Act.9-137 フルレイド『大穴の果てへの参道』 十五日目 scene.1
<三人称全知視点>
『仕方ないな! 今日だけは見せ場を譲ってやろう!』
『皆様、レイドボスの討伐は任せましたわ!』
『フハハハ! 我が力を見るが良い!』
カリエンテ、スティーリア、ラファール、ポーチヴァ――四体の古代竜が魔力を漲らせる。
次の瞬間、灼熱の火柱と錯覚するほどの巨大な炎の竜巻、極寒の吹雪を収束させたような竜巻、鎌鼬を固めたような竜巻、砂嵐を収束させたような竜巻が四方に出現し、『守護獣』の群れを蹂躙し始めた。
『火竜帝の灼熱竜巻!』
『氷雪の大竜巻』
『刃風大竜巻』
『砂竜巻である!』
カリエンテ、スティーリア、ラファール、ポーチヴァがそれぞれ技名をつぶやいた瞬間に真月、紅羽、レジーナ、ユリア、ミーヤ、ミリアム、藍晶、イリーナ、プルウィア、ネーラ、ヴァルナー、リヴァス、ホーリィ、ヴァーナム、イルワ、セリーナ、ダヴィッド、ヴァケラー、ジャンロー、ティルフィ、ハルト、ターニャ、ディルグレン、ダールムント、ジェシカ、欅、梛、樒、椛、槭、楪、櫻、榊、槐、椿、榎、楸、柊、日長、月長、玻璃、紫水、翡翠、碧羅、ポーチュラカがこの気を逃すまいと一斉に攻撃を仕掛けた。
『ワォン! 鋭角の猟犬の触手だよ!!』
『焔の小鳥』
「光球爆烈」「向日葵の大地獄」
『滅崩放電咆吼!!』
「『ジュワイユーズ流聖剣術 覇ノ型 百華繚乱螺旋剣舞連』」
「【血冥九頭龍】」「【水神顕現-龗-】」
「《黄泉之風》」
「《海震撃》!!」
「サングリッター・エンチャート!」
「覇王黒雷斬」
「不可視の射手」
「雷閃浮刃」
「薙刀式武気衝撃」
「雷霆迅雷覇勁・天降猛打衝」
「【極寒之王】!」
「灼熱雷火の連撃弾」
「無属性魔法・分裂する矢! 神水晶の破魔矢!!」
「漆黒を裂く光明よ! 夜を塗り潰す純白に我が裡の真紅との混淆を望み給う。頽廃の世は終わらぬ。煉獄は頽廃した世に慈悲をもたらさぬ。積み上げられし屍人の山。地を埋め尽くす物言わぬ骸。我が命が果てるのは今日か、明日か。地上の炎は慈悲なく命を焼き尽くす。末法の世に救いはあるや有りや無しや。ならば我が全てを救おう。その慈悲なる炎を以って全ての生きとし生ける命を救済しよう。今、審判の喇叭は吹き鳴らされた! 灰は灰に、塵は塵に、万象等しく灰塵に帰し、地上は救済の白き炎に包まれる! 破壊の魔の奔流を我が手に宿せ! 聖爆灰燼裂罪・斬!!」
「【暗黒之王】!」
「雷炎焦熱地獄」
「【氷竜之王】――絶対零度の咆哮」
『『『『『『『『『『『『『星砕ノ木刀』』』』』』』』』』』』』
『灼熱鬼爆』
『苦無連投撃』
『瞬撃斬』
『紫電閃斬』
『魂霊崩壊』
『大刀鬼惨』
「龍宿魔法! 岩地竜の咆哮」
四十五人から繰り出された攻撃は明らかに許容量オーバー。誰の攻撃がトドメになったかは不明だが、二なる大穴の守護者『テンタ・クルーサ』は無数のアイテムと金貨、いくつかの装備を残して消滅した。
『結局、守護獣召喚しか使わなかったな。圓殿、コヤツはどのような技を使う筈だったのだ?』
『そうだねぇ……ヘイトをリセットする『敵愾心消失』、無数の触手で攻撃する『触手乱打』、爆発するシャボン玉を手から無数に射出する『石鹸玉の大爆発』……追加されていたなら他にもいくつか使えたと思うけど、流石だ一斉攻撃を浴びたら沈められちゃうか。とりあえず、お疲れ様』
