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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-128 フルレイド『大穴の果てへの参道』 一日目 scene.2

<一人称視点・リーリエ>


「具体的な話に入っていきます。今回、発見されたレイドゾーン『大穴の果てへの参道』に侵入するのは私を含めた三十二人。このメンバーはレイドを攻略し切るまで戻ることはないと思います。……空間魔法を使うことで内部から外部への転移や転送は可能なようですが、外部から内部への転移や転送は不可能なようですので」


 実際に試してみたけど、『管理者権限・全移動』でも空間魔法でもラインヴェルドの魂魄の霸気《転移》でもレイドゾーンへの侵入はできなかった。恐らく、レイドゾーンに付与されている人数制限を越える戦力のレイドゾーンへの侵入や転移によるショートカット――ズルを禁止するためなのだと思う。


 『Eternal Fairytale On-line』には死亡後のリスポーン地点として大聖堂(カテドラル)が置かれていた。レイドゾーンなどには大聖堂(カテドラル)のシステムを持つリスポーン地点が設定されていて、何度死んでも生き返ることができた。

 異世界化後にはそういったシステムは無くなり、蘇生可能期間を過ぎた場合は蘇生できなくなる。……まあ、比較的現実的な形になったけど、どうやら今回のレイドゾーンではその復活機能が使用可能になるらしい。


 超越者(プレイヤー)だけでなく、レイドに参加したパーティの現地民にも一時的に超越者(プレイヤー)の性質が付与されて復活機能が使えるようになる。この性質の付与はレイドゾーンの入り口で行われ、レイドゾーン外に脱出した場合に解除される仕様らしい。

 レイドゾーン外に超越者(プレイヤー)の性質の持ち越しが不可能なことはラインヴェルドの協力を得て証明済み。まあ、レイドゾーン外でリスポーンするとしたら、どこで復活するのかって話だけど。……まさか、レイドゾーンの復活エリアまで転送されて復活ってのはないだろうし。


「今回のレイドでは三十二人の探索班に加え、ジャイアントホール内に設置した三つの砦――丁度今プロジェクターで映し出しているものになりますが、この砦を拠点に魔物の討伐を行うジャイアントホール残留組を編成致しました。この残留組については一ヶ月そのまま留まることはなくシフトを決めて交代で警備に当たります。日によって薄い濃いはありますが、ヴァンヤール森国まで魔物が侵攻してしまうという最悪の状況を回避できる面々が揃っています。ご安心ください。レイドの近況については探索班、残留組共にヴァンヤール宮殿に設置するプロジェクターで確認できるようにしているので興味がある方はそちらをご覧ください。なお、砦にはジャイアントホール残留組用に探索班と同じ料理を用意することになりますが、この料理は砦まで足を運んで頂いたヴァンヤール森国の皆様にもご希望がありましたら提供させて頂きたいと思っております」


 料理は【万物創造】で材料だけ用意し、後はボクが毎食調理して全員分提供しようと考えている。ジャイアントホール残留組にも提供することになったのは、ジャイアントホール残留組から「レイド探索班だけズルい」という声が結構な数上がったから。


 そこで、折角ジャイアントホール残留組に料理を提供するなら、ヴァンヤール森国の希望したエルフにも提供したらいいんじゃないかと考えた。同じ食卓を囲めば蟠りも少しは減るかもしれない。過去は変えられないけど、過去にいつまでも拘っていたら何も変わらない。

 もし、種族の枠を超えた平等な世界を作り変えようと本気で思うなら……そのために必要なのはは損得抜きで関係を変えていくために歩み寄ろうとすることだと思う。


「ここまでで何かご質問がある方はいらっしゃいますか?」


「今回はヴァンヤール森国のために色々と準備してくださりありがとうございます。レイドの近況を逐一知ることができるように準備して頂いたり、ヴァンヤール森国の防衛のために戦力を派遣してくださったり、ただの戦力派遣にならないように今後のことを見据えて我々ヴァンヤール森国のエルフと多種族同盟の方々の交流の機会を設けて頂いたり……本当に感謝しても仕切れません。そもそも、ヴァンヤール森国の危機を救うためにお越しくださった皆様を私達がもてなさなければならない立ち位置ですのに、私達はその恩を仇で返すように無礼を働き、その謝罪もろくにできぬまま本日を迎えてしまいました。この場を借りて、謝罪をさせて頂くことはできませんか?」


「……謝罪ねぇ、ここにはボク以外いないし、この件はボク達にとっても利益があるものだった。合法的に戦える場が欲しい一部の戦闘狂達と、今後、こういった事態になった場合に備えて情報が欲しいボク達、そして魔物達の恐怖から今すぐに解放されたいヴァンヤール森国の民。……まあ、そりゃ、使者や元老共の無礼は目に余るものだったけどねぇ。その分、しっかりと処分は下させてもらったし」


 このやり取りをヴァンヤール森国のエルフ達の前でやることに意味があるとリーティアナは考えたのだろう。無礼を働いたヴァンヤール森国とそれを許した度量の広い多種族同盟という関係を見せることで多種族同盟に対する印象を良くし、多種族同盟に対する抵抗心を減らす。それと同時に、この場でヴァンヤール森国を多種族同盟が許したという言質を得ることでヴァンヤール森国のエルフ達が安心できるようにした。

 この人もなかなかの策士だよねぇ。……エイミーンに比べたらまだまだだけど。


「今回のレイド、もしリーリエ様達が敗北した場合は、私達はどうするべきでしょうか?」


「最終的にはリーティアナ様がヴァンヤール森国の民と共に考えるべきことです。緑霊の森を頼れば移住することも可能ですし、多種族同盟もその場合は全力で協力させて頂きますが……そうですね。そもそも、リスポーン地点が設定されているレイドゾーンで本当の意味で死を遂げることはありません。ボク達の敗北とは何度挑んでも勝ち目がない状況に陥ることを指します。……まあ、そうならないように策は用意していますが、一応、最悪の事態のことは頭の片隅で考えておいてください」


