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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-140 フルレイド『大穴の果てへの参道』終盤ゾーン 二十日目 scene.1

<一人称視点・リーリエ>


 レイドゾーン突入から数えて二十日。遂に今日、長かった共同生活……じゃなかったレイドが終わるらしい。

 何故分かるかって? 遂にボク達の見気がレイドゾーンの最奥部を捉えたからだよ。


 ただ、今日で本当に最終日になるかどうかは分からない。……何故なら。


「この扉を抜けた先には大部屋三つが串に刺さった団子の如く連なっている。エリアのレイドボス数は手前から二、三、二……七体。……数が合わない、というか、連戦な上に複数同時確定って鬼畜仕様だよねぇ? ……正直、十五日目の地獄の大襲撃(スタンピード)とどっちがマシか分からないけど」


「あれ、本当に地獄だったよな。まあ、クソ楽しかったから良いけどさ!」


 それ思っているのはラインヴェルド、オルパタータダ……一部の阿呆な奴らだけだと思うけどねぇ。最終的にはアクア、ディラン、エイミーンもげんなりしていたし。


「さっきジャイアントホール防衛組に確認したんだけど、レイドボスは最大二体引き受けられるらしい。ただし、二体同時は戦線を支えきれなくなる可能性があるのではないかとリーティアナさんとアレクサンドラさんが危惧しているらしく二体同時対処は無理とのこと」


「……いや、別にいけるんじゃないか? あっちはあっちで戦力が揃っているんだし」


「今日は運良くルヴェリオス組と藍晶がいないだけだし対処はできると思うよ。というか、今更だけど、レイドボスの強さを高く見積していた気がしないでもない。……そういえば、ラインヴェルド陛下達って少数精鋭でレイドクリアしていたねぇ、ブライトネス戦争で。ただ、最悪の事態を想定することは必要なこと、ボクも条件に同意した。まあ、部屋分かれているし、一部屋目で複数体同時対処みたいな事態にはならないでしょ」


「私知っているのですよぉ〜! それ、フラグって言うのですよぉ〜」


 エイミーンが何か言っているけど気にしない。いや、普通レイドボス戦中に次のボスが入ってきたりしないでしょう? そもそも二体以上のボスが徒党を組むのもおかしいし、それ以上増えたらコンテンツとして崩壊しているじゃないか。


 レイドゾーンに入る。場所はこれまでのレイドボス達と同じ巨大な円形闘技場(コロセウム)

 待ち受けていたレイドボスは三なる大穴の守護者『アーチフィンド・イビルプリースト』と六なる大穴の守護者『トータサシン』の二体。


 三なる大穴の守護者『アーチフィンド・イビルプリースト』は状態異常魔法とデバフ攻撃を得意とする魔を統べる神官でランダムに状態異常を発生させる『状態異常の法アブノーマル・コンディション』、デバフを発生させる『弱体化の法(デティアリアレート)』、闇属性の治癒魔法で回復する『暗黒治癒の法ダークネス・ヒーリング』、暗黒の巨大な火球で攻撃する『暗黒火球の法ギャラクティカ・ブレイズ』を使用する。


 六なる大穴の守護者『トータサシン』は鉄壁の防御を誇る甲羅を背負った巨大なカメレオンで玄武のように蛇のような尻尾を持ち、マフラーのように巻いている。姿を消す力で不可視となり、死角から攻撃を仕掛けてくる脅威的な魔物だねぇ。

 姿を完全に消して気配も悟らせない『完全なる不可視グレート・インビジブル』、蛇のような尻尾で攻撃する『蛇鞭の乱舞(サーペント・ラッシュ)』、鉄壁の甲羅に隠れることであらゆる攻撃を無効化する『鉄壁の甲羅パーフェクト・ディフェンス』、溶解液を纏った舌を敵に巻きつかせる『溶解する舌撃(メルト・タング)』を使用する。


「《蒼穹の門(ディヴァイン・ゲート)》」


 転移させるのは三なる大穴の守護者『アーチフィンド・イビルプリースト』。

 六なる大穴の守護者『トータサシン』だと万が一スティーリア達の追跡を振り切って逃げられたら厄介なことになるからねぇ。……姿を消された状態でも見気で捕捉できるから問題はないと思うけど。