『……我は少々物足りなかったぞ』
『それじゃあ、次のレイドボス戦……って言っても次の次だけど、その時はサブに回ったカリエンテさん、スティーリアさん、ラファールさん、ポーチヴァさんにメインで戦ってもらおうかな? 連戦続きで申し訳ないけど、引き続き残党の討伐と追加のレイドエネミーの討伐を頼むよ。それと、討伐報酬の回収もお願いねぇ』
『心得たの――『承知致しましたわ!!』
カリエンテの通信機を奪い取ったスティーリアがまるで恋する乙女のような表情で、瞳にだけは激しい炎を燃やして圓の依頼を引き受けると、勢いよく奪った通信機器をカリエンテに押し付け、ドロップ品の回収を始める。
『アヤツも随分と変わったな。……触らぬ神に祟りなしじゃ』
かつてのカリエンテは『何をするのだ!』と怒り狂ってスティーリアに喧嘩をふっかけただろうが、長い時を共に過ごして学習したカリエンテは違う。恋する乙女モードのスティーリアは普段のスティーリア以上に恐ろしい存在であることを痛い目を見ながら理解したのだ。
カリエンテはスティーリアのことを見なかったことにして残党討伐を開始し、他のメンバーも残党討伐と送られてくるレイドエネミーの討伐を再開した。レイドボスを倒してもレイドを終えるまでジャイアントホールに真の平穏が訪れることはない。
◆
<一人称視点・リーリエ>
レイド挑戦から十五日目にして、三つ目のレイドボスの待つ大部屋前に到着。
攻略は予定通り。睡眠、食事はしっかりと取った上で取り零し無しで最短距離を突っ走ってきたから、五日掛かったけど、光速移動を使えば間違いなく最短攻略ができた(まあ、それをレイドパーティでの攻略と言えるかは微妙というかアウトだけど)。逆に普通の冒険者達であればここまでで数ヶ月は要するじゃないかな?
一つのゾーンあたり一本道とはいえ千層の高難易度大迷宮が一つ分の広さ、それが三つ。……仮に魔物を討伐できたとしても、俊身などの技術が無ければ数ヶ月は必要だ。その分の食糧を持ち込むためには空間魔法などの特殊なスキルは必要不可欠だし、食費も嵩む。
得られる財宝はそれ以上、武器に関しては至宝といっても差し支えないものばかりとはいえ、挑める者はなかなかいないだろうねぇ。
幸いなことはリスポーンできることだけど、消費した食糧は戻ってこない。やればやるほどジリ貧になる。……それでもやっぱり挑みたいって人は多いのかな?
そんなことを考えつつ、扉を開ける。今回の敵さんはフロア中に張り巡らせた根から捕縛と吸血を仕掛けてくる食虫植物の竜――七なる大穴の守護者『グリーディー・ディオネア』だ。どうやら、一、二、三と順番に待ち受けている訳ではないらしい。ってことは欠番がいる可能性もあるのかな?
「よっしゃ! 仕掛けるぜ! 聖紋解放-グランド・クレスト-! 光焔之王剣! からのッ!! 《蒼穹の門・飛閃神威》!」
「武装硬化-聖纏装覇-!」
「【天使之王】――天使化!! 天使の加護!」
「《影軀逆転》!!」
「八重魔法全開放、なのですよぉ〜!!」
殺意高過ぎなラインヴェルド、オルパタータダ、アクア、ディラン、エイミーンの先制攻撃。……もう誰が先に攻撃仕掛けるのか? って戦いになってない?
