表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合好き悪役令嬢の異世界激闘記 〜前世で作った乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢が前世の因縁と今世の仲間達に振り回されながら世界の命運を懸けた戦いに巻き込まれるって一体どういうことなんだろうねぇ?〜  作者: 逢魔時 夕
Chapter 9. ブライトネス王立学園教授ローザ=ラピスラズリの過酷な日常と加速する世界情勢の章〜魔法の国事変、ペドレリーア大陸とラスパーツィ大陸を蝕む蛇、乙女ゲームの終焉〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

957/1360

Act.9-105 ダブルまどか、クレセントムーン聖皇国にて引越しの挨拶回りをする。 scene.1

<一人称視点・アネモネ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>


 円華を案内した屋敷はクレセントムーン聖皇国の首都に近い屋敷の一つだ。

 旧ブラックソニア辺境伯領の領主の館近辺を改造してクレセントムーン聖皇国の首都を置いたから、かつてエルヴィーラが暮らしていた家も近くにある。ただ、大規模な区画整理で様相はかなり変わっている……一度だけエルヴィーラを連れてきたことがあるけど、「本当にここがブラックソニア辺境伯領なの?」ってかなり驚いていたし。


 首都に聳え立つ聖堂とガラス張りの高層ビルを融合した建物は旧ブラックソニア辺境伯を潰してその場所に建てたクレセントムーン聖皇国の王城の役割を果たす建造物ということになる。

 望月大聖堂フルムーン・カテドラルと呼ばれるこの場所は宗教、行政、商業――様々な分野の中心となっていて、ビオラの支店の機能を備えていたり、各種行政手続きを行えたり、冠婚葬祭などの宗教行事を行えたり、祈りの場としての機能を備えていたり、とこの場所一つで基本的に様々なことができるようになっている。


 勿論、謁見の間を備えていたり、舞踏会や立食パーティーを行える会場を完備していたり、会議室として使えるホールも小さいものから大きなものまで幅広く揃っている。王城の機能としてはビオラ=マラキア商主国のものに引けを取らない……といいつつ、実際に使用する頻度はほとんどないから、ビオラ=マラキア商主国のものと並んで宝の持ち腐れではあるんだけどねぇ。


 内部にはホテルや映画館などの娯楽施設も完備していて、国賓クラスの滞在にも対応できる準備は整っている。……まあ、こっちもあんまり使う予定はないんだけどねぇ。ただ、少々値は張るものの一般人でも手が届く金額だから、ホテルの予約もぼちぼち増えていると聞いている。


 紹介した屋敷の近所にはエルヴィーラの実家の他に、甘蔗林結城が家族と共に経営するお菓子工房「甘味処菓子工房 パティシエール・シュガー」、松枝雫と宵霧綾夏の一軒家(愛の巣)、阿良川燕、朱雀大路火憐、今泉玲華が暮らすシェアハウス、木虎春海とメイドの南部(なんぶ)(みどり)が暮らす洋館、そして碓氷美姫と妹の碓氷(うすい)楓那(ふうな)が暮らす一軒家、十六夜天音と祖父の十六夜(いざよい)慶春(よしはる)、父の十六夜(いざよい)慶光(よしみつ)、母の十六夜(いざよい)八重(やえ)が暮らす純和風の屋敷、菊夜と沙羅が住み、将来は朝陽が暮らすことになる予定の家などがある。

 折角ここまで来たから円華の紹介を兼ねた挨拶回りをしつつ、何か不都合なことは起きていないか聞いてみるつもりだ。


「とてもいいお屋敷ね。気に入ったわ。……でも、私一人で暮らすのには広過ぎるし、それに私一人で管理するのは難しいと思うわ」


「流石にフリューリング公爵家のご令嬢だった方を狭い家に住まわせるというのは申し訳ない気持ちになるからねぇ。使用人についてはビオラで手配させてもらう。最近、うちもそういう業務を始めたんだよねぇ。勿論、時空騎士(クロノス・マスター)の資格を持っている方には割引の特典があるからお手軽なお値段で身の回りのお世話はしてもらえるよ」


