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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-121 ヴァンヤール森国からの救援依頼scene.2

<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>


 ヴァンヤール宮殿に到着し、女王への面会を要求したら、門番のエルフ達は「人間と結託したエルフ達が女王に面会できる筈がないだろう」と鼻で笑いながら一蹴したので、霸気を迸らせて臨戦体制に入ったラインヴェルドとオルパタータダの首根っこを掴んでから今にも戦闘を始めそうだったシア、リコリス、プリムヴェールを局所的に霸気で威圧してブライトネス王国に全員纏めて《蒼穹の門(ディヴァイン・ゲート)》で強制送還をしようとした絶妙なタイミングでリーティアナが現れ、女王の威厳をかなぐり捨てて頭を下げた。


 当然、門番達は「女王がこのような輩に……」なんて言い出したけど、本当に頭が悪いのか。それとも頭の中に威厳しか詰まっていないのか? 現状、生と死の瀬戸際に立たされていて、緑霊の森の助力が無ければ死んでいたのに、よくそんな態度を取れるよねぇ。


 まあ、リーティアナが頭を下げてしまった手前、引き下がることもできず、ボク達は宮殿の奥にある中枢会議場に向かっていたのだけど……。


 嫌な予感がして廊下の先に視線を向けると、全速力で廊下を駆けるヴァーナムの姿が……嫌な予感どころか、この先の展開は予想が付くよねぇ。


「お久しぶりです。誰にもご褒美をもらえていないので、あの拳を下さい」


「えぇ、そこまで言うなら差し上げますよ」


「――おい、ちょっと待て! そりゃいくらなんでも――」


 ラインヴェルドの警告を無視して右足に武装闘気と求道の霸気、更には覇王の霸気に至るまで纏わせる。覇王の霸気は霸気が衝突せずとも黒い稲妻が発生するほど濃密なもので、人に向けられたら十万人くらいは容易に気絶するくらいの力を秘めている。……流石に猛者相手だと気絶させるのは困難を極めるけどねぇ。


 そのまま跳躍すると、身体を回転させながら、スカートが広がることも気にせず、振り向き様にヴァーナムの顔面目掛けて回し蹴りを放つ。アクアに強烈なバックステップから、スピンを利かした回し蹴りを喰らわされても痣一つない端正な顔のヴァーナムの顔が面白いくらいに歪み、眼鏡が砕け散り、吹き飛ばされて激突した壁が崩壊し、その余波でヴァンヤール宮殿の一角が消し飛んだ。


「そんな……世界樹(イルミンスール)を使って作られたヴァンヤール宮殿が、こんなにもあっさり……」


 リーティアナは世界樹(イルミンスール)を素材としたヴァンヤール宮殿がただの蹴り(・・・・・)で吹き飛ばされたのが余程衝撃的だったのか、完全に放心してしまった。

 ちょっとやり過ぎたかな? と思いつつ、時空魔法を使って崩壊した宮殿を修復する。えっ? ヴァーナムはいいのかって? 放置でいいでしょ? 今ので仕留め切れなかったし。


 リーティアナが復活したタイミングで応接室への移動を再開。

 ブルブル震えているリーティアナが少しだけ可哀想だったけど、これもヴァンヤール森国に対する牽制として必要なものだった。……もし、敵対する気があるなら次はこれだけじゃ済まないよ? っていう威嚇射撃的な意味合いがちゃんとあったんだよ。ただ、ドM変態が気持ち悪くて力が蹴りに思わず力が入っちゃったって訳じゃ、多分ないって……ないんじゃないかな?


「あの……先程の方は助けに行かなくて大丈夫なのでしょうか? 冒険者ギルドのギルドマスターということは相当お強い方なのだと思いますが……」


「別に大丈夫だろ? 咄嗟に霸気纏って防御に転じていたし。その防御諸共親友はぶち抜く蹴り放って粉砕したんだけどなぁ。あれじゃあ、魂魄の霸気《耐攻者》もまともに機能しないんじゃねぇか?」


「あんなものただの手加減ですよ。本気でやれば確実にヴァーナムの頭蓋骨を粉砕できました」


「圓、それは自慢気に言うことではないと思うが……確かにアレは変態だが、ここまでするのは……」


「プリムヴェールさん、見気使ってよく見てください。吹き飛ばされた先で身悶えしていますよ。よっぽど気持ち良かったんですねぇ……キモっ!!」


「……本当だ。全く、ドMという生物は何故そんなにも気持ち悪いのだろうか?」


 そういうプリムヴェールもドM疑惑があるけどねぇ。何回も「マグノーリエ様」って呼んではマグノーリエに恐ろしいほどの微笑みを向けられて「マグノーリエさんですよ」って訂正されているし。

 ヴァンヤール森国の最高意思決定機関、長老会の会議が行われる中枢会議場に到着。五つの椅子が置かれ、そのうち四つにエルフの老人達が座っている。コイツらが元老、ヴァンヤール森国の有力者達なんだろうねぇ。


 しかし、円卓会議に五つの椅子か。会議に使うのであれば当然の配置だけど、ここに招くってことはお前らには座る椅子はないって言外に言っているも同然だよねぇ? ……帰っていいかな?


「す、すぐに椅子をお持ちしますので!!」


 まあ、ここに連れてきたリーティアナに他意は無かったんだろうけどねぇ。……どうせ、この元老共が「何故、我々が出迎えてやらねばならんのだ。会議場まで連れてくるがいい」とか駄々を捏ねたんじゃないかな? いや、知らんけど。……見気で記憶を除くのも面倒だから、調べる気もないし。


「いや、その必要はないよ。ブラックホール」


 指を慣らしてローザがレベル99で習得する固有最上級闇魔法「ブラックホール」を発動して歴史と伝統のある中枢会議場の一角を消し飛ばした。

 その所業の衝撃で意識を飛ばす者、我を忘れて怒り出す者、一気に血の気が引くもの、反応は五人五色だったけど、ボクは気にせず【万物創造】を発動して続き部屋を作る。


 続き部屋には三段の階段を設け、その上に人数分に加えて一つ椅子を置く。馬鹿と煙は高いところが好き……っていうし、あんまりこういうのは好かないけど、高さを利用して権威を示すということは昔からよくある分かり易い手法なんだよねぇ。

 エイミーン、ミスルトウ、マグノーリエ、プリムヴェール、シア、リコリス、ラインヴェルド、オルパタータダが思い思いの席に座り、最後にボクが何故か残されていた最も高い位置の中央に置かれた椅子へと座った。……なんでここみんな座らなかったの?


 ……まあ、この椅子を後から来る人(・・・・・・)のために空けておいても良かったんだけどねぇ。

 ちなみに、椅子はどれも贅を尽くした玉座になっている。円卓会議に女王と長老か座ることで客人であるボクらを立たせて愉悦に浸るつもりだったんだろうけど(まあ、そんなことをしても徒にヘイトを増やしてこの国の寿命を縮めるだけなんだけどねぇ)、ボクも無礼な連中の意のままになるのはごめん被りたいのでねぇ。

 多少力を使わせてもらったよ。


「さて、五人か。……肝心な人が文字通りこの国の命運を左右する会議に参加できないというのはあまりよろしくないことだと思うからねぇ。特別に椅子を用意してあげるよ。まあ、その気がないなら座らなくても結構。君の自由にすればいいよ、光の精霊王アレクサンドラ」



「貴様、よりにもよって我らの神を呼び捨てにするかッ! ノコノコやってきた貴様ら人間は殺処分にするつもりだったが、まず先に貴様から殺して――」


 怒り心頭に発するという表情で何の用意もなく立ち上がったのが運の尽き、元老の一人である白髪のエルフの老人は燃え上がる炎に焼かれて一瞬にして焼死体と化した。


「紹介が遅れて申し訳なかったねぇ。彼女は火の精霊王イフェスティオさんだよ。しかし、挨拶代わりに焼死体にするのはやり過ぎなんじゃないかな?」


『お主の理屈で行けば、殺意を向けることを許されるのは、殺させる覚悟をしている者だけということになるのだろう? コレは自らが死ぬことも受け入れてお主に牙を向けた。その報いを受けただけだ。お主と契約している精霊王として、お主を害する意志を持った者を許せなかったというだけだ』


「いや、その割には害意向けられても現れてくれないよねぇ?」


『それは、お主が我の力など必要ないからじゃろ!? それに、普段はレミュア達の力になってくれと言っているではないか?』


「……じゃあ、何で来たの?」


『エルフ族全般に対する私怨の憂さ晴らしのためじゃ! 以上!!』


 ねぇ、知っている? そういうの、八つ当たりって言うんだよ?


「さて、本題に入る前にその焼死体に関して説明しておこうか? まず、蘇生が可能な限界域は三十分と言われている。これを超えたら蘇生不可能だから、その焼死体の死は完全に確定する。その回避のために必要なものは二つ、一つ目は蘇生魔法、もう一つは蘇生のために焼死体を復元すること。そうなると、時間魔法か時空魔法は必要不可欠ということになるねぇ。一応、制限時間が分かるように時計を置いておいてあげるよ」


 【万物創造】で焼死体の背後にカウントダウンするデジタル時計を置いておく。

 折角親切にしてあげたのに、それに対するお礼がないってなんなんだろうねぇ、全く。礼儀がなっていないよ、礼儀が。


「……アレクサンドラ様、蘇生魔法を使うことはできませんか?」


『蘇生魔法は精霊にとっても不可能な神の御技です。アイウォスのことは残念ながら諦めるしかないと思います』


 いつの間にかリーティアナの背後に現れたアレクサンドラがボク達の方を睨んでいる。

 ……でも、さぁ。


「多種族同盟が戦争を起こす際には大きく二つの条件があって、そのどちらかを満たす必要がある。一つ目は『管理者権限』を敵対する存在、組織、国が所持している場合。その場合は問答無用で戦争を仕掛けることができる……まあ、向こうが『管理者権限』を譲渡してくれるのならば平和裏に解決を測るけどねぇ。これは、『管理者権限』を保有することがこの世界を危険に晒す行為であるからだ。多種族同盟は国際互助組織、つまり、それぞれの国の利益を守るために連携し合うための組織なんだよ。そのため、多種族同盟は有事においてそれぞれの国家の利益、つまり国家の安泰と国民の安全を守るために活動をする。侵略行為が条件付きで認められているのは、それが巡り巡って多種族同盟加盟国の安寧を守ることに繋がるからなんだよ。そして、この多種族同盟が国際互助組織であるということは、多種族同盟そのものに集団的自衛権というものが前提条件として組み込まれているということだ。今回、ヴァンヤール森国の使者が緑霊の森に対して行った行為を多種族同盟はヴァンヤール森国が緑霊の森に行った侵略行為だと判断している。一応、女王陛下が謝罪したことでレッドカードからイエローカードになった訳だけど、あくまで扱いは厳重注意だ。そして、今回、多種族同盟から派遣されたボク達に対し、君達は散々な態度を取った。挙句、そこのコレは何で言ったんだっけ? 『貴様、よりにもよって我らの神を呼び捨てにするかッ! ノコノコやってきた貴様ら人間は殺処分にするつもりだったが、まず先に貴様から殺してやる』だったかな? ……そんなに死にたきゃさぁ、魔物達に蹂躙される前にボクが殺してやるよ」

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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