「……もうアイツら気にせず好きに戦った方がいい気がしてきたねぇ」
「かく言う圓も戦いたくてうずうずしていたのだろう? 一なる楽園の守護者『ヴォル=ウルウィング』でも結局していなかったし、二なる大穴の守護者『テンタ・クルーサ』はジャイアントホール防衛組に譲っていた。満遍なく経験を積んで欲しいという気持ちの現れだと思うが、よく考えれば圓らしくない行動だったと思う」
「……プリムヴェールさん、それってまるでボクが戦闘狂みたいに聞こえるじゃないか。ハハハ、心外だよ」
「戦闘狂ですよね? 圓さん?」
「真面目女子のマグノーリエさんに真面目な顔して言われるとかなり傷つくんだけどねぇ。まあ、戦いたいという気持ちに嘘はないよ。――だってさぁ、ボクがデザインした魔物のマイナーチェンジ版なんだよ! どれだけ強いのか試したくなるのも当然だよねぇ!!」
「流石は根っからのゲームクリエイターでございます!!」
「まあ、とりあえずあの腐れ戦闘共は次回のレイド戦以降十分間は絶対に解除できない鎖で拘束して戦闘参加を遅らせるとして、今回はボクも暴れさせてもらうよ。ただ、レイドボス戦が全てではないとはいえ、貴重な経験であることに変わりはない。今後の戦闘はそこのクソ戦闘狂共以外も活躍できるようにしないといけないと思うよ」
「おい、腐れ戦闘狂とか、クソ戦闘狂とか酷くね!!」
「ラインヴェルドの言う通りだぜ! 流石に俺達でも傷つくぜ」
「お嬢様、私は別に陛下達とは違いますから!!」
「そうだぜ! 親友!」
「私はクソじゃないのですよぉ〜!!」
とか何とか弁解している阿呆共は放置……ってか、おいおいHPが半分まで削れているじゃねぇか。
無数に張り巡らせた根で敵を捕らえる『根縛』も当たらなければ意味はない。根から吸血する『根吸』にも繋がらない。
発生させたハエトリグサ型の食虫植物で噛みつき攻撃を仕掛ける『食虫植物の噛砕』――この技で生じるハエトリグサ型の食虫植物はラインヴェルド達から徹底的に無視され、ラル、ペストーラ、スピネル、チャールズ、ボルトス、カルメナ――第三パーティの極夜の黒狼組を中心にほとんど後始末に近い討伐が行われている。
残る技は口から毒液を噴射する『食虫龍の猛毒咆哮』だけど、こちらも見気の未来視と紙躱の組み合わせで当たらない。ボクも討伐に参加するなら早めにしないとねぇ。
「《血動加速》!! さて、ナトゥーフさんからもらった力、試してみるとしようか? 龍宿魔法! 魔龍神の咆哮」
最強の魔竜であるナトゥーフの力をその道に宿し、放つのは渾身全力の一撃。
ナトゥーフの己の渾身全力のブレスを収束した一撃を大気から吸収したマナで強化した「龍神の怒號」の強化版――「魔龍神の咆哮」だ。
収束させずとも収束させた「龍神の怒號」に匹敵する一撃。ナトゥーフはこれを大量の敵を討伐するための切り札として「龍神の怒號」と使い分けているようだけど、ボクは「魔龍神の咆哮」を収束し、俊身、神速闘気に《血動加速》による加速を組み合わせたまさに瞬間移動と差し支えない高速縮地で七なる大穴の守護者『グリーディー・ディオネア』の至近距離に到達したところで浴びせる。当然、回避できる筈もなく直撃を浴びたんだけど、僅かにHPが残って生存したらしい。……強いねぇ。
「ダメ押しの万象無ニ還ス靈劔!!」
だけど、ボクの攻撃はこれで終わりじゃない。
すぐさま剣士系四次元職の剣帝の奥義とも言える一撃を放つ最強の物理系範囲攻撃特技を発動する。一条、二条、三条、四条――無数に伸びた線状の斬撃が対象を貫く同時に一瞬で七なる大穴の守護者『グリーディー・ディオネア』を消滅させた。……HPを削り切れないと部位消滅だけで終わるんだけど、レッドゾーン突入している状態で耐え切るなんて不可能。
そもそも、四次元職の奥義自体バランスブレイカーでレイドボス相手でも目で見て分かるレベルでゴリゴリHP削れるしねぇ。オーバーキルだってことは分かっているけど、別にあんまり使う機会ないんだしいいじゃないか。
ドロップアイテムと金貨を回収してから魔法陣で転移する。三つのルートを攻略して最後のルートへと続く扉が開いたようだ。
さて、ここからは後半戦。どんな敵が待ち受けているのか楽しみだねぇ。
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