Act.9-130 フルレイド『大穴の果てへの参道』 一日目 scene.4
<一人称視点・リーリエ>
白夜とシャルティローサ――諜報部隊フルール・ド・アンブラルのリーダー、サブリーダーコンビに引けを取らない活躍をしているのがボクの保有する三大暗部の一角、ビオラ特殊科学部隊のリーダーとサブリーダーであるシアとリコリスだ。
レイドゾーンは地下ではあるものの天井が割と高めで「獣化の天恵(モデル:獣の巨人)」を使って獣の巨人に姿を変えても問題なく戦える。シアは「獣化の天恵(モデル:獣の巨人)」の力で巨人化し、武装闘気と覇王の霸気を纏わせた拳で次々とレイドエネミーを駆逐していく。
「風化の天恵」を併用して発動することで死を呼ぶ汚泥の強酸によるダメージは無効化され、「風化の天恵」のもう一つの効果である風化侵食でシアに殴られた部分が急速に風化する。その風化の効果で殴られた瞬間に撃破されなくても、確実にレイドエネミーの体は蝕まれ、死に追い込まれていく。
まあ、そもそもシアの拳を浴びてノックダウンしないレイドエネミーの方が珍しいんだけどねぇ。
リコリスの方は魔法少女に変身して武器に意志を宿らせる技術を使って彼岸花型の魔力弾をレイドエネミーに向けてばら撒きながら、「泳魚の天恵(モデル:青龍)」を食べさせた青龍刀「偃月蒼雲」から灼熱のブレスを放って死を呼ぶ汚泥の群れを焼き払った。
獣化タイプの天恵の実は人が食べた場合は通常形態である人型、天恵の実のモデルの姿に極めて近い形となる獣型、中間の人獣型に分かれるんだけど、物に食べさせた場合は物そのものの形を取る物型と天恵の実のモデルの姿に極めて近い形となる獣型の二種類に分かれる。
青龍刀「偃月蒼雲」には竜の力が宿り、その力を完全に解放すれば完全な青龍へと姿を変える。その状態では青龍刀「偃月蒼雲」に宿った青龍自身の意思で自律行動し、灼熱の焔のブレスや雷撃、竜巻、雷雲の生成、実体のある雲の生成、水操作など様々な能力を行使することができる。本来一種類くらいしか特殊能力を持たないんだけど、「泳魚の天恵(モデル:青龍)」は異質で複数の系統の攻撃が可能なんだよねぇ。
じゃあ、青龍の力を物型の状態で使えないかと言われたらそうではない。流石に巨体を生かした攻撃はできないけど、それ以外の能力は一通り行使できる。青龍刀「偃月蒼雲」の刃から放たれる灼熱のブレスは最早破壊光線の類と化し、尋常ならざる威力と化している。攻撃が収束されている分、獣型で放つより威力が高いかもしれない。浴びたレイドエネミーは魔法防御が極端に高い魅惑の大魔布顛女王が一瞬にして蒸発するほど。他のレイドエネミーについては推して知るべし。……つくづく味方で良かったと思うよ。
「大噴雷火!」
プリムヴェールと同じ魔法剣士タイプのレミュアは新作の魔法をレイドエネミー相手に試し撃ちしたいようで抜刀はせずに魔力を練り上げている。
そして、満を持して放ったのが「大噴雷火」と名付けられた火属性、水属性、土属性の複合魔法だった。
まあ、あれっ? って思うよねぇ? 雷複合していないのになんで雷が発生しているのかって。
火山雷という現象があって、火山が噴き上げる水蒸気、火山灰、火山岩などの摩擦電気により雷が生じることがあるんだ。この火山雷、火山灰、火山岩などの固体による摩擦電気がもたらす雷だから通常の雷よりも静電エネルギー量は一般的に高いとされている。
「大噴雷火」とは要するにこの火山雷を魔法により再現するというものなのだろう。火属性、水属性、土属性を使って火山のような地形を作り出し、噴火を発生させると同時に火山雷で攻撃する。……まあ、噴火そのものの威力の方が高いんだけど。
レイドエネミークラスでも噴火と火山雷の相乗ダメージを耐え切ることはできず、一瞬で焼き尽くされ、或いは黒焦げ死体と化して消滅する。
ただ広範囲の地殻に干渉するこの魔法は普段レミュアが使う魔法よりも消耗が激しい。……流石に連発できないということはないけど、多用し過ぎるとレイドボス戦に影響を与えそうだねぇ。
レミュアの師匠のミーフィリアは『氷の尖兵を作り出す魔法』、『作り出した氷を分解する魔法』、『空気中の水分と氷像の水分を凝固させる魔法』の三つからなる複合魔法――「蒼氷の女王の尖兵」を使って大量の氷の尖兵を創り出し、武装闘気を纏わせてレイドエネミーの群れに嗾しかけた。
「灼熱の女王の白霧」に繋げないのは爆発の巻き添えをボク達が喰らうからというのが一つ、後は水蒸気爆発を使用せずともレイドエネミーの群れを倒せるからだろうねぇ。
実際、壊されてもすぐに再生する氷の尖兵は物理攻撃しか攻撃手段を持たない滅鬼の牛頭大鬼、積鬼の馬頭大鬼、変異した迅猛竜と相性が良く、脚根の妖毒華や死を呼ぶ汚泥の毒や酸も無効化できる。