 ブライトネス王国で少し前に起きた大規模な断罪の一件で新興貴族が多く増えた。平民からいきなり叙爵されて貴族の仲間入りを果たしたとなると、当然、使用人を雇ってはいない。一応、そうした斡旋の場所が無い訳ではなく、使用人の斡旋のための組織――使用人ギルドというものがあるけど、冒険者ギルドのような知名度はほとんどない。まあ、そうそう平民が叙爵で貴族に……ってことはないからねぇ。

 質の高さはボクも一目置いているところだけど。ただ、折角ビオラに領地経営の手伝いをしてもらうなら、ついでに使用人もビオラから斡旋して欲しいって声が意外に多くてねぇ。


 それで、使用人ギルドに菓子折り持って事業参入の挨拶をしてから使用人斡旋の事業を始めた。……何故か、使用人ギルドの代表を務める元公爵家の使用人頭だった元侍女長のフィトリア=エンファレスは顔面蒼白で長年培ったポーカーフェイスも機能しないような状態になっていたけど、大丈夫かな? ……そんなにアネモネ(ボク)って怖い?


「何から何まで本当にありがとうございます」


「いやいや、大したことはしていないよ。とりあえず、一通り家の中を確認して不都合なことがなければ外に行こうか?」


「外に……ですか?」


「ここで暮らすとなればご近所付き合いすることも増えるだろうからねぇ。まあ、律儀な性格の円華さんはこの後にするつもりだったと思うけど、ボクも丁度、家を斡旋したこの辺りの住民達に不都合なことがないか聞いておきたくてねぇ。一緒に回ってもらえるかな?」


「はい、そういうことでしたら是非」


「決まりだねぇ」



 最初に向かったのはお隣の雫と綾夏が暮らす家だった。

 全てのカーテンが閉まっていて、鍵も掛かっている。……事前に二人は防音壁を希望していたし、昼間から何をやっているのかは想像がつくねぇ。百合です、ご褒美です……本当は特等席から眺めたいところだけど、「百合に挟まる輩は死ねばいい」っていう慣用句もあるしねぇ。


「ここには松枝雫さんと宵霧綾夏さんが住んでいる。同じ時空騎士(クロノス・マスター)だし、近いうちに会うことになると思うけど、休日は思う存分恋人とイチャつきたいだろうし。とりあえず、配達物保管用のコンテナに円華さんの書いた手紙と菓子折りを置いて次の家に行こうか?」


「……二人とも女性、よね? ――なるほど、百合と呼ばれる関係ね。私の友人にそういった関係を愛好している方はいたけど、実際にそういった関係の方に会うのは初めてだわ」


「それなら、覚えておくといいよ。ボクも割とそっちのタイプだし、百合の関係を好んでいるから。……まあ、ボクの場合、前世の関係で純粋培養の百合とは言い難いんだけどねぇ。とりあえず、二人に何か用事があればこうしてコンテナやポストに入れてやり取りするといいよ」


「分かったわ」


 雫と綾夏の愛の巣を早々に後にし、次に向かったのは燕、火憐、玲華が暮らすシェアハウス。

 シェアハウスの玄関先で出迎えてくれたのは管理人を引き受けてくれている燕だ。


「圓さん、本日はどうされたのですか?」


「突然訪ねて申し訳ないねぇ。紹介するよ、今日からクレセントムーン聖皇国で暮らすことになる四季円華さんだ。複数の『管理者権限』を持つ元神で、五つのゲームの主人公の記憶を持つ女性……と捉えてもらうと分かりやすいかもしれないねぇ。こちらはこのシェアハウスの管理人を引き受けてくれている阿良川燕さん。『天恵の実』という特殊能力を獲得することが可能になる実を食べた特殊能力者だよ」


「初めまして、四季円華と申します。ご近所で暮らすことになりましたので、これからよろしくお願いします」


「初めまして、燕です。……しかし、名前は圓さんと同じなのですね。ゲームを作ったということは意図して自分の名前を彼女に付けた……それだけ思い入れがあるということでしょうか?」


