Act.9-104 魔法の国事変の戦後処理 scene.2
<一人称視点・ローザ・ラピスラズリ・ドゥンケルヴァルト・ライヘンバッハ・ザール・ウォルザッハ・インヴェルザード・ジードラバイル・ヒューレイツ・ビオラ=マラキア・クレセントムーン>
「ノイシュタインさんの戦奴になっているセイント・ピュセル、拳法姫の娘々、紅桜の解放はボク達とカルファさんの共同研究で新型の高級魔法少女が完成してからということで良かったかな?」
「そのことなのだが、セイント・ピュセル、拳法姫の娘々、紅桜の三人はこのタイミングで戦奴から解放しようと思っている。圓、お主からもらったスートランプ・ゴールドリゲイリアと今回の戦争で加えたネハシムとブレイグの二人で一先ずの戦力は手に入れることができているからな。勿論、新型の魔法少女には期待している」
当初の予定だと新型の超高級魔法少女が完成するタイミングでの解放だったけど、そのタイミングが更に早まった。きっとあの三人もこの話を知らされたら泣いて喜ぶだろうねぇ。
ちなみに、元親衛隊所属のネハシムとプレイグは戦奴のままということになる。……本人達も「全力を尽くして負けたのだから言い訳はできない」ということで、戦奴であることを甘んじて受け入れるつもりのようだし。
「しかし、我の持つ我が派閥の現身魔法少女の技術と、お主の持つラツムニゥンエル派の現身魔法少女の技術と人造魔法少女研究の成果、そして魔法の国の現身魔法少女の技術と人造魔法少女の研究の成果、これらが合わさった時にどのような魔法少女が誕生するか、とても興味深いな」
「私もワクワクしっぱなしです」
「ボクも楽しみだよ。まあ、それは後のお楽しみということで……さて、今回の会議の最後の仕事をしようか? 多種族同盟への加盟は加盟国三国の承認をもって認められることになる。そして、この場にはブライトネス王国、フォルトナ=フィートランド連合王国、緑霊の森の三国の君主がいる。承認の条件は揃っているからねぇ、とっとと魔法の国の多種族同盟加盟を承認しようよ」
「……おいおい、ビオラ=マラキア商主国の大統領とクレセントムーン聖皇国の聖皇を忘れているぜ?」
「……細かいことは気にしなくていいんじゃない?」
「多種族同盟加盟国ブライトネス王国国王として、魔法の国の多種族同盟加盟を承認する。ようこそ、多種族同盟へ! ってことで、なんかクソ面白いことあったら隠さずに教えてくれよ!」
「同じく、フォルトナ=フィートランド連合王国国王として魔法の国の多種族同盟加盟を承認する。クソ面白いことはラインヴェルドじゃなくて俺に教えろよ!」
「どっちもクソ野郎なのですよぉ〜。私は緑霊の森の族長として魔法の国の多種族同盟加盟を歓迎するのですよぉ〜」
「……いや、三人ともクソ度度合いは変わらないと思うよねぇ。真面目に国家君主として働けよ。……ボクもビオラ=マラキア商主国の大統領とクレセントムーン聖皇国の聖皇として多種族同盟への加盟を認める。ようこそ、多種族同盟へ。まあ、雪菜さんや黒華さん達との関係はあんまり変わらないけどねぇ。条約に関することや初期の時空騎士の任命などその他諸々についてはまた後日ということで。とりあえず、今日は解散としよう。この後、ラインヴェルド陛下達は帰国してもらいたい。アクア、ディランさん、カルファさんをラピスラズリ公爵家へ案内してもらっていいかな?」
「分かりました、お嬢様!」
「任せとけ! 親友!」
「最後に四季円華さんとは一度しっかりと話をしたい。この会議が終わった後、しばらく時間をもらえないかな?」
「はい、『管理者権限』に関することですよね」
「勿論それもあるけど、現在のラスパーツィ大陸に関する情報交換もしておきたい。――今のところは諜報員の派遣に留めているけど、場合によっては今回のものと同じメンバーの臨時班派遣も視野に入れているからねぇ。『絆縁奇譚』シリーズの神である四季円華さんとは是非しっかりと情報の共有をさせてもらいたい」
「分かりました」
魔法の国事変の戦後処理は一旦ここで終了となった。
その後、ボクは『管理者権限・全移動』を使って円華と共にボクの保有する屋敷の一つへと転移した。
◆
「さて、単刀直入で申し訳ないのだけど、君の保有している『管理者権限』は元々、女神ハーモナイアに与えられたものだった。彼女の復活にはその力が必要なんだよねぇ。譲ってもらえると嬉しいんだけど」
屋敷に転移したボクは紅茶を淹れてお茶菓子のケーキを出してから円華に話を切り出した。
婉曲的な表現は使わず単刀直入にボクの望みを伝える。四季円華という女性の性格を考えると話の通じないタイプではないし、こうやって隠し立てせずに目的を伝えた方が分かってもらえると思う。
「私は気づいた時には五つの『管理者権限』と五つの人生を生きた記憶を持っていました。……この力は、ハーモナイアという方の大切なものだったのですね。勿論、この力はお返しします。それと、ギィーサムが保有していた二つの『管理者権限』もお渡し致します」
