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学園奉仕活動―活ー  作者: k.Dameo
2/7

乙女の丸ティ盗難 THE 1


『僕は貴女を……あなたをっ……愛しているんだ!』


舞台上、学生服を着た少年が膝まずいた姿勢のまま叫ぶ。


「ふふっ……見せ場ね……」


自画自賛、まさにそう表せる程満足そうな笑みを浮かべ、客席から舞台上へ視線を向ける女子生徒がいた。


五重院春花(ごじゅういんはるか)

鬼我島学園1年でありながら演劇部の脚本を担当する彼女は己の才能に多大な自信を持ち、また、己の舞台以外には興味がなかった。


「今年もいただくわ……」


鬼我島演劇フェス。

プロアマ問わず、鬼我島で毎年行われる観客動員数で順位を争う大会にて、彼女の舞台は毎年『頑張りましたで賞』や『もういいで賞』を頂いている。

実のところ才能はなく、大企業の社長である親の力をもってしても、順位とは離れた別枠に即席で作られた賞をその都度貰っていた。だが、幸いなことなのか、当の本人はそれに気付いていない。


『私もっ……私も貴方が好きっ! だぁーい好き!』


劇も終盤。彼女いわく最大の見せ場である台詞が演者である女子生徒の口から発せられ、ピアノ主体の曲が流れ始めた。



「いいわっ……最高よっ……」



己の最高傑作に己で震え噛み締める彼女が見守るなか、舞台の幕が下ろされていき、7時間にも及ぶ非常に間延びしたつまらない劇は終演となった。



「……………」


幕が完全に降りたのを見届けた彼女は、隣で本番さながらの練習を同じように観ていた鬼我島学園奉仕活動部の代表取締役だという坊主頭の男子学生へ、さぞ感動しているに違いないと自信に満ちた顔で視線を向ける。

自分からコメントを求めないのが彼女のやり方であり、いわく、本当によいものは自然とコメントが出てくるものであり、聞く必要がないといった考えからである。……が、コメントは非常に気にするタイプでもある。


「ふ、ふぁ……ぁ……おもんなぁ……ふみゅん……」



「え、お、おもんな……」



何かの間違いだと依然として視線を向ける彼女に男子学生は気付き、欠伸で潤んでいる目を拭いつつ笑顔を向けると口する。



「いやぁ、くそつまらんかった。ねえ?」


























ーーー鬼我島学園控え室棟前。



「泥棒てなぁ……ほんまに居るんかな、そんなん」


「僕らに依頼があったのは確かだから、居るんじゃないかな……信じたくはないけど」


鬼我島学園奉仕活動部の部員であるゴリラことゴリラとロピアンの二人は、なんでも最近多発しているという下着泥棒を捕まえるため、学生達が部活動や特殊選択授業等に参加する為に着替えや荷物置き場として使う控え室棟の周辺の外回りをしていた。



「いや、でもさ、仮に泥棒が居ったとしてもこんなん探せるか? なん部屋あんねん」


ゴリラは果てがわからない遥か先まで続く棟を見てため息を吐く。


「生徒の数も毎年増えてるみたいだし、部活や特殊授業も増えて、増築に増築を重ねてるみたいだからね……150程、いや、もっと……あるのかな……」


ロピアンも遥か先、白を基調としている為、陽に照らされ白く飛んでしまってる先を見て苦笑いをする。



「まあ、仮にやで? 犯人捕まえたとしてどうするんや? 警察に突き出すんか?」



「それは……人によるんじゃないかな」



「人によるてなんや? アリスやったらぶん殴って息の根止めたり、恋やったら蹴り飛ばして息の根止めるとかか?」



「息の根しか止められてないじゃないか……。違うよ。犯人の方だよ、僕が言ってるのは」



単なる侵入者による反抗ならば警察に突き出すことだろうが、学園の生徒による犯行ならばそう簡単にはいかない、とロピアンはゴリラに説明をする。



「学園としても下着泥棒なんて犯罪も、それがまた、生徒や関係者の犯行だったとしたらもちろん表沙汰にしたくないと思うんだよ」


「教員やったらわかるけど、生徒ってなんや、親が偉いさんやったりするからか?」


「そうだね。それもあるだろうし、学園として悪い評判が広まるのも阻止したいんじゃないかな」


「なんや、汚い話やな。己の体裁ばっかり気にしとるような奴等も盗まれたもんも、両方」


舌打ちし悪態を吐くゴリラへロピアンはそうと決まってる訳ではなく単なる推測だと取り繕う。


「いやいや、ロピアンが言ってることが多分正しいわ。俺等に依頼が回ってきとんねやし。あほちゃうかほんま」


「い、いや、確かに依頼はそうだけど、一番の理由は別っていうかっ……」


「理由は別て、俺等、生徒の問題は生徒に解決させようから始まった部活やで。もうそれしかないやろ」


「そ、それはそうだけど、ち、違うんだよ。一番はうちの部の女性陣達が、その……」


「はあ? 女性陣て、あいつらがーーー」


ゴリラがロピアンへと問おうとした時、控え棟の最上階である4階部とその下階3階部と2階部から物音と怒鳴り声が同時に聞こえてきた。



『泥棒はいねえかー! いえねがー! いぇぇにぃがー!』


『不届きものよ出てこい! 私が成敗してくれる!』


『こそこそせずおいでなさい! 私が正してあげますわ!』



各階の窓を開け放つと共になにかを叫ぶ女子生徒三人。ゴリラとロピアンはそれをただただ見上げる。



「いや、出てこえへんもんが余計出てこえへんくなるからやめろや……まじで」



「もっと大きな声で言ってあげたら、どう、かな……?」



「言えるか、あほ。面倒事しかまってへんやろ、今のあいつらに絡むとか……」



「そうだよね……ははは……」



同じ奉仕活動部の部員、五月恋、鬼白アリス、中島くぁwせdrftgyモンティーくぁwせdrftg(都合により名前は出せない)による、彼女達なりの下着泥棒あぶり出しローリング作戦、それを、ゴリラとロピアンはただただ外から見上げるしかなかった。





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