 まあ、今用意できる最高の面々を招集したから最悪の事態になる可能性は限りなく低いんだけど。でも、その最悪の可能性を全く念頭に置いていなくて、いざその時になってしまったら話が違うってことになるし、絶対に混乱をきたすからねぇ。

 最悪の事態を想定した上で、その最悪の事態が来なくてホッと溜息が溢れる――こういうのが一番いいと思っている。……まあ、ボクが心配性で先回りして考える性分だからってこともあると思うけど。


 一通り説明が終わったところで壇上を降り、ジャイアントホールの最奥部を目指す。――さあ、フルレイドの始まりだ!!



 レイドゾーン『大穴の果てへの参道』はゾーン突入早々に大部屋がある。円形状の部屋はリスポーン地点となっていて、このレイドゾーンで死亡した場合はここで蘇生することになるらしい。

 入口と反対方向には通路があるけど、強力な結界によって封じられて侵入は不可能。一応、色々と試してみたけど結界の解除はできなかった。他に道が三方向にどこまでも続いている。


「……ズルはダメってことみたいだねぇ。結界の解除はできないみたいだ」


「しかし、三方向か。どれが正しい道なのだろうか?」


「プリムヴェールさんはこの三つの道のいずれかが正しいと思っているみたいだけど、ボクは三つとも正しいルートだと思っているよ。三つの道を進み、それぞれの最終地点に存在する封印を解除することで先に進むことができる。……見気でもレイドゾーンを見通すことができないし、相当広いみたいだねぇ。ズルもできそうにないし、これ、一ヶ月ぐらいって見積が甘かったかもしれないねぇ」


 まずは左上ルートを選択して進む。ラインヴェルドとオルパタータダが「三方向手分けして進めばいいんじゃねぇの?」って言ってきたけど、この人達、レイドの恐ろしさを理解していないみたいだねぇ。


「でもさぁ、『白百合の楽園』ってたった十人でオーバーハンドレッドレイドを攻略したんじゃねぇの?」


「……まあ、そりゃそうだけど」


「それに、高難易度大迷宮(レイドダンジョン)ってフルレイド相当だろ? あの時は二十四人メンバーを揃えずに挑戦したじゃねぇか」


「あの時はショートカットする方法があったから問題ないと判断したけど、今回はしっかりとフルレイドに挑むことになりそうだったからねぇ。それに、同じフルレイドでも高難易度大迷宮(レイドダンジョン)よりも規模が大きいし、攻略実績もない。……まあ、今後似たようなレイドゾーンが出現したとして、少人数攻略が可能だと判断すれば少人数攻略でも何でもしてもらっていいけどねぇ」


 八人パーティーを四つ、フルレイドのメンバーは揃えたものの、その内訳は『Eternal Fairytale On-line』時代のものとは異なる。

 『Eternal Fairytale On-line』時代のフルレイドと言えば、第一パーティーが防衛と敵の引き付け役、第二パーティーが遊撃、第三と第四パーティーが高火力の攻撃を叩き込む攻撃役とそれぞれ役割を分担する。第三・第四パーティーは火力特化のため、防御性能は低くなりがちだから第一パーティーがしっかりとモンスターを引き受けなければならない。逆に第一パーティーが防御の要だからここが崩壊することは戦線の崩壊を意味する。だから第三・第四パーティーには迅速な敵の殲滅が求められる。


 じゃあ、第二パーティは具体的に何をするのかというと、第一パーティだけでは支えきれない場合の盾役と第三、第四といった防御の弱いパーティーメンバーの護衛だ。


 ……これはあくまでオーソドックスな形というだけで実際には様々なバリエーションがある。ただ、難易度の高いレイドほどバランスが求められるからこういった編成が非常に多かった。……まあ、『Eternal Fairytale On-line』って複数ジョブを取って特技増やせるから、盾役でありながら高火力の魔法バンバン使うみたいなこともあるにはあるんだけどねぇ。ただ、複数のジョブを最大まで上げようとすると大変だから、基本的には一つのジョブに注力するんだけど。


 『白百合の楽園』が強かった理由の一つには、このシステムの恩恵もある。……それだけじゃないけど。


 じゃあ、『Eternal Fairytale On-line』の基本的なフルレイドの構成をこの世界で再現できるのかと問われると難しいんだよねぇ。だから、今回のフルレイドは何ちゃってフルレイドパーティーになっている。人数はフルレイド相当だけど、実際はパーティーが四つで相乗効果も何もあったものじゃない構成になっている。

 フルレイドと違ってそれぞれのパーティーの役割を考えて連携する必要がない代わりに個々のパーティー内での連携が重要となる構成だ。それ故に、パーティーのメンバーはできる限り共闘経験が多い面々を揃えている。……例外もあるけど。


 まあ、白夜、シャルティローサ、シア、リコリスにはリーダーの指示に従うように伝えてあるし、第四パーティーで浮いているように見えるメアレイズも暴走しない常識的なメンバーで固めているから問題ない。……そう、火力が高い代わりに暴走列車が揃っているのが我らが第一パーティーなんだよ。アクア、ディラン、ラインヴェルド、オルパタータダ……真面なのはヴェルディエ、ディグラン、バダヴァロートの三人か。

 ここにエイミーンがいたら更に地獄になっていたけど、エルフの問題児はエルフ達に引き取ってもらったし……大丈夫だよねぇ?

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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