「ありがとう。ただ、四季円華さんが良ければということにはなるのだけど、今後も良ければボク達に力を貸してもらいたいと思っている。君も理解していると思うけど、この世界は三十のゲームが融合して生まれた異世界だ。当然、君と縁深い『蛇の海〜絆縁奇譚巻ノ一〜』の世界は、ラスパーツィ大陸として存在している。ただ、必ずしも君の持っている知識通りに、シナリオ通りになる訳ではない。ボク達のようにメタ視点を持つ『管理者権限』を有する神の干渉などによって世界は予想外の方向へと進んでいくこともあり得る。……君が『管理者権限』を獲得しても何でも思い通りになる訳ではなかったように、今後の世界の行く末は誰にも分からない。だから、この世界をバッドエンドにしないためにボク達に君の力を貸してもらいたい」
「私で良ければ、お力をお貸し致します。それに、ラスパーツィ大陸で数年後から始まる学園生活には私も思うところがありますから。……この世界はシナリオに従っている訳ではない、つまり、運命を変えることができるということですよね? 私は、ギィーサムをあのような悲しい老人にはしたくありません。あの苦しみを、ギィーサムにも、イリオット皇太子殿下にも味わってもらいたくはありません。……百合薗圓様、この世界を基礎を作ったのは貴女様だと聞いています。私の考えを、圓様は許してくださいますか?」
「……それをボクに聞く必要はないよ。円華さんは円華さんの信じた道を進めばいい。ただ、ボクも個人的には異世界化したこの世界にあのシナリオは不要だと思う。君の力で幸せにすればいい、ギィーサムも、イリオット皇太子も、そして他ならぬセレンティナ=フリューリングのこともねぇ」
「ありがとう……ございます」
彼女はずっと苦しんできた。『管理者権限』を持つ神であるが故に知っていながらもこの世界に干渉してはならないのではないかと。
「自分のやりたいようにやればいい」というボクの言葉が彼女の苦しみを取り除くことに一役買ってくれたのは嬉しいねぇ。
「『管理者権限』だけど一旦ボクの方で貰い受けた後に複製をお返しすることになる。性能自体は今までのものと変わらないから、円華さんが弱体することはない。安心してねぇ。ラスパーツィ大陸に関しては近々……と言っても来年の春、君がかつて通っていた学園では新学期の始まりの時期といえば分かりやすいと思うけど、その時期にラスパーツィ大陸の隣のペドレリーア大陸で『這い寄る混沌の蛇』……君もよく知っていると思うけど、タイダーラ・ティ=ア=マットや火閻狼が所属している邪教が行動を起こすことを想定して独自に動こうと思っているんだけど、そのタイミングでペドレリーア大陸で今回と同じメンバーの臨時班を動かそうと思っている。この臨時班は場合によってはペドレリーア大陸の方でも終盤に動いてもらうことになると思うけど、円華さんにもその臨時班に所属してもらいたい。……頼めるかな?」
「勿論です。私の願いだけを叶えてもらうというのは虫のいい話ですし……『這い寄る混沌の蛇』には私も因縁がありますから」
「ありがとう。後は……そうだねぇ。今後のことを考えて今のうちに円華さんにはレベルアップをしてもらいたい。イドルフの屋敷の戦いで見たと思うけど、魔法以外の技術に闘気や八技といったものがある。他にも色々とあるんだけど、最低限、闘気と八技、後は地上世界の魔法については習得してもらいたいと思っている。教師役を近いうちに派遣するから、あんまり時間がないけど頑張って覚えてもらいたい。……大丈夫かな?」
「分かりました。あの戦いで汀さん達が使っているのを見て習得しないと今後の戦いにはついて行けそうにないと思っていたので、教師役を派遣してくださるという申し出はとても嬉しいです。足手纏いにならないように頑張ります」
本当にいい子だよねぇ。真面目で、陽だまりのような性格で……本当に、何で彼女が悪役令嬢なんだろうねぇ。設定した奴に聞きたい……って、ボクが元凶か。
「これからもう少し時間をもらっていいかな? 今後のことを考えると拠点が必要だと思うし、丁度円華さんにぴったりな新居をご用意させてもらうよ。勿論、ただでねぇ」
「ほ、本当にいいのですか? ……お金はありませんが……これから稼いで必ずお支払いしますので」
「いいよいいよ、別に気にしないで。まあ、一応必要なものは大体揃っていると思うけど、足りないものは時空騎士の給与や冒険者登録するなりして得た収益で買い足していくといいよ」
ボクはアネモネのアカウントに切り替えた後、円華と手を繋いだ状態で『管理者権限・全移動』を発動し、ボクはクレセントムーン聖皇国にあるボクの保有する屋敷の一つへと転移した。
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それでは、改めまして。カオスファンタジーシリーズ第二弾を今後ともよろしくお願い致します。
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