Act.9-129 フルレイド『大穴の果てへの参道』 一日目 scene.3
<一人称視点・リーリエ>
リスポーン地点となっている円形状の部屋には敵影はなし、そこから少し進むとレイドエネミーが出現する。
強酸性の身体を持つ黄土色の粘体生物の死を呼ぶ汚泥。五メートル以上の魔物で凄まじい異臭を放つ。近づくだけでも強酸の煙で装備が劣化し、近距離で攻撃を加えると飛沫が飛び散り反撃のようなダメージが発生するという非常に厄介な奴だ。
『Eternal Fairytale On-line』のレイドでも度々登場したエネミーで物珍しさは特にない。
死を呼ぶ汚泥とある意味で対になるのが桃色の身体に真っ白な生クリームが冠のようにホイップされたような粘体生物の魅惑の大魔布顛女王。スライム系の魔物の一種であるプリン族の女王で脅威的な魔法防御力を持ち、魔法攻撃で倒すことは困難を極める。逆に物理攻撃への耐性は低い。
死を呼ぶ汚泥には魔法攻撃、魅惑の大魔布顛女王には物理攻撃と魔法攻撃を使い分ける必要がある。ここまで見た目が違うと攻撃の種類を間違えたってことにはなかなかならないと思う。
続いて、二本の角の生えた牛の頭に筋骨隆々な人間の上半身と牛が直立したような下半身を持つ滅鬼の牛頭大鬼。青みがかった黒の肌で巨大な斧を武器とする。
この滅鬼の牛頭大鬼と対になるのが積鬼の馬頭大鬼。
一本の角が生えた馬の頭に筋骨隆々な人間の上半身と馬が直立したような下半身を持つ。赤銅色の肌で巨大な剣を持つ。
藍や紫、赤や白などの艶やかな花を咲かせる紫陽花の魔物は脚根の妖毒華。
自在に動かせる根を使って歩き回り、猛毒の花粉で獲物を捕らえ養分とする。また、刺激性の花粉を使って他のモンスターを興奮させることもある。脚の役割を果たす根には花粉を上回る猛毒を有しており、この根を鞭のように使うこともある。
そして、変異した迅猛竜。小型肉食恐竜ヴェロキラプトルが特殊な魔力の淀みを受けて変異、巨大化したもの。
後肢に大きな鉤爪を具える。高い知能を持ち、ある程度の社会性を持ち集団で狩りを行う。小型であった頃の素早さは健在。
この六体が犇めいている通路をひた走りながら殲滅する。特に仕掛けはないようだけど、斜め下へと伸びる迷宮は高難易度大迷宮を階層ごとに輪切りにして敷き詰めたように広い……というか、それ以上にある気がする。
常時俊身と神速闘気を使って移動しても、これは相当時間が掛かりそうだ。
アクアが武装闘気と覇王の霸気を纏わせた双剣を逆手で構え、【天使之王】の天使化で顕現した翼を羽搏かせて根を使った鞭攻撃を躱しつつ、すれ違い様に脚根の妖毒華を切り捨てる。淡い光を放って脚根の妖毒華が消滅と同時にドロップアイテムが出現した。
高難易度大迷宮の内部だと敵ステータスを見ることができる。HPゲージが一瞬にして吹き飛ぶのを見るのは壮観……ってか、そうだよねぇ。高難易度大迷宮の魔物も普通に討伐していたし、コイツら。
「案外歯応えないもんだなぁ」
アクアと同じスピードで俊身を駆使し、武装闘気と覇王の霸気を纏った剣で滅鬼の牛頭大鬼を両断したディランが期待外れだったと言わんばかりの落胆した表情で、消え去ってドロップアイテムを残す滅鬼の牛頭大鬼を見下ろしている。
「そもそも、負けないように必要戦力を揃えて挑んでいるんだからここで苦戦していたら困りものだけどねぇ。……というか、最初から飛ばし過ぎない方がいいよ? 休めるとはいえ、まだまだ先は長いし。特にアクア、ディラン、ラインヴェルド、オルパタータダ、エイミーン、お前ら調子乗って後々レイドボス相手の戦いでバテて使い物にならなくなるんじゃねぇぞ?」
「こ、怖いのですよぉ〜!!」
対象の付近で猛烈な光の爆発を発生させる光属性魔法「光爆裂」を連続で放って死を呼ぶ汚泥を撃破したエイミーンが叫んだ。……ってか、別に怖くないと思うけどねぇ、ボクって。君達の日頃の行いが悪過ぎるからじゃない?
