Act.9-142 フルレイド『大穴の果てへの参道』終盤ゾーン 二十日目 scene.3
<三人称全知視点>
六なる大穴の守護者『トータサシン』は鉄壁の防御を誇る甲羅を背負った巨大なカメレオンである。鉄壁の防御と魔法防御を持ち、回避率も高く、その上姿を消す力を持っており、その討伐のし難さは全フルレイドボスの中でもトップクラスである。
「黒狼ノ秘剣・禍風一閃」
「殺糸戯曲」
「【機械帝神の権能】――全武装一斉掃射ッ!」
「武装闘気硬化! 黒槍突衝爆!」
「武装闘気硬化! 万物両断ッ!」
「【獅子連撃】、【大地鳴動】!」
『魂霊崩壊!』
「狐火火葬砲」
武装闘気を纏わせた攻撃でも僅かに削れる程度、覇王の霸気を纏わせてようやく大ダメージを与えられる。
それでも『鉄壁の甲羅』は破ることができない。その上新たに追加された『奇跡の甲羅』の効果で防御と魔法防御力が上昇し、更に硬くなる。
そもそも、姿を完全に消して気配も悟らせない『完全なる不可視』を常用し、移動速度も速い。
敵に攻撃を当てるだけでも困難なのに、その上当てても大したダメージが与えられない。このような鬼畜仕様のレイドボスに何故ダメージが与えられ、HPゲージが減っているかというと、偏に九人目のパーティーメンバーのおかげである。
「琉璃色の茨荊! 琉璃色の茨荊! 琉璃色の茨荊! 琉璃色の茨荊! 琉璃色の茨荊! 琉璃色の茨荊! 琉璃色の茨荊! 琉璃色の茨荊! 琉璃色の茨荊! 琉璃色の茨荊! 琉璃色の茨荊! 琉璃色の茨荊! 琉璃色の茨荊! 琉璃色の茨荊! 琉璃色の茨荊! 琉璃色の茨荊!」
ひたすら時計を割り続け、リーリエが「琉璃色の茨荊」を掛け続ける。「琉璃色の茨荊」は固定ダメージのため、防御と魔法防御力の影響を受けない。どれだけ硬い相手にも一定のダメージを与えることができるというのが強みである。
『Eternal Fairytale On-line』で最も不遇と言われ、四次元職が途轍もない強さを誇るにも拘らず敬遠され続けた付与術師系統。
その数少ない活躍の場の一つが六なる楽園の守護者『トータサシン』戦だった。
付与術師系一次元職の奥義として習得する高速詠唱や詠唱短縮による魔法の連発を行う自己強化特技「高速詠唱」で手数を増やし、「琉璃色の茨荊」でダメージリソースを作りながら小型の光弾を撃ち出して敵を攻撃する付与術師系一次元職の付与術師の覚える魔法「衝撃弾」を連打し、時々、着弾すると爆発し、周囲を巻き込み、範囲を対象に低いダメージを与え、ランダムに能力値低下を発生させる紫色の光弾を放つ付与術師系二次元職の大付与術師の覚える魔法「精神衝撃弾」を放ちつつ、付与術師系三次元職の高位付加術師の覚える魔法「上限突破」でHPとMPの上限を限定的に解除し、最大二倍までHPと MPを回復可能にするオーバーヒール状態にして、MPが枯渇し始めたら自身の魔法の届くフィールドにいる全ての存在の魔力を均等に吸収して平均して返す付与術師系三次元職の高位付加術師の覚える奥義「公平なる分配」でMPを回復する。
たった一人、付与術師系統、それも三次元職まで、課金アイテムは一切なしという縛りで六なる楽園の守護者『トータサシン』と戦いを繰り広げて被弾ゼロで勝利を収める。
その姿を動画サイトに投稿し、武勇伝を一つ増やした存在こそリーリエである。
そのリーリエの援護のもと、確実に六なる大穴の守護者『トータサシン』のHPは削られていった。六なる大穴の守護者『トータサシン』の不可視化の力でも「琉璃色の茨荊」が見えなくならないことを利用し、「琉璃色の茨荊」に全攻撃を集中する。
六なる楽園の守護者『トータサシン』よりもHPが大幅に増えていたため、リーリエ単独の六なる楽園の守護者『トータサシン』戦より時間が僅かに掛かったものの、二十分の激闘の末にラルの放った斬撃が決定打となり、六なる大穴の守護者『トータサシン』は無数のドロップアイテムと金貨を落として消滅した。
◆
「【天使之王】――天使化!! 天軍降臨――七武の天使! 天使の加護! 【透明化】! 【超加速】! 魂魄の霸気《昇華》! 魂魄の霸気《弱体化》! 魂魄の霸気《黒騎士》! 魂魄の霸気《王国》! 【劇毒之王】――猛毒之纏剣! 【劇毒之王】――劇毒八岐蛇!」
