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百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

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Act.9-109 求婚難題とレイリア=レンドリタの秘密。 scene.2

<一人称視点・アルベルト=ヴァルムト>


 陛下にレイリア=レンドリタに関する情報提供を依頼してから一週間が経過した。いつものように任務を終えて寮に戻るとリジェルが大量の手紙を抱えて部屋に入ってきた。


「アルベルト、お前宛に手紙だぞ……って、量多過ぎないッ!?」


「ありがとうございます」


 リジェルがドスンと机の上に置いた手紙の中から目当ての手紙がないかを探す。そんな私をリジェルがニヤニヤしながら見ている。


「どうしたんだ? お前の愛しの筆頭侍女様からの手紙は無かったと思うぞ?」


「ローザ様から手紙が来る理由はないですよ。邪魔にならない程度に王女宮にお邪魔してローザ様とはお話しさせてもらっていますし、剣の修行もつけて頂いていますから。……まあ、それでも全然足りないんですけどねぇ」


「ほぅ、近衛の期待のホープが王女宮筆頭侍女様に剣の手解きをねぇ……そりゃ、いくらなんでも恥ずかしくねぇか?」


「……ご存知ないとは思いますが、ローザ様は私の知る限りでは世界最強の剣士ですよ。私の師匠よりも強いですし」


「はっ……マジかよ? 『剣聖』より? いや、それは流石に……」


「あの方がいれば王女宮の守りは鉄壁……難攻不落の要塞と化すといっても過言ではないほどの猛者ですよ。実際、園遊会で魔物相手に戦っていましたが、本気になれば秒殺できたでしょうが。あの時は私を含め、周囲に自分の強さを見せないように手加減をしていたようです。私とギルデロイ……というより、レジーナ様とユリア様の参戦を視野に入れて動いていたようですから実際手を抜いても問題のない局面でしたし」


「……お前、それ本気で言っている?」


「本気ですが?」


「いや、信じられねぇ。だってそれって近衛騎士より強いってことだろ?」


「近衛というか、シモン団長とエアハルト副団長が束でかかっても押さえ込むのが厳しいほどの猛者ですよ。多種族同盟の代表クラスが束になって足止めできるかできないかのレベルでしょうから……そんな彼女を私は守れるようになりたいと言ったのですから、その道が険しいものになることは承知の上ですよ。……ただ、彼女も自分は最強ではないと、剣士という一側面をとっても彼女以上の使い手がいるというのですから、世の中恐ろしいものです」


「……いかん、頭クラクラしてきた。それじゃあ、お前は一体誰の手紙を探しているんだ?」


「分かりません」


「送り主が分からない手紙をどうやって探すんだよ?」


「とりあえず、いつも私に手紙を送ってこない方の中からあたりをつけるしかありませんね」


「……この山の中から?」


 手紙の山の中からそれらしいものを選別し、その中から更に目当ての手紙を見つけるのに掛かった時間は一時間……流石に私もリジェルもヘトヘトになった。


「……どう考えてもこれしかないんだよな? でも、ライツァファー公爵令嬢? やっぱり、これって恋文なんじゃ? でも、ライツァファー公爵令嬢って第二王子殿下の婚約者だよな?」


「この手紙で確定ですね。中を確かめてみましょう」


 私の予想は的中し、手紙には「レイリア=レンドリタ夫人に関する情報提供の任を陛下から仰せつかったこと、そして仰せつかった仕事そのものは終わる見通しが未だに立たないもののこれ以上お待たせするのも忍びないので希望を出したタイミングで面会の機会を作ること。そして、面会の際にはしっかりと覚悟を決めてくるように」と書かれていた。


「……覚悟を決めてくるように……って、一体どんな話をするつもりなんだろうな? ……って、アルベルト、まさか震えているのか?」


「怖くないと言ったら嘘になります。……一体どんな秘密が明かされるのか」


「第二王子の婚約者がその秘密を知っている理由が分からなかったけど、国王陛下の任で何かの調査にあたっているってことなら知っていても不思議じゃないのか? ……顔真っ青じゃねぇか? 俺もついて行ってやろうかー?」


「……頼めますか?」


 リジェルは茶化すつもりで言ったんだろうが、私としては知り合いの一人にでも付いてきてもらった方が気持ちが落ち着く。

 正直不安で一杯だ。手紙の警告もそうだが、あの圓殿が難題として提示したものに関わっている……レイリア=レンドリタと私の間にどのような関係があるのか……ついつい色々な可能性を思い浮かべてしまい、胃の腑が冷たくなってくる。