 この話、魔法の国では誰も突っ込んで来なかったから不思議だったけど、やっぱり気になっている人もいるんだねぇ。


「燕さんは『トップ・オブ・パティシエール〜聖なるお菓子と死の茶会〜』の登場人物ですが、円華さんは『蛇の海〜絆縁奇譚巻ノ一〜』、『妖魔斬刀〜絆縁奇譚巻ノ二〜』、『日蝕〜絆縁奇譚巻ノ三〜』、『氷の伯爵と二輪の花〜絆縁奇譚巻ノ四〜』、『滅存の認識者〜絆縁奇譚巻ノ五〜』という一連のゲームシリーズの主人公で、それぞれの記憶を継承しています。公爵令嬢セレンティナ=フリューリング、妖魔殺しの女武者・夏江朔那、革命を志す男爵令嬢ラスヴェート=アウトゥンノ、氷の伯爵ニコル=アヴァランチ・ウィンター……それぞれの名は春夏秋冬の四季を表しています。そして、五人目の四季円華さんは四つを合わせた四季と、四季が巡るイメージで円華と付けました。ボクの名前はあんまり関係ないですねぇ」


「そうだったのね」


「『絆縁奇譚』シリーズはボクの前世では書かれることがなかった三島由紀夫の最後の作品『豊饒の海』がモデルになっています。ボクの世界では大倭(日本)の敗戦というものが存在しませんでしたし、あの戦争は財閥七家などに代表される裏の戦力が動いて勝利に導きましたから、作家・三島由紀夫の根幹となる部分はこの世界では醸成しなかったのです。まあ、それを良いと取るのか悪いと取るのかは人それぞれです。……個人的にボクは今の大倭秋津洲を見ていると一度は痛い目を見た方がいいと思ってしまいますけどねぇ」


 まあ、実際にボク達は痛い目どころか、あの大倭秋津洲帝国連邦という腐敗した国そのものを消し飛ばすことを視野に入れているんだけどねぇ。


「ところで、火憐さんと玲華さんは在宅ではないのかな? 火憐さんは魔法の国の任務を終えてから時間も経っているし、そろそろ帰っているんじゃないかと思っていたんだけど」


 二人とも暗い表情になってしまったのでボクは話題を変えることにした。


「火憐さんはまだですね。今日はビオラでトレーニング器具を見繕ってから帰ってくると言っていましたし、もう少し時間が掛かると思います。玲華さんは……黒魔術の情報を集める目的でフラフラと歩き回っているようで、なかなかシェアハウスに戻ってくることはないですね。……それに、正直、部屋の生活感が薄いのでこのシェアハウスは物置として使っているのかもしれません。お金を稼ぐ方法もありますし、どこかで一軒手に入れている可能性は高いんじゃないかと感じています」


「まあ、あの人は淫魔(サキュバス)みたいな人ですからねぇ。……あの人のことは放っておきましょう。では、燕さん。申し訳ございませんが、火憐さんが帰ってきたら円華さんが引っ越してきた話とここでの暮らしで何か不都合なことがあればボクに連絡を入れて欲しいと伝えてください」


「分かりました。帰ってきたら必ず伝えますね」

 お読みくださり、ありがとうございます。

 よろしければ少しスクロールして頂き、『ブックマーク』をポチッと押して、広告下側にある『ポイント評価』【☆☆☆☆☆】で自由に応援いただけると幸いです! それが執筆の大きな大きな支えとなります。【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてくれたら嬉しいなぁ……(チラッ)


 もし何かお読みになる中でふと感じたことがありましたら遠慮なく感想欄で呟いてください。私はできる限り返信させて頂きます。また、感想欄は覗くだけでも新たな発見があるかもしれない場所ですので、創作の種を探している方も是非一度お立ち寄りくださいませ。……本当は感想投稿者同士の絡みがあると面白いのですが、難しいですよね。


 それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。


※本作はコラボ企画対象のテクストとなります。もし、コラボしたい! という方がいらっしゃいましたら、メッセージか感想欄でお声掛けください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