「魂魄の霸気《影撃部隊》! 《影の錐塔》!! 《影の翼》!! 《影軀逆転》!!」
アクアとディラン、これまでのレイド挑戦の中で武装闘気と覇王の覇気、神速闘気と八技(主に俊身と空歩、必要に応じて紙躱)を使ってきた二人は共に持てる手札を全て使い果たす勢いで攻撃を仕掛ける。
「離火八卦掌! 巽風八卦掌! 坎水八卦掌! 震雷八卦掌・連撃!!」
「朧黎黒流・九閃覇突!」
「魂魄の霸気《海皇》! 海王の三叉薙・凍碎! 海王の三叉突・凍碎!」
ディグラン、ヴェルディエ、バダヴァロートも一切出し惜しみすることなく全力で攻撃を仕掛ける。
アクア、ディラン、ディグラン、ヴェルディエ、バダヴァロート――五人の攻撃を正面から受けても八なる大穴の守護者『ルナー・シェード』のHPはなかなか削れない。
その理由は八なる大穴の守護者『ルナー・シェード』が楽園から大穴に名を変える中で新たに習得した『白騎士化する黒騎士』にある。
『白騎士化する黒騎士』を発動することで白騎士モードに移行し、ダメージを与えた人数と同じ数の無数の小さな暗紫の甲冑騎士を召喚する。この白騎士モードの凶悪な点は『漆黒の尖兵召喚』で召喚されたものも含め、全ての小さな暗紫の甲冑騎士を討伐するか、自身のHPが満タンになった瞬間にしか解除されず、白騎士モードの間にHPを高速回復するという点にある。
つまり、出現する小さな暗紫の甲冑騎士を倒さない限りはHP全回復状態で八なる大穴の守護者『ルナー・シェード』に復活されてしまうのだ。更に、HP全回復と同時に全ての状態異常と自身へのデバフを解除する効果があり、状態異常とデバフも引き継ぐことはできない。
八なる大穴の守護者『ルナー・シェード』を討伐するためには全ての小さな暗紫の甲冑騎士をできる限り素早く討伐し、HP回復を最小限に抑える必要があるのである。
ラインヴェルド達がその仕様に気づいたのは八なる大穴の守護者『ルナー・シェード』に全回復され、デバフと毒状態を解除された後である。
圓の指摘によって気づいたラインヴェルド達は以後、ラインヴェルドとオルパタータダが小さな暗紫の甲冑騎士の討伐を、残るメンバーが八なる大穴の守護者『ルナー・シェード』の討伐を、とそれぞれ役割を分担して討伐に当たっている。
「神威神退」「神威神去」
幸い、小さな暗紫の甲冑騎士の耐久力はラインヴェルドとオルパタータダの覇王の霸気を纏わせた斬撃を一撃浴びせるだけで撃破できる程度であるが、『漆黒の尖兵召喚』とのコンボで大量の小さな暗紫の甲冑騎士が作り出され、なかなか数が減らない。
そうこうしているうちに八なる大穴の守護者『ルナー・シェード』が高速回復……その繰り返しだ。幸い、今のところHPを八割程度で抑えているが、ラインヴェルドとオルパタータダの討伐の手が止まればそれ以上の回復を、場合によっては完全回復されてしまう。
「こうなったら、結晶騎士軍!」
ラインヴェルドと二人では止められないと判断したオルパタータダは結晶の騎士達を作り出して小さな暗紫の甲冑騎士に嗾しかけた。武装闘気と覇王の霸気を纏わせた結晶の騎士は小さな暗紫の甲冑騎士を討伐するほどの力を手に入れ、次々と戦果を上げていく。
この増援が大きくアクア達を後押しした。自身の翼で、或いは空歩で『漆黒の沼地』によるバッドステータスを回避し、構えた斧槍を大きく振り回し周囲を薙ぎ払う『漆黒の大竜巻』と斧槍を振り下ろして攻撃する強力な単体攻撃の『漆黒の斧撃』を回避し、アクア達はその後も猛攻を続ける。
HPが五割を切ると『白騎士化する黒騎士』を連発し始めるも、出現した小さな暗紫の甲冑騎士を結晶の騎士達が瞬時に撃破して被害を最小限に食い止める。
増援に加わったラインヴェルドとオルパタータダによって八なる大穴の守護者『ルナー・シェード』のHPは怒涛の勢いで削られていき、戦闘開始から二十五分で八なる大穴の守護者『ルナー・シェード』は無数のドロップアイテムと金貨を残して消滅した。
四体のレイドボスを倒したことで、閉ざされていた扉が開く。
その先でリーリエ達フルレイドパーティーを待ち受けていたのは――。
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