 日時の希望を書いた手紙を送り、当日、私はリジェルと共に指定された王子宮にある部屋の一つに向かった。


「近衛騎士のアルベルト殿とリジェル殿ですね。こうしてご挨拶をさせて頂くのは初めてですね。ルクシアと申します」


「まさか、殿下御自らお出迎え頂くことになるとは思ってもみませんでした。一介の近衛騎士のためにお時間を取って頂くなど畏れ多いことでございます」


「将来、プリムラの義兄となる方がどのような方なのか気になったのが一つ。後は今回のアルベルト殿のご用件がご用件だったので。……正直な話、今回のお話は受け止めることが難しいものだと思っています。結局のところ、アルベルト殿自身が受け止め、折り合いをつけなければならないものではありますが、同じ話を共有して聞く誰かがいることで少しでもショックを和らげることができるかもしれない。……それが難しくとも、負担を減らすために必要な言葉を掛けることができるかもしれない。ただ、余計なお世話だったのかもしれませんね」


 リジェルに視線を向けてニコリと笑った後、ルクシア殿下は部屋の中へと案内した。

 中には堆く積まれた本と箱の山に占領された机とピアノに似た楽器が置かれていた。そのピアノに似た楽器に向かうように置かれた椅子に座っていた令嬢は私達の姿を認めると、美しいカーテシーで迎え入れてくれた。


「ルクシア殿下の婚約者のフレイと申します。本日はレイリア=レンドリタ夫人に関する情報をお聞きしたいということでお間違いなかったでしょうか?」


「はい、レイリア=レンドリタに関する情報をお教え下さい」


「アルベルト様とレイリア夫人の関係について……この話はアルベルト様にとってはショックの大きいものだと思います。話を聞く覚悟はできていますか?」


「はい、できています」


 空気がピリピリとしている。その空気に曝されたフレイ嬢は少しだけ涙目になっていた。

 ……本当に彼女には悪いことをしていると思う。レイリア=レンドリタの秘密、それを知ってしまえば今の私では居られなくなってしまうかもしれない。それほどの秘密を語らせるという重要な仕事を私はフレイ殿に押し付けてしまった。


 まだ為人を知っているという訳ではないが、恐らくこういったことは苦手な令嬢なのだろう。そのような辛い仕事を押し付けたことを申し訳なく思う。


「今回、私はその秘密に関する情報に加え、そもそも前提となる情報と、その情報を知った場合のアルベルト様がどのような道を選ばれることになるのか、私の知る限りの情報をお教え致します」


「フレイ嬢、それじゃあまるでアルベルトがそれを知ってどのような選択をするのかをご存知だとでも言わんばかりではありませんか!!」


「リジェル殿、私もフレイもその未来を知っています。……アルベルト殿、例の件について彼は知らないのですね」


「えぇ、私もローザ様から告白の返事をもらった際に聞いたものです。あまり知っている人数が多いと支障のあるものですし、リジェルは必要最低限には含まれていなかったのだと思います」


「分かりました。……リジェル殿、私もどこまで話して良いかは分かりませんが、そうですね。この世界が今後どうなるのか、一部ではありますが、その内容を示している予言書のようなものがあるとでも思ってください。勿論、その予言書通りに完璧に事が運ぶ訳ではありませんが、ある程度、予言書に即した内容の未来になります。ただ、この未来は意図して変えようとすれば変えることができるものです。フレイは父上からその解析を押し付け……任されているのです。最近はそれ以外の仕事もしていますが」


「予言書……そんなものが本当に実在しているのですね」


 リジェルは信じられないだろうな。……より正確に言えば、この世界の根幹となる三十のゲーム。私はある意味でその一つ『スターチス・レコード』の歴史をなぞっている……と言ってもリジェルは信じてくれないだろう。荒唐無稽な話だからな。

 予言書という表現ならばまだ理解できる。流石は高名な学者として名を馳せているお方だ。


「まず……そうですね。アルベルト様はパーバスディーク元侯爵家をご存知でしょうか? フンケルン大公家派閥の大断罪が行われた後、男爵位に転落し、マキシア様の死を経て不在となった当主の椅子に息子のランジェロ=パーバスディーク様がついた、あのパーバスディーク元侯爵家です」


「はい、あの侯爵は社交界でも有名でしたから。……まさか、ブライトネス王国に潜む『這い寄る混沌の蛇』の尖兵の一人だったとは思いもよりませんでしたが」


「……正直、私もアレが本編中でのうのうと生き残って実害をほとんど被っていなかったのは本当に腹立たしかったので、『這い寄る混沌の蛇』に与する売国奴という形で処分できたのは僥倖だったと思っています」


「……フレイ、ブラックなの出ていますよ。気持ちは理解できないこともありませんが」


「あっ……ごめんなさい。話を戻しますね。パーバスディーク元侯爵家、予言書の歴史においてはパーバスディーク侯爵家ですが、あの家は男尊女卑が激しい家でした。それに当主のマキシアは権力に取り憑かれた老人、自分が中心にいなければ気が済まないというタチの悪い男でした。ここからの話は今の私の話をを念頭に置いた上で聞いて頂きたいと思います」


 ……一瞬、フレイ嬢が真っ黒なオーラを出していたが、温厚そうな彼女が怒りを覚えるほどパーバスディーク侯爵は最低の人間だったということか。

 しかし、それを念頭に置いて……か。覚悟はしてきたが、嫌な予感がするな。

 お読みくださり、ありがとうございます。

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 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

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