「大技はなるべくボス戦に使うようにして消耗は減らすべきだということだな。――月の力よ、我が武器に宿れ! ムーンライト・スティング」
「氷撃大魔槍!! ……ですが、あまり弱過ぎる攻撃だと一撃では倒せませんね。塩梅を見つけないと」
プリムヴェールが積鬼の馬頭大鬼の斬撃を躱しつつ、霊力を込めて強化した月属性の魔力を纏わせた刺突攻撃を放って積鬼の馬頭大鬼を一撃で撃破。一方、マグノーリエは無数の氷の槍を連続で放って死を呼ぶ汚泥を撃破に追い込んだ。
『スターチス・レコード』の魔法から派生したこの世界の魔法の利点は再使用規制時間がないことかもしれない。
威力は低くても連発すれば勝てる……ってか、普通は苦戦するものだからねぇ? レイドエネミーって。
実はフルレイドレベルのレイドボスなら多種族同盟の上位陣なら倒せる可能性がある気がする。……タイマンで、エヴァンジェリンとかが敗北したっていう前例あるし。
「魔法も魔力を消費する……一番消耗が少ないのは『神殺しの焔』だな。――『神殺しの焔・断罪の焔剣=煉獄の裁断』」
ミスルトウは『神殺しの焔』を顕現して天を覆う巨大な円形に変形させて、そこから焔の剣を降らせてエネミーの群れを撃破に追い込む。……まあ、GM武器使えば一撃でしょうねぇ。
ちなみに、ミスルトウもメアレイズも指揮官の仕事はしていない。メアレイズも『神雷の崩砕戦鎚』の二刀流に武装闘気を纏わせて身体強化で強化された身体能力に物を言わせて死を呼ぶ汚泥以外の魔物を次々と吹き飛ばしているし。
別に二人とも職務放棄をしている訳じゃない。レイドボスとの戦い以外は個人戦を仕掛けても充分対応できるんじゃないかと各パーティーのリーダーが確信した結果、みんなバラバラにとりあえず走りながら倒すみたいな形になっている。……レイドボス戦ではみんなしっかりとリーダーしてくれると思うよ。
「魂魄の霸気《幻魔》」
ラルはあらゆる存在証拠を抹消する魂魄の霸気《幻魔》を使い、魔物達に悟られることなく戦場を駆け抜け、その双刀から繰り出される斬撃で次々と物理攻撃の通用するレイドエネミー達を駆逐していく。
「殺糸戯曲」
スピネルは近距離でなければ強酸の影響を受けないことを利用して遠距離から『万物切断千変万化-レットドラゴーンプラティナクロース-』を設置し、設置と同時に同時に武装闘気を纏った『万物切断千変万化-レットドラゴーンプラティナクロース-』が一斉に動かし、無数の糸でレイドエネミーを種類関係なしに葬っていく。
ペストーラは『浪漫武装-機械帝神-』の【機械帝神の権能】を発動し、幻想級の銃火器を装備を生贄にして全身を銃火器で武装してこちらも強酸の影響が出ない遠距離から遥か遠方にいるレイドエネミーの群れを次々と撃破していく。
チャールズは『武装変化-マスターウェポン-』を槍状に変形させると武装闘気を纏わせ、俊身と空歩を駆使して滅鬼の牛頭大鬼と積鬼の馬頭大鬼を次々と撃破していく。
レイドエネミーは木偶人形じゃないから向こうも攻撃を仕掛けてくるけど、滅鬼の牛頭大鬼と積鬼の馬頭大鬼は比較的攻撃が大振りで回避も容易い。だから狙い撃ちしているんだろうねぇ。
ボルトスは『万物両断-アサルトシザーズ-』に武装闘気を纏わせるとハサミを開いて構え、俊身と空歩を駆使して変異した迅猛竜の群れに突撃していく。相手は素早い上に群れで行動するから一体一体順番に倒していくっていう戦い方とは非常に相性が悪いんだけど、突撃攻撃も鉤爪による攻撃も武装闘気を纏うことで無効化して無傷。そのまま次々と首を刎ねて絶命に追い込んでいく。
「【獅子連撃】、【大地鳴動】!」
「百獣王の尾錠」を起動し、獅子の耳と腕、脚と尻尾が生えて半獣人化したカルメナが『大地鳴動-アスタディザスター-』を次々と滅鬼の牛頭大鬼と積鬼の馬頭大鬼に叩き込んでいく。
どちらもパワータイプでタフさも十分にある筈なんだけど、『大地鳴動-アスタディザスター-』によって生じる地面を揺らすほどの破壊力を至近距離で連続で喰らえば流石にただでは済まないみたいだねぇ。
……極夜の黒狼組はほとんど一撃でレイドエネミーを沈めている。やっぱり強いねぇ。
そんな極夜の黒狼組とパーティーを組んでいる白夜とシャルティローサはというと、白夜の方は無詠唱で「魂霊崩壊」を連発し、シャルティローサは「天恵の実(モデル:天狐)」の力で妖狐化――狐耳と銀色の髪、透明な複数の尾を持つ美しき女神のような姿で無数の狐火を創り出して宛らマシンガンの如く狐火を怒涛の勢いで死を呼ぶ汚泥と脚根の妖毒華に浴びせていた。
「魂霊崩壊」については高威力な技だから結果は説明するまでもないねぇ。流石にレイドボス相手だと一撃撃破は厳しいと思うけど。
普通は魔力消費が多いからレイドボスまで取っておけって言いたいところだけど、白夜の魔力量は非常に多いから連発しても今後に差し障りは特にない。
シャルティローサの「狐火火葬砲」は一撃一撃は大した火力ではないものの、雨垂れ石を穿つの諺通り連続で浴びればレイドエネミーでも耐えきれない威力となる。
一秒間に六十発放たれる狐火を喰らう瞬間に回避するのは困難、回避する頃には既に何百発か何千発か食らった後。当然その頃には死んでいるから回避はほぼ不可能に近い。知っていて警戒していたら回避できるかもしれないけどねぇ。ただ、見気使えないと厳しいんじゃないかな?
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