 見えない敵にヴァンヤール森国が蹂躙されたってなれば、リーティアナ達に顔向けできないし。


 三なる大穴の守護者『アーチフィンド・イビルプリースト』を転送して、さて、残った六なる大穴の守護者『トータサシン』を倒してしまおうと動き出そうとしたタイミングで反対側の扉が開いた。

 扉が開いたら当然、この部屋の奥にいるレイドボス達がこちら側に入ってくることになるよねぇ。……つまり、エイミーンの言った通りフラグが立ったってことか。同時四体……まあ、一パーティーで一体相手すればどうにかなるけど、やっぱりレイドコンテンツとしては崩壊しているよねぇ? これ、レギオーレイド以上の人数を対象のレイドだと思うんだけど、ボクの感覚がおかしいのかな?


 レイドボスの数が減ることが扉が開く条件なのか、HPの減少が条件になっているのかは分からないけど、恐らくレイドボスを転移させたことが扉を開くことに繋がったんだろうねぇ。

 まあ、うだうだ考えていてもレイドボスは減ってくれないし、腹括って戦いますか。結局、倒すのが早くなるか遅くなるかだけの違いでしかない訳だしねぇ。



<三人称全知視点>


 藍晶は仕事があるため参加できず、ルヴェリオス共和国組もあまり守りを疎かにしている訳にはいかないと帰国し、メンバーが減ったジャイアントホール防衛組。

 とはいえ、参加人数は微減に留まり、レイドボス相手に立ち向かえる戦力は揃っている。


『圓様よりたった今、連絡がありました。レイドボスを転送した後に扉が開き、レイドボス三体が増援に加わったとのことです』


『レイドボスが一気に四体か。速やかに転送されたレイドボスを倒さなければならないな』


「申し訳ございません……私が制限を設けてしまったばっかりに」


 スティーリアの報告を聞いたカリエンテは古代竜エンシェント・ドラゴン本来の力を解放して戦場へと飛んでいく。

 その表情には僅かばかりの焦りがあった。普段のカリエンテならば強敵と戦えることを心から喜び、意気揚々と戦場へと突撃していくが、今回は違う。

 レイドボス四体という最悪の状況にカリエンテの主人である圓達が置かれている。流石にあれだけのメンツが簡単に負けるとは思わないが、長引けばレイドボス達の猛攻でレイドパーティーが崩壊する可能性もある。


 一刻も早く圓達の負担を減らさねばという気持ちにカリエンテはなっていた。傍若無人だったかつてのカリエンテからは想像もつかない感情の発露である。


『行ってしまいましたね、全く困った子ですわ。……急いでも何も変わらないというのに。圓様は既に四つのパーティーで四体のレイドボスを討伐することを決めたそうですわ。こちらが担当するレイドボスは三なる大穴の守護者『アーチフィンド・イビルプリースト』一体のみ。その後は引き続き雑魚の掃討をせよ、という指示を受けましたわ。いずれにしても、本日でレイドの決着はつきます。さて、わたくしもレイドボス掃討に向かわせて頂きますわ』


 スティーリアはリーティアナを第一砦に残してレイドボス掃討のためにジャイアントホールの最深部に赴いた。



 ジャイアントホール防衛戦最終局面、三なる大穴の守護者『アーチフィンド・イビルプリースト』戦。

 現れた状態異常魔法とデバフ攻撃を得意とする魔を統べる神官は、出現と同時にデバフを発生させる『弱体化の法(デティアリアレート)』をばら撒いていた。


 紫色のオーラをばら撒くこの魔法に直接的な攻撃力はない。

 三なる大穴の守護者『アーチフィンド・イビルプリースト』は攻撃手段を暗黒の巨大な火球で攻撃する『暗黒火球の法ギャラクティカ・ブレイズ』以外に持たず、その攻撃力もお世辞にも高いとは言えなかった。


