかどうかだけでも。このスキルを持ってるのはサタンだけなのか? なんで……」
[このスキルを持っている者なら追えますよ。今のあなたなら]
「は? お前今ありませんて」
[サタン様を探すのは無理です。ストーリースキルを持つ人を探すことはできます。飛天の書をお開きください]
「飛天の……書?」
懐に入れたっきりになっていた飛天の書を出す。前は封がされていて開けなかったが、いつの間にかただの蝶結びの紐だけになっている。紐を引けば軽く解けた。
「これ……」
[レベル35以上の忍者が得られるスキルです]
巻物を開く。紙面が光り輝いて、その光が俺の体の中に吸い込まれてしまった。
[『飛天』を獲得しました]
「……飛天?」
言うともなくスキルを口に出した途端、マップが目の前に開いた。光点が点滅している。
「これ……これがサタン?」
[ストーリースキルを持つプレイヤーですね]
考える前に走り出す。そんなクソゲーあるかよ。そんな、そんな、ひとりのプレイヤーがみんなから命を狙われるなんて、そんな……
「どっちだ! ニド!」
[もう少し右手側に]
飛び込んだフィールドはどこまでも広がる草原だった。所々に湖が点在している。遠くの湖の端に人がいるのが見えた。あれか!
「お前ら!!」
5人の女たちがどよめいたのが見えた。弓師がいないのが幸いだ。狩人の女が武器を構える。『烈火の弾丸』を出す気だろう。まだ魔法使いの攻撃範囲ではないらしい。
「この距離でもいけるかな! 影下跳梁!」
体が空中に放り上げられる感覚。大きな弧を描き、風を切って回転する。さしたる衝撃もなく、魔法使いの後ろに着地。
「あっ……」
『烈火の弾丸』は魔法使いの肩に当たった。
「やだ!」
「何よこいつ! 死ねって!」
毒付きの手裏剣を投げる。この距離なら外さない。瞬く間に女の子たちが膝をつき苦しげに手裏剣が刺さったところを掻きむしる。毒の回ったところが緑色に変色している。うわー……。
サタンは湖のほとりに縛られたまま座らされていた。太刀で紐を切る。
「立てるか!」
「『メテオレイン』」
魔法使いが苦し紛れに言う。メテオレイン?? 晴れていた空が急に暗くなる……。
「やばい! サタン! 湖に飛び込め!!」
どぼんと二人で飛び込むのと同時に、炎を纏った隕石が湖のほとりに次々に落ちてきた。
「キャー!」
女の子たちの叫び声が聞こえる。こんな範囲魔法を味方がいる場所で使ったらだめだろ……。
湖の中にも大小の隕石が降る。サタンの細い体を抱いて深く潜る。水の抵抗で勢いが落ちたとはいえ、かなりの衝撃……。泳ごうとする方向にもろくに行けない。無我夢中だ。とにかくサタンを離さないように……。
サタンを……。
………。