魔法から作られているため、魅惑の大魔布顛女王の弱点は突けないかと思いきや、武装闘気を纏って攻撃しているから普通に魅惑の大魔布顛女王にもダメージを与えられる。
数の多いレイドエネミーに対する一手としてはかなりの妙手だねぇ。流石は「落葉の魔女」だ。
『漆黒無双両太刀・黒刃大竜巻!』
『劇毒粘液弾』
『暗黒流星槍』
『狩猟豹の脚! 熊の爪!!』
『叛逆する御使』
『蜂毒針!』
エヴァンジェリンは漆黒の靄のようなものを纏わせた両刀をクロスさせ、そのまま八の字を描くように剣を斜め下方向に高速で振り抜くことで漆黒の竜巻のような斬撃を放ち、斬撃に巻き込んだ魅惑の大魔布顛女王達を次々と撃破していく。
ドミティアの手が一瞬粘液――スライム状に変化して、無数の激毒の塊が滅鬼の牛頭大鬼、積鬼の馬頭大鬼、変異した迅猛竜からなる群れに放たれる。命中した周囲を一瞬にして溶かし、相対するのレイドエネミーの群れを撃破した。
リヒャルダは黒いオーラを槍の穂先のような形に変化させ、更に武装闘気を纏わせた槍で高速の突きを次々と滅鬼の牛頭大鬼に放って撃破する。
ベラトリックスの手と脚が一瞬チーターのものへと変わる。猛烈な速度で空歩を使って積鬼の馬頭大鬼、に接近すると熊の手へと変化させて武装闘気を纏わせ、強烈な引っ掻き攻撃を放って積鬼の馬頭大鬼を八つ裂きにした。
サトゥルニナが翼を大きく広げ、武装闘気を込めた黒く染まった無数の光条を放つ。
無数の光条はレイドエネミーの群れの急所をピンポイントで確実に貫き、一撃で撃破した。
アピトハニーは無数の毒針に武装闘気を纏わせて滅鬼の牛頭大鬼の群れに放ち、針を貫通させると共に毒を体内に侵入させて絶命に追い込む。
流石は迷宮統括者達――レイドボスですらならエネミーに遅れを取る訳がないよねぇ。
そんな迷宮統括者達に比肩する活躍を見せているのが漆黒の髪と瑠璃色の双眸を持つ青い着物ベースの戦衣を纏った美しい女性の姿となった琉璃だ。
「崩滅雷龍咆哮」や「崩滅雷龍咆哮三重連撃」といった高威力の技はMP消費や消耗が激しいので使用せず、「大海竜の大狂奏曲」で攻撃している。
精霊術法「大海竜の大狂奏曲」は無数の水の球を創り出し、一斉に槍状に変化させて敵を撃ち抜くという技だ。フルレイドボス相当まで強化された琉璃が放つこの技は暴力的なまでの威力を秘めているけど、水の中に膨大な神光闘気を込めることで威力を上昇させている。
水の槍を浴びた相手は一瞬にして黒焦げの死体と化して消滅。激流の槍の威力とか正直あんまり関係ない気がしないでもない。……闘気の消耗が心配だけど、琉璃も流石にペース配分を考えているだろうし、レイドボスとの戦いに支障はないんじゃないかな?
「海王の三叉薙・凍碎」
バダヴァロートは魂魄の霸気《海皇》の派生――《凍碎》を発動して激流を纏った三叉槍を薙ぎ払う。
激流が斬撃と化してレイドエネミーの群れに命中し、深々と傷を刻み込んだ。更に斬撃の形を成していた激流だった水が凍り付き、レイドエネミーが凍結とダメージで動きを鈍らせたタイミングで激流を纏った刺突攻撃――「海王の三叉突」を放って確実に撃破していく。ちょっと手間をかけ過ぎている気がしないのでもないけど、慎重に攻撃するのは悪いことではない。……撃ち漏らして後々に響く方が厄介だしねぇ。
魂魄の霸気《海皇》も消耗はそこまで激しくないし、バダヴァロートの霸気の練度も高いから肝心なレイドボス戦で戦力外通告という事態にはならないと思う。
「朧黎黒流・九閃覇突」
ディグランが放ったのは見覚えがないから今までボク達に見せたことがない技みたいだねぇ。
「朧黎黒流」の第三の技。九度の高速突きを同じ場所目掛けて連続で放つというものらしい。
あまりの速さに一度の刺突攻撃のように見えてしまう。
「五十嵐流刀術二ノ型 五光」や「静寂流十九芸 剣術七ノ型 瞬撃突」と同系統の技だけど、攻撃回数は「朧黎黒流・九閃覇突」の方が多い。
この速さは反射神経の限界を超えているし、身体で体得するものだと思うから、回数を増やしたり、逆に減らしたりってことは難しいんじゃないかな? ボクも「五十嵐流刀術二ノ型 五光」と「静寂流十九芸 剣術七ノ型 瞬撃突」は別の技として体得しているし。
聖属性の魔力を纏わせない代わりに膨大な霸気を乗せた刺突の威力のほどは、レイドエネミーを一撃で撃破してしまうほど。……うん、一撃でノックアウトするから二度目以降の攻撃がオーバーキルになっているよねぇ? まあ、いいけどさぁ。
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