 しかし、三なる大穴の守護者『アーチフィンド・イビルプリースト』の前身である三なる楽園の守護者『アーチフィンド・イビルプリースト』はレイド最大の鬼門として超越者(プレイヤー)達に恐れられ、悪名が轟いていた。

 何故弱い筈の三なる楽園の守護者『アーチフィンド・イビルプリースト』が恐れられていたのか、その理由は『弱体化の法(デティアリアレート)』の性質にある。本来、デバフはある程度重ね掛けをした場合、効果が弱まっていく。ある程度の限界値が決まっていて、限界値以上のデバフを掛けることができないからだ。


 しかし、三なる楽園の守護者『アーチフィンド・イビルプリースト』の『弱体化の法(デティアリアレート)』にはその下限が存在しない。

 三なる楽園の守護者『アーチフィンド・イビルプリースト』はリキャストタイムが短い『弱体化の法(デティアリアレート)』を連続発動し、レイドパーティーを大きく弱体化させてから『暗黒火球の法ギャラクティカ・ブレイズ』を使って確実にパーティーを崩壊させてくる。二十回『弱体化の法(デティアリアレート)』が発動されれば、防御の硬い四次元職でも高確率で落とされるため、弱体化を積まれる前に速攻で倒すのが定石となっている。


「全く、面倒な魔法を使うね! あたしゃ、こういう姑息な手は嫌いだよ! 能力変化相殺の光(オフセット・ブライト)


破邪光聖域イレーシング・サンクチュアリ


 レジーナは状態異常を無効化する無属性魔法で『弱体化の法(デティアリアレート)』を無効化し、その弟子のリィルティーナが状態異常発生を無効化する特殊な光の結界を展開する光属性魔法「破邪光聖域イレーシング・サンクチュアリ」を使ってもう一つの切り札である状態異常を発生させる『状態異常の法アブノーマル・コンディション』を無効化した。


 二つの切り札を完全に封じられた三なる大穴の守護者『アーチフィンド・イビルプリースト』は残る手段である『悪熊召喚(サモン・デビルベアー)』で大量の蝙蝠の羽が生えた漆黒の熊の群れを召喚してジャイアントホールに解き放った。

 真月、紅羽、ユリア、ミリアム、ヴァーナム、イルワ、セリーナ、ダヴィッド、ヴァケラー、ジャンロー、ティルフィ、ハルト、ターニャ、ディルグレン、ダールムント、ジェシカ、欅、梛、樒、椛、槭、楪、櫻、榊、槐、椿、榎楸、柊、日長、月長、玻璃、紫水、翡翠、碧羅、ポーチュラカはこの悪熊(デビルベアー)達と交戦しており、肝心な三なる大穴の守護者『アーチフィンド・イビルプリースト』には誰一人として攻撃を仕掛けていなかった。


『フハハハ! 待っておったぞ! 氷の小娘よ!』


『一度目のレイドでサポートに回った我らに今回の美味しいところは譲ってくれるそうじゃ!』


 カリエンテ、ラファール、ポーチヴァ――三体の古代竜エンシェント・ドラゴンはどうやらスティーリアの到着を待ってくれていたらしい。


『行くぞ! 火竜帝の咆哮スカーレット・ヴォルカニック・ブレスロア


『参りますッ! 風竜の咆哮テンペスト・ドラゴン・ブレスロア!』


『フハハハ! 喰らうが良い! 岩地竜の咆哮アース・ドラゴン・ブレスロア!』


『モード聖氷竜ホーリー・アイス・ドラゴン! 聖氷竜の咆哮ホワイトホーリー・ブリザード・ブレスロア


 カリエンテ、ラファール、ポーチヴァの強力なブレスに加え、更にスティーリアの聖属性の魔力を込めた渾身の氷のブレスが三なる大穴の守護者『アーチフィンド・イビルプリースト』に炸裂する。

 元々防御力も魔法耐久力もそこまで高くない三なる大穴の守護者『アーチフィンド・イビルプリースト』に四体の強化済み古代竜エンシェント・ドラゴンの攻撃を耐え切る耐久力などある筈もなく、ブレスを浴びた瞬間にHPゲージが吹き飛び、無数のドロップアイテムと金貨の山を残して消滅した。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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