Act.9-114 王宮の東屋にて、第四王子殿下とその婚約者と――。 scene.2
<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>
「ここからは口調も戻させてもらうよ。二人にはあんまり馴染みがないと思うけど、バトル・アイランドっていう戦いたい人向けのアミューズメントパーク? まあ、大人向けの遊園地みたいなものがあってねぇ。そこで、完全予約制のクラブ『クラブ・アスセーナ』っていう店を開くことにした。僭越ながらボクが一人で切り盛りして、その時のボクにできる全力を尽くさせてもらうという場なんだけどねぇ。一日一組限定で、ポイント交換所では一千万ポイントで交換可能な品にしようと考えている。ちなみに、百ポイントでビオラの商品券千ARC分、新星劇場にはボックス席のミッテルロージェが十万ポイント、インペリアル・イースター・エッグの受注生産が一万五千ポイント、『ミルキーウェイ』ブランドのオリジナルロリィタが四万ポイント、オリジナル小説の短編が九十ポイント、二次創作の同人誌の依頼が二千ポイントだから……まあ、最高額なのは間違いないねぇ。それほどの額を支払ってボクの手料理を食べたいかは、まあ、別として一応オープンはしているんだけど開店休業中でねぇ。そこで、行儀見習いで忙しいスカーレット様と、こっちはこっちで忙しくてなかなかデートのできないお二人に久々に一緒に過ごせる時間を、という意味も込めてお二人をプレオープンにご招待しようと思ってねぇ。まあ、ヴァン殿下とスカーレット様にその気があるならだけど」
「嬉しい話だ。折角婚約を結んだのにスカーレットとはなかなか一緒に居られなくてな。……それに、世界随一のローザ殿の手料理を食べることができるというのも僥倖だ。しかし、本当にいいのだろうか?」
「ホントそうだぜ。卑怯じゃねぇか? 俺だってお前の料理が食いたいから三千世界の烏を殺して毎日執務が終わった後にバトル・アイランドに必死に通ってポイント貯めているってのに」
「……やっぱりいやがったんだ。クソ陛下。聞き耳とはお行儀が悪いねぇ」
草陰から姿を見せたラインヴェルドとその姿を見て恐縮してしまうスカーレット。ヴァンは溜息を吐き……ボクも一緒に溜息を吐きたくなってきたよ。
「裏の見気でしっかりと気配消していたと思うんだけどなぁ」
「ボクに関する話をするためならスカーレットさんを王女宮筆頭侍女の執務室に呼び出して説明すればいい。ヴァン殿下と共に密談に打ってつけな場所に呼び出したってことは何かあるって張り込んでいたんでしょう? バレバレだって、その思考」
「まあ、そりゃそうだけどさぁ」
「こ、国王陛下!? ご、ご機嫌麗しゅう」
「……全く、淑女の鑑のスカーレットさんが困惑するくらい驚かせちゃダメでしょう?」
「俺は別に恐縮する相手じゃないと思うけどなぁ、フランクに行こうぜ? フランクに」
「父上、そんなんでも一応国王なのですからフランクに接するようにという方が無理だと思います」
「というか、さっきからクソ陛下とかそんなんとか酷くない!? 圓はいつも通りとして、ヴァンにまでクソ野郎扱いされると傷つくんだけど!!」
「そんなことで傷つく豆腐メンタルでもないでしょう?」
「ってか、そうじゃなくてだな!! 俺だって必死にバトル・アイランドでポイント稼いでいるの!!」
「……その熱意をさぁ、もう少し国王陛下の職務に回してくれるとありがたいんだけどねぇ、ボクにとっても、アーネスト閣下にとっても」
「それなのに、ヴァンとスカーレットを無料でご招待ってそりゃねぇだろ!!」
「……スルーしやがった。そもそも、ヴァン殿下もスカーレットさんも非戦闘員、ポイント稼ぐのは不可能に近いからねぇ。ビオラの商品として取り扱うつもりもないし。……というか、もっと頑張ってビアンカ様とカルナ王妃殿下を招待しなさいよ。全く、ヴェモンハルト殿下といい、親子揃って熱意が足りないよ。スザンナ様と二人でレイン先輩をレストランに連れて行くくらいのプレゼント、とっとと用意すればいいのに」
「……お前って鬼畜だよな? だから、そのポイント集めるのが大変なんだって!! ほら、これ施設長のシンボル! 幻想司書長に、地下鉄車掌、迷宮女王に、勝利の女神! 揃えるの大変だったんだぜ!!」
「……それ、銀のシンボルじゃん。手加減モード勝ったくらいで調子に乗られてもねぇ」
「常設クエストも一通りクリアしたんだぜ!! 月刊チャレンジクエストも毎回クリアしているし!!」
「……ミラークエストは?」
「そりゃまだだけど……ってか、強過ぎない? 圓プロデュースのラインヴェルド」
「はぁ……まだまだだねぇ。とりあえず、自慢は全部金シンボルを取るか、ミラークエストで勝利してからにしてもらえるかな?」
「なんか、親友の求めているのがキツ過ぎる気がするが。そういや、約束覚えているか?」
「全ての金シンボルを集め切ったらバトル・シャトーで、ボクの本気を見せてあげるよ。まあ、陛下は施設長になる気はないと思うけどねぇ。それと、常設クエストも増やしておくよ。全ての金シンボルを獲得した場合に挑戦できる超高難易度クエストをいくつか。一回攻略するだけで『クラブ・アスセーナ』の招待と交換できるだけのポイントが手に入るクエストとかどう?」
「おう、そりゃいいな!!」
「普通の人は高難易度のクエストより安定してクリアできるクエストを周回してポイントを貯めると思うけど、陛下にとっては強い奴と戦えてその上ポイントも手に入るんだから一粒で二度美味しいってことになるのかな?」
「でも、クリアできないレベルにするんじゃねぇぞ?」
「そうだねぇ、これクリアできたら真聖なる神々との戦闘を任せてもいいっていうくらいの強敵を用意させてもらうよ」
「おい、それって結局のところ頑張ってもクリアできない奴じゃ。……本当にいい性格しているよなぁ、お前」
「陛下だけには言われたくないよ」
ヴァンが「どっちもどっちだろう」っていう顔をしているけど、ボクもそう思うよ。ボク自身、自分が性格が悪い自覚あるし。
「姫殿下に関しては事情を説明できる状況になったら招待しようと思っているよ。ヴァン殿下達の他には別の日にルクシア殿下とフレイ様を誘おうと思っている」
「もし、可能ならばでいいのだが、エルメンヒルデもその日に呼ぶことはできないだろうか。第四王子専属侍女として助けられてばかりだからな。その恩返しがしたい」
「あっ、それはヴァン殿下の頼みでもお断りさせてもらうよ」
ヴァンだけでなくスカーレットとラインヴェルドもボクの返答に驚いたみたいだねぇ。
「今回は純粋な二人のデートの場として『クラブ・アスセーナ』に招待したいって考えているんだよ。――実は『Rinnaroze』のペチカさんも別日に招待しようと思っていてねぇ。その日に他に同席する人が居てもいいか聞いてみたんだ。ペチカさんが快諾してくれたから、その日にノクト先輩とニーフェ先輩、アルマ先輩、レイン先輩、クレマンス先輩、エルメンヒルデ先輩、エーデリア内宮筆頭侍女様、ファレル外宮筆頭侍女様、ペチュニア先代王女宮筆頭侍女様……後はペチカさんの希望でアーヴァゼス王宮筆頭専属料理長様、ジュードマン王宮附属大食堂専属料理長様、メルトラン、ディマリアさん、ジェイコブさん、ジミニーさん、アルバートさん、シュトルメルトさんを招くことになっているから同じ日にってことはできないけど、料理は提供させてもらうつもりだよ」
「……なんか楽しそうだなぁ。俺も参加したいッ!!」
「だったらとっととバトル・アイランドでポイントを貯めてきなさい!!」
詳しい日程は改めて調整してからということでその日は解散となった。……スカーレットにこの世界の真実とボクの前世に関する話をするっていう目的は達せられたけど、それ以上の仕事を抱えちゃった気がするねぇ。主にラインヴェルドのせいで。
まあ、バトル・アイランドもかなり軌道に乗って運用が進んでいるし、そろそろ追加を……と思っていたタイミングだったからクエストの追加は悪い提案ではなかったんだけどねぇ。
◆
王女宮での仕事を終えた後、カモフラージュ用のラボに改装した屋敷に移動した。
既に屋敷し到着していたカルファ、ノイシュタイン、シア、リコリスと合流し、人造魔法少女の開発プロジェクトを開始する。
ちなみに、このリコリス。本名はリコリス=ラジアータといい、緑霊の森出身のエルフだ。シアの副官でVSSCのサブリーダーを務めている。
彼岸花の髪飾りをつけている黒髪のエルフで、これといった特殊能力は持っていないものの魔法の腕も高く、闘気や八技、更には神聖属性魔法や霸気も十全に使えるなど戦闘力も高い。時空属性や虚空属性、暗黒属性といった特殊な属性以外の全ての属性に適性を持っており、攻撃のレパートリーも非常に多い。
そんな彼女の相棒は愛用する武器は武器に意志を宿らせる技術を使って「泳魚の天恵(モデル:青龍)」を食べさせた青龍刀「偃月蒼雲」。まあ、幻獣系の天恵の実というだけあってその能力は強力無比。「飛翔の天恵(モデル:朱雀)」、「獣化の天恵(モデル:白虎)」、「爬虫の天恵(モデル:玄武)」に並ぶ四神の天恵の実で、水の操作、火や雷、暴風の生成など様々な力を有している。
本人にその気があるなら今回の研究の派生で魔法少女になってもらおうと思っているので今後更に強くなるだろうねぇ。
勿論、ノイシュタインには内緒でその辺りの研究は進めるつもりだけど。同盟関係ではあるけど、完全な味方かといったらまた別だしねぇ。まあ、信頼はしているんだけど……線引きがあるのは仕方がないことだと思